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コラム

アフターマーケットの成功者たち(8)『キタガワ』

国内製造業の屋台骨たる自動車産業。国内 11 社の自動車メーカーの動向は毎日紙面を賑わしている。

しかし、消費者にとって、より身近な存在であるはずの自動車流通業界のプレーヤーについては、あまり多く知られていないのも事実である。

群雄割拠の国内の自動車流通・サービス市場において活躍する会社・人物を、この業界に精通する第一人者として業界内外で知られる寺澤寧史が、知られざる事実とともに紹介する。

第 8 回は、自動車整備事業を行うキタガワを紹介する。

第8回『キタガワ』
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日本の自動車整備市場は、「車検整備」、「定期点検」、「事故整備」、「その他整備」の大きく4つから成り立っている。

2003年における各分野の売上規模は、車検整備2兆3,000億円、定期点検3,000億円、事故整備1兆4,000億円、その他整備2兆3,000億円、総合計6兆3,000億円であり一大市場を形成している。

しかし、ニューサービスと称されるその他整備の売上が伸びているものの、車検整備や定期点検の売上が減少しており、1994年の6兆5,700億円をピークに以後全体ではマイナス成長が続いている。

この背景には、規制緩和の流れを受けて、1995年、2000年に実施された車両法改により自動車整備総需要の頭打ちが起きたことである。

2度にわたる車両法の改正では、車検年数の延長、法定点検制度の義務化廃止、点検項目の大幅削減や、従来の車検前整備から後整備への変更がなされ、自動車整備業界にとり、業績に与える影響が大きい改正であった。

さらに、自動車整備需要の減退に拍車をかけたのが、90年代以降の新車販売車販売セグメントの変化であった。

それまでの大型・中型セダン主体の販売から軽自動車、コンパクトカーに代表される小型車が新車市場の主役に踊りでることで、自動車整備市場にとり一点当たりの交換、補修部品の売上単価が年々下落しているのである。

また、この自動車整備市場を支えている自動車整備工場は、指定工場と認証工場の2つに区分され、前者は2.6万社、後者は5.5万社存在している。

自動車整備工場の資格について、ご存知ない方のために少し説明しておくと、

1)指定工場
一般に「民間車検場」と呼ばれている。国の検査場に代わって車検の実施を行い、保安基準適合証を交付できる工場を指す。

2)認証工場
運輸局長の証明を取得して自動車の分解整備を「事業」として経営できる工場。車検時は、国の検査場に持ち込んで保安基準適合証の交付を受けることになる。

ちなみに年間車検整備台数は、一事業所当たり指定工場で750台、認証整備工場は20台前後となっている。

さて、今回このコラムで取り上げるのは、市場規模の縮小が続く自動車整備業界にあって、独自路線で拡大を続ける『キタガワ』である。
(URL:http://lcs-kitagawa.co.jp)

キタガワの社名を聞いて名古屋市昭和区福江の自動車整備工場とすぐに分かる読者はまずいないと思われるが、自動車リース業界の中では、俗に言う4社会の中の1社としてつとに有名な整備工場である。

その4社とは、名古屋のキタガワに札幌のカードック、東京の協和自動車、福岡の松岡モータースを指すが、これに京都の京都機械工具(KTC)を加えて5社会と称されることもある。

この4社に共通するキーワードはリース車両メインテナンスの有力整備工場であることと、オートリースを自ら手がけていることである。

それでは、キタガワについて簡単に触れておきたい。

代表者 ;北川 芳廣
設立  ;1954年2月
資本金 ;3,200万円
従業員数;99名
事業内容;自動車整備・修理、自動車小売、鈑金・塗装、自動車リース、保険
事業所 ;本社(指定)、岩倉(認証)、名東(指定)、野並(指定)
業績  ;売上高(百万円)’01/12 1,237 ’02/12 1,320 ’03/12 1,300
経常利益(百万円)’01/12 6 ’02/12 21 ’03/12 -

全国に8万社以上もの自動車整備工場がある中で、業暦50年を誇り成長を持続してきたキタガワの事業戦略は、以下の4つに分類されると筆者は考えている。

1)事業の先見性
創業から半世紀を生き抜いてきた老舗に属する自動車整備工場であるが、早くから自動車リースの将来性に着目し、一般車両整備からリース車両のメインテナンス受託にシフトしたことである。
かつては、オリックス・オート・リースの専用メインテナンス工場であったが、順次自動車リース会社との取引拡大に成功し、現在では名古屋に本社を構えるリース会社の大多数とオリックス・オート・リースや住商オートリース、三井住友銀オートリース、昭和オートレンタリースなど64社と取引している。直近の契約台数は1.5万台/年程度であり、これはリース車両のメインテナンス専門工場では、全国No1のポジションである。

2)自動車リース専用工場としての柔軟性
自動車リースのメインテナンス工場に専門特化したことにより、台当たり収益は、一般車両整備と比較すると極小化するものの、およそ1.5万台にも及ぶ車両を管理することで、4工場の稼働率をほほフルに近い状態にまで高めることに成功している。
タイヤ、バッテリー、オイル、ケミカルなど支給部用品の受け入れやPB用品の取引、車検キット部品に至るまで自動車リースの要求に最大限応じている。

3)営業戦略の目のつけどろ
3ヶ月ごとの定期点検では、名古屋市内を中心にメカニックと女子事務員が2名で巡回点検サービスを実施している。2名で巡回点検した結果シートをメカニックが記入したものを、女子事務員がリース先の担当者に渡すということにしている。女子事務員のほうが、接客なれしており、リース先社員の自家用車の整備需要を巧く取り込む術を知っているのだという。
女子事務員は、午前中はリース車両のスケジュール調整の電話掛け業務、午後からは上記の通り営業まで行うということで、自動車整備工場に欠けている営業力を女子事務員の戦力化で補っているのである。

4)車検チェーン事業の展開
規制緩和で車検整備売上の減少に見舞われたのは、キタガワも同じことであったが、いち早くホリデーのFC店として看板を掲げ時代の変化に対応している。現在は、13,000円の格安車検を標榜する広島の「車検の速太郎」のFC加盟店となっており、本社を含めた名東・野並の3工場で年間2万台の車検整備実績をあげている。
キタガワでは、立会い車検を実施しながら、ユーザーに丁寧に説明すると8割方は、交換部品の必要性を理解してくれるのだという。平均の売上は、台当たり1.8万円程度であり、そんなに儲かるビジネスではないが、精算時に渡す伝票に次回の交換部品情報の診断書を添付するようになってからは、リピート率も向上しているとのことである。

西村専務曰く「寺澤さんね。これからの自動車整備工場は、オートリース抜きにしては事業経営は成り立たなくなるんじゃないですか。確かに1ヶ月点検料が千円/台というのでは人件費も賄えない。でもね、もしキタガワがいつまでも一般個人客を主体に自動車整備を続けていたら、今日はなかったかも知れない。オリックス・オート・リースとの取引がリース車両専門工場への端緒だったけど、方向は間違ってはいなかった。」

現在、政府関係省庁間で更なる規制緩和促進の一環として車検制度の変更が検討されている。初回車検を4年に、2回目車検を3年にという案が有力と報道されているが、国土交通省は導入反対の立場で2005年度の導入は見送りとなっている。
しかしながら、規制緩和は時代の要請でもあり、やはり近い将来に車検の再延長問題は再燃するものと思われる。

キタガワは、オートリース専門工場として成功している先駆的モデルである。おそらく、上記の事象は数年後に実現することは、ほぼ間違いのないことと思われるが、キタガワは顧客の要請に耳を傾け、ユーザーが何を望んでいるのか市場と対話しながら時代の変化に対応していくことであろう。

全ての自動車整備工場にキタガワの事例が当てはまるとは思えないが、今後の自動車整備のあり方を模索するとき、ヒントに富んだものになるのではないだろうか。

キタガワの次の戦略の一手に注目したい。

<寺澤 寧史>

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