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コラム

アフターマーケットの成功者たち(9)『オートプロジャパン…』

国内製造業の屋台骨たる自動車産業。国内 11 社の自動車メーカーの動向は毎日紙面を賑わしている。

しかし、消費者にとって、より身近な存在であるはずの自動車流通業界のプレーヤーについては、あまり多く知られていないのも事実である。

群雄割拠の国内の自動車流通・サービス市場において活躍する会社・人物を、この業界に精通する第一人者として業界内外で知られる寺澤寧史が、知られざる事実とともに紹介する。

第 9 回は、出張オイル交換サービスに特化したビジネスを展開するオートプロジャパンを紹介する。

第9回『オートプロジャパン』
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前回は、市場規模の縮小が続く自動車整備業界にあって独自路線で拡大を続ける自動車整備工場の「キタガワ」を取り上げたが、今回も同様に自動車整備業界に参画するプレーヤーについて紹介しようと思う。

【整備市場について】
ご存知の通り日本における自動車の総保有台数は微増を続けているものの、これまでの規制緩和の流れを受けた 2度に渡る車両法の改正(車検年数の延長、法定点検制度の義務化廃止、点検項目の大幅削減や車検前整備から後車検への変更など)により、整備市場は残念ながら漸減が続いている。

以前にも紹介したが、日本の自動車整備市場は、「車検整備」、「定期点検」「事故整備」、「その他整備」の4つから成り立っており、これら 4 つの領域を合計した 2003年の総市場は、6 兆 3,000 億円と巨大市場であり、このうち、本日紹介するオートプロジャパン(URL:http//www.autopro.co.jp) が参入している「定期点検」分野の市場規模は 3,000 億円と他の 3分野と比較すると一桁規模が小さい。しかし、オートプロジャパンはその小さな市場内でのビジネス領域を更に絞り込むことで急成長を実現しつつある。

【オートプロジャパンについて】
オートプロジャパンのビジネスは、「点検整備」の中における「定期点検」のカテゴリーのものである。同社の概要は以下の通りである。

代表者 ;柴田 洋次
設立  ;1964年1月
出張オイル交換事業 1996年9月
資本金 ;3,500万円(2004年12月に4,400万円に増資予定)
従業員数;60名
事業内容;自動車潤滑油の販売、自動車ケミカル商品販売、自動車用付属品、販売、開発
事業所 ;本社、事業本部(東京、仙台、新潟、名古屋、大阪、広島、九州、沖縄)2005年開設予定(札幌、静岡、四国、鹿児島)
業績  ;売上高(百万円)’03/1 800 ’04/1 1,000 ’05/1(予) 1,100
経常利益(百万円)’01/12 - ’02/12 - ’03/12 -
最盛期である 1980年代には、グループ企業 3 社を束ね手広く事業を行っており、特殊車両(アメリカ車の霊柩車)の中古車輸入販売、国内新車・中古車販売なども手がげていた。しかし、1990年以降の経済不況のあおりを受けて事業の縮小を余儀なくされ、グループ企業の統合・再編を行い国内の自動車販売事業だけを存続させることにした。この事業再編で自動車販売会社のみを残したものの、ここでも売上の激減に直面するに至り、ここにビジネスモデル転換の必要性を痛感する。

【出張オイル交換ビジネスの考案】
同社が注目したのは、多くの同業者が販売後のユーザーアフターケアに無頓着なことであり、結果として考案したのが現在のコアビジネスに繋がる「巡回点検サービスを実施し、常に安心して運転できるコンディションを提供するビジネス」であった。

このビジネスを始めた当初は、同業者である中古車販売事業者にユーザーを紹介してもらう形態を取っていたため、オートプロジャパンが同業であり紹介したユーザーが巡回サービスのみならず、代替中古車をオートプロジャパンに奪われることへの警戒感が強く、紹介ユーザーも集まらず長続きしなかったことから、柴田社長は新車・中古車販売事業そのものから撤退し、巡回点検サービスの中からオイル交換だけを切り出し、これに専業特化することで他社との差別化を図ることにしたという。

この出張オイル交換(エレメント+緊急時のバッテリー交換)という新業態を開始したのが、1996年 9月のことである。

出張オイル交換サービス業務の内容は以下の通りである。

1.8項目点検(工賃・出張無料サービス)
エンジンオイル、バッテリー、ストップランプ、ウィンドウォッシャー液、パワーステフルード、ラジエーター液、ブレーキフルード、タイヤチェック 補充点検交換

2.きめ細かな点検スケジュール
ユーザー毎に異なる車の使用状況(月間走行距離、積載物、車両の種類)に合わせたオイル交換予測リストを作成し、点検を実施する

3.ユーザー指定の作業時間
土日、時間帯を問わずユーザーの指定時間、場所での作業可能

4.デスク上での車両管理
オイル交換リスト、チェックカードによる車両コンディションの把握が可能

この出張オイル交換事業に業態を変換させてから8年が経過しているが、参入障壁は限りなく低い(オイル交換は誰にでもできるという意味で)ものの、現実にはオートプロジャパンの一社独占市場となっている。

一見誰にでもできそうなこの出張オイル交換事業で他社の追随を許さない体制を構築できたのは、事業領域とサービス対象をピンポイントに絞込み、徹底したサービスを売り込むことで顧客の囲い込みに成功しているからに他ならない。

【注目すべき事業戦略】
筆者が考えるに、注目すべき事業戦略としては以下のようなポイントがあると考える。

1.対象事業者の絞込み
出張オイル交換の対象事業者を、事業転換当初から年間走行距離が多く車両管理に神経を使う「運送事業者」や「自動車リース会社」としたこと。

1) 運送事業者への提供サービス
運送事業者の多くは、自家整備工場を保有しており車両整備事業を行なっているが、営業車両はなかなかスケジュール通りに点検入庫が実施されない、営業時間中でないと車両受入をしてもらえない、順番待ちでアイドルタイムが生じるなどの無駄が多いという弊害があったが、これを出張ベースで実施することで解決している。

2) 自動車リース会社への提供サービス
リース業界にあっては、リースユーザーが定期点検入庫を忘れたり、車両の入れ替えも頻繁にあったりで、実際の入庫率は 60~ 70 %程度とされている。これらの問題解決のためにアウトソーシーとして各企業の保有車両 1台ごとのオイル交換スケジュールを作成し、コンピューターに登録することで、点検スケジュールに基づいて出張サービスを行い、前述した 8 つの点検項目を 100 %実施。結果、リース会社の保有する車両の状態を常に良好に保つサービスを提供することで絶大な信用を勝ち得ている。

2.全国サービス体制構築への拡大
現在、8 事業本部体制となっているが、2005年には札幌、静岡、四国、鹿児島に事業所を開設予定。現在、地域単位で契約している車両の合計だけでも7万台がサービス対象となっているが、全国単位で同様のサービス展開が可能になれば、主要取引先の顔ぶれを見るだけでも 40~ 50 万台規模まで管理台数の拡大が見込めよう。

3.作業現場でのオペレーション
オイル交換を行う現場は、ユーザーの指定により環境は様々である。ユーザーの立会いのもと 1台 10~ 15分程度で作業は終了するものの、そのパフォーマンスは顧客至上主義を徹底したものとなっている。自動車整備工場で整備を受けている光景を目にすれば、すぐに分かることだが、整備士は黙々と作業を進め、直ぐ近くにユーザーがいても一言の説明もないのが通常である。たかが、オイル交換という作業であるが、オートプロジャパンでは、この作業にプロフェッショナル性を要求し、以下の事項を貫徹することを義務化しているのである。

・作業開始時にきちんと挨拶を行うこと。
・8項目の点検を行う時には、一つ一つの作業に対して、指差し確認と大声で立会い者にはっきりと聞こえるようにするすること。
・環境に最大の配慮の観点からオイル抜き取り作業には、真空引きの専用ドレンプラグを使い一滴たりともオイルをこぼさないこと。
・チェックシート(8項目点検)記入後、立会い者にサインをもらい、次回の点検日までに交換が必要と思われる部品、用品を伝えること。
・作業終了時にありがとうございましたと挨拶を忘れないこと。

【柴田社長の話】
今期の新規契約台数は約 2.5 万台とのことで、リース車両が契約台数の大半を占めているとのことであるが、リース会社の車両管理が杜撰なことも多いため、出張オイル交換に行くと、間違えて怒鳴られることも度々であるとのことだ。しかし、最後にはオイル交換だけで、ここまでのサービスをしてくれるのかと賞賛の声があがるのだという。

柴田社長曰く「寺澤さんね。うちのサービスは一見すると誰にでもできるビジネスだと思うでしょう。だけどね、実際に自動車整備工場で一番嫌がられている作業ってオイル交換だって知ってますか。点検のついでにやる作業だし、そんなに儲かるものでもないからね。いやいややっているから、どうしても態度にも出てしまうしね。
我々は、そこをビジネスにしようと考えた訳。でもどうすればユーザーの満足を得られるかってことばかりをね。
そこで気が付いたのが、巡回サービスを実施していたときに、時間を無駄にせず、車が齎す生産性を最大化させるにはこちらから、ユーザーの元に出向けば、解決するんじゃないかと。最初は、たかがオイル交換ということで、非常に苦労が多かったけど、今ではされどオイル交換という感じまでこれたと思う。」

【米国での同様のビジネスモデル】
ところで、アメリカの雑誌にRestaurant Technologies Incというオートプロジャパンと同様の事業コンセプトの企業があるので、紹介しておきたい。
このRestaurant Technologies Incはレストランの食用油を交換するビジネスを行なっている企業である。
全米には 87 万店以上のレストランがあり、その大半はフライドポテトなどの揚げ物用にディープフライヤーを有しているが、揚げ物のために使用される年間の食用油の廃棄量は、30 億ポンド(13.6 億 L)にも達しており、廃油の適正処理を行なわないと法律により罰せられたり、フライヤーの発火により従業員が火傷を負うなどのリスクが付いて回ることから、多くのレストランでは廃棄処理に頭を悩ませている。

Restaurant Technologies Inc は、ここにビジネスチャンスを見出し、食用油の交換ビジネスを考案・現在では、全米でマクドナルドを含む 5,600 以上のレストランと食用油の廃棄処理契約を結び、回収した廃油は、にわとりのえさやバイオディーゼル燃料としてリサイクルしている。

実は、この Restaurant Technologies 社は 2004年第 1 四半期に全米でベンチャーキャピタルが出資を行った 600 社の中で最大の 25 百万ドル(25 億円、因みに累積では 100 億円を VC から調達済みである)となっており、そのビジネスモデルには注目が集まっている。

【オートプロジャパンとRestaurant Technologies社】
この両社に共通することは、廃油処理という極めてニッチな事業にフォーカスしていること、一番手間のかかる作業のアウトソース事業であること、自動車のエンジンが焼きつく、あるいはフライヤーの発火で火傷をするなどという危機リスクを限りなく軽減するビジネスモデルであることだ。

さらに事業カバレッジが、オートプロジャパンで台数ベースで1.8%、Restaurant Technologies Inc でレストラン契約ベースで 0.6 %と非常に低く、これからの成長性に期待がかかるというのも共通項である。

【おわりに】
オイル交換そのものは、これまでは自動車整備のあくまでも一つの作業でしかなかったものである。作業の領域にとどまっている限りは収益は見込めないが、オートプロジャパンは、オイル交換という作業を一つのビジネスにまで仕立てあげたプロデューサーである。
本当の顧客サービスとは何か、どうあるべきなのか。オートプロジャパンのビジネスには、サービス関連事業者にとっても大変示唆に富んだものがあるのではないだろうか。

顧客からの絶大な信用をバックに、オートプロジャパンがオイル交換というニッチ市場の輝かしいオンリーワン企業になっていくことに注目していきたい。

<寺澤 寧史>

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