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コラム

アフターマーケットの成功者たち(10)『一城』

国内製造業の屋台骨たる自動車産業。国内 11 社の自動車メーカーの動向は毎日紙面を賑わしている。

しかし、消費者にとって、より身近な存在であるはずの自動車流通業界のプレーヤーについては、あまり多く知られていないのも事実である。

群雄割拠の国内の自動車流通・サービス市場において活躍する会社・人物を、この業界に精通する第一人者として業界内外で知られる寺澤寧史が、知られざる事実とともに紹介する。

第 10 回は、自動車部品専門卸業を営む一城を紹介する。

第10回『一城』
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自動車部品は、自動車メーカーの工場で新車時に組付けれる部品(OE 部品)と、修理、整備など主にアフターマーケットで使用される補修用部品に大別される。

日本自動車部品工業会(Japan Auto Parts Industries Association=JAPIA)によると、2002年度の日本の自動車部品市場は、約 13 兆5,600億円であるが、その内訳は以下のようになっている。(差額の2兆1,900億円は部品メーカー向けとなっている。)

1.OE部品
1)市場規模
10 兆 1,130 億円
2)流通経路
OE 部品メーカー→自動車メーカー→部販、共販を通じて新車ディーラーに卸される
3)企業数
約100社

2.補修用部品
1)市場規模
1 兆 2,570 億円
2)流通経路
OE 部品メーカー、アフターマーケット専門部品メーカー
→優良部品商(全国部品商)→地域部品商→整備工場に卸される
3)企業数
約5,000 社

本日紹介する一城が参画するのは、2.の補修用部品市場であるが、この市場に対する一般的な見方としては
1.自動車の故障や消耗などによる交換需要が多い
2.自動車の保有台数が漸増していることから、総市場も微増している
という2つの点から、比較的底硬いことが挙げられる。

しかしながら、現実には以下2つの理由から補修用部品市場の先行きは楽観できる状況にはないというのが筆者の見方である。

ひとつは、日本国内の新車販売需要が伸び悩んでいることに加えて、販売車種の主流が、軽自動車、コンパクトカー、ミニバンなどにシフトしてきたことで、これまでの大型車が全盛だった時期と比較すると、補修用部品単価そのものが廉価になってきていることである。

ふたつめは、1995年以降点検整備や検査に関して、規制緩和が継続して行われてきたことにより、自動車ユーザーの整備先送りが顕著となり、車検時に交換されていた補修用部品需要そのものが、減少してきていることである。

さて、今回このコラムで取り上げるのは、こうした必ずしも楽観視出来ない市場環境において独自の戦略で堅実な拡大を続ける地域部品商の『一城』である。

『一城』の登記上の本社は東京都新宿中落合となっているが、実質は埼玉県八潮市で、埼玉県東部地域、東京都、千葉県の一部地域が主要販売エリアである。

今回の地域部品商一城、第 9 回のオートプロジャパン、第 8 回のキタガワには、共通するキーワードが隠されている。

それは、各社の業務が自動車部品卸、出張オイル交換サービス、自動車整備と違いがあるものの、主要取引先がオートリース会社という点である。

それでは、『一城』について簡単に紹介しておきたい。

代表者 ;荻野 惣一
設立  ;1988年5月
資本金 ;1,000万円
従業員数;16名
事業内容;自動車部品付属品(国産・外国車部品用品)、リビルトパーツ、中古部品、工具、各卸売、車両管理システム、メンテナンスシステム提供
事業所 ;八潮パーツセンター、緑町倉庫(八潮市)、川口倉庫(川口市)
仕入先 ;辰巳屋興業、SPK、大和産業、タカラ部品、エンパイア自動車
販売先 ;昭和オートレンタリース、三井住友銀オートリース、東京オートリース、セントラルオートリース、ニッポンレンタカーサービス、ジャパレンなど 200 社内外
業績  ;売上高(百万円)’02/5 600 ’03/5 600 ’04/5 610

全国に約 5,000 社内外の自動車部品商がある中で、業暦 18年と比較的若い企業であるが、成長を持続させてきた一城の事業戦略は、以下の 3 点にあると筆者は、考えている。

1)事業の絞込み
創業者の荻野惣一氏は、もともと大手総合部品卸商優良部品商に勤務しており、1988年に独立、一城を創業している。
荻野氏は、一城を創業するに際してその販売先として、早くから自動車リース業界の将来性に着目していた。リース車両は、一般車両と違い定期的(一般的には 3 ヶ月サイクル)にメンテナンスがなされ、交換される部品需要が確実に見込めるという目算があった。1994年にメンテナンスリースを金看板に掲げる日本リースオート(現 GE フリートサービス)との取引に成功してから、その実績を利用することで、オートリース各社との取引拡大に注力してきた。
現在では、上記取引先以外にニッポンレンタカーの FC 各社やニッポンメンテナンスシステム、ケイエム国際などが顧客となっている。

2)特化したサービス内容
通常、自動車は 3年乃至 2年に一回車検の義務付けがなされていることは読者の方は、 ご存知であろう。
しかし、車検時にともすれば不必要な部品まで安全という名目のもと交換されている事実に気付かれていない読者も多いかも知れない。

一城では、整備工場が収益をあげるために、これまでリース車両に対して過剰に部品交換を行ってきたことに着目し、コスト削減のために自動車リース会社に対して、これまでの走行距離に応じた交換部品をパックにした「車検キット」を提案したのである。

この「車検キット」を導入することで、オートリース会社が得られるメリットは、次の3点である。

1.整備工場のマージン削減
一城がオートリース会社に対して交換部品を販売(すなわち、整備工場に支給品として供給)する形を取ることで、これまで整備工場が収益源としてきた部品売上マージンの排除につながる。

2.交換部品の無駄の排除
これまでリース車両を整備工場で車検を通す場合に、不要な部品まで交換され整備工場から自動車リース会社へ過剰請求されるケースが多かった。この「車検キット」(車両ごとに交換部品を組替えしている)を導入することで、必要な部品だけを交換することで、整備工場からの過剰請求を防止できる。「車検キット」の中で仮に交換不要な部品が発生した場合には、整備工場から一城に返品される仕組みとなっている。

3.交換部品単価の引き下げ
一城からオートリース会社への交換部品単価は、卸価格となるため、整備工場からオートリース会社への請求価格より格安の提供が可能となる。

現在では、オートリース会社から電子データで車両点検情報、走行管理情報を共有している車両に関しては、車検時の交換部品をほぼ 100 %の確率で整備工場に供給することが可能となっており、2.交換部品の無駄の排除を実現している。

現時点での一城のリース車両管理台数は、約 3 万台前後であり、取引先リース会社保有車両台数シェアは約 9 %とまだまだ拡大の余地は大きい。

3)全国地域部品商とのネットワーク
地域部品商は、その名称が示す通り地域に密着した事業者であるが、一城は北海道から九州に至るまで全国の地域部品商に呼びかけ、上記の「車検キット」商品の供給を可能にしている。
オートリース各社は、車検満了日の 2 ヶ月前までに、車検予定の車両情報(車検証、過去の整備履歴、走行距離)を電子データで一城に連絡し、一城では、各車両のデータをもとに、必要とされる交換部品を記載したシートを各地域部品商に送付する。各地域部品商では、一城から送付されてきた情報をもとに、整備工場に「車検キット」商品を配送する。
「車検キット」商品の部品代金請求は、あらかじめオートリース各社と一城間で取り決めた価格に基づき、一城で全国地域部品商から車検部品代金を取りまとめ、一本の請求書でオートリース各社に請求があがるシステムとなっている。

一城では、この地域部品商とのネットワークを構築するに際して、2000年 9月に「点検・整備管理方法及びそのシステム」というビジネスモデル特許を出願、取得している。

一城社長曰く
「寺澤さんね。地域部品卸商は、どこをみても小資本、小規模経営のところばかりだ。どこかに事業領域を絞りこまないと、このままでは、バタバタとつぶれてしまう。最近では、車検チェーンが大流行で羽振りがいいが、部品商からみると価格訴求が強く、そんなに儲けさせてももらえない。
その点、オートリース会社は、自動車管理の専門集団のように考えられがちだが、自動車部品卸という専門家から見ると自動車メンテナンスの本質が分かっていない企業が多い。
オートリース会社がさらに収益を上げたいと考えるならば、整備工場の集約や支給部品点数を増やすことだけに血眼になるだけでなく、全国の地域部品卸と協業することも必要な時代になってきているのではないか。」

オートリース各社へ提案営業を続け、車検キット商品の売り込みに成功した一城では、次の目標を定期点検における部品・用品の交換サイクル管理の受託までと設定している。
そのための布石として、一城とネットワークしている全国 47 地域部品商から出資を募り、部品・用品の交換サイクル管理受託会社を立ち上げたいとしている。

オートリース各社にとっても、コスト削減を整備工場だけに求めるのではなく、部品調達ルートを多様化するなど、従来の車両管理の在り方をそろそろ再考する時期にきているのではないだろうか。

<寺澤 寧史>

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