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コラム

アフターマーケットの成功者たち(11)『ナルネットコミュニ…』

国内製造業の屋台骨たる自動車産業。国内 11 社の自動車メーカーの動向は毎日紙面を賑わしている。

しかし、消費者にとって、より身近な存在であるはずの自動車流通業界のプレーヤーについては、あまり多く知られていないのも事実である。

群雄割拠の国内の自動車流通・サービス市場において活躍する会社・人物を、この業界に精通する第一人者として業界内外で知られる寺澤寧史が、知られざる事実とともに紹介する。

第 11 回は、自動車メンテナンス管理業務を受託するナルネットコミュニケーションズを紹介する。

第11回『ナルネットコミュニケーションズ』
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わが国のリース市場は、近年設備投資の軟調を背景に 2001年度以降漸減傾向を示している。しかし、自動車販売台数が伸び悩みを見せ、民間設備投資が弱含みで推移している中で、自動車リース市場は拡大を続けている。

日本自動車リース協会連合会(JALA)調べによると、自動車リース保有台数の推移は、2003年度(9月末) 249.7 万台(前年比 +4.1 %)、2002年度 233.9万台(前年比 +3.6 %)、2001年度 231.5 万台(前年比 +3.9 %)と 1990年代前半に記録した 2 桁成長との比較では伸びは鈍化しているものの、着実な増加を見せている。

いわゆるフリート市場(車両保有 10台以上)だけでみても、全国で約 650~700 万台程度であると言われており、現状の自動車リース台数を勘案しても、まだまだ拡大の余地は大きい。

自動車リースが拡大している背景には、経営効率化の強化に伴うアウトソース需要、コスト削減需要などの動きが活発であることがあげられる。さらに、自動車リースの利用形態も単純なファイナンスリースから自動車整備をリース会社に委託するメインテナンスリースリースへと変化してきている。このメインテナンスリース構成比(自動車リース車両数に占める)は、2003年で 62.5 %となっており、過去 10年間で 4.6 %増加している。
さて、今回このコラムで取り上げるのは、設立当初より車両管理受託業務を柱に経営資源を集中する戦略で業容を拡大させてきた『ナルネットコミュニケーションズ』
(URL; http://wwww.nal-mt.co.jp/ ) である。

ナルネットコミュニケーションズは名古屋に本社を置き、東海 3 県、東京に営業拠点を有し、メインテナンス受託管理台数 2 万台を誇る有力なメインテナンス管理会社である。

ナルネットコミュニケーションズの主な事業領域は次の通りである。
1)金融系リース会社及び自動車リース専業系会社からのメインテナンス受託
2)一般法人の車両メインテナンス
3)自動車リース
4)その他附帯事業(残価保証、中古車買取)

ナルネットコミュニケーションズのようにオートリース会社からのメインテナンス受託を主業務にしている企業には、ニッポンメンテナンスシステム(東京)、マックス(大阪)、協和自動車(東京)、西出自動車工作所(大阪)、イチネン(大阪)などがある。

自動車リース車両のうち、いわゆるメインテナンス車両は前述したとおり62.5 %であり、約 156 万台となる。この中でナルネットコミュニケーションズやマックスなどのメインテナンス受託専門会社や自動車リース専業系大手企業がメインテナンスだけを受託している車両数は、おおよそ 20 万台前後と想定され、この中でナルネットコミュニケーションズは 2 万台、10 %のシェアを獲得していることになる。これはメインテナンス受託管理専門会社の中でもトップに位置している。

それでは、ナルネットコミュニケーションズについて主要情報について紹介したい。

代表者  ;出口 満
本社所在地;愛知県名古屋市中区錦2-13 名古屋センタービル4F
設立   ;1978年7月
資本金  ;3,800万円
従業員数 ;60名
事業内容 ;自動車及び自動車付属品のリースとそのメインテナンス業務
自動車及び自動車付属品の販売業務
損害保険の代理店業務
事業所  ;本社、東京支店、静岡営業所、三重営業所、岐阜営業所、
UC営業部
決算期  ;’02/3  ’03/3  ’04/3
売上高  ;4,835  4,316  5,232
経常利益 ;  66    44   23
受託台数 ;17,000 18,000  20,000

*ナルネットでは、’03年3月期に10万台の車両管理が可能となるシステム投資を実行しており、減価償却負担が重く最終利益に影響を与えている。

全国に 7,000 余の事業者がいる中で、創業来 25年の業暦を誇り成長を維持させてきたナルネットコミュニケーションズの事業戦略は次の 3 つにあると筆者は考えている。

1)事業の思い切った絞込み
創業当時は、リース車両台数はまだ10万台程度と市場認知が低い時代であった。もともと同社では、創業時自動車リース業務の中でメインテナンス管理業務が、最重要項目との認識を持っていた。自社でリース車両保有の拡大を図ることより車両管理業務受託することに経営資源を集中することとし、地元の名古屋を始めに、岐阜、静岡、三重各県のメインテナンス網を持たない金融機関系リース会社との取引に注力し、リース車両のメインテナンス受注拡大に成功しメインテナンス工場ネットワークを広げていったのであった。

現在では、東海3県の金融機関系リース会社に加えてダイヤモンドオートリース、芙蓉オートリース、東京オートリース、昭和オートレンタリース、センチュリーオートリース、松下・リースクレジット、などの有力オートリース会社20数社と取引している。

2)コールセンターを利用した入庫の積極的促進メインテナンス車両は、自動車リース会社と自動車リースユーザー間で、その使用実態に応じた点検スケジュールが決められている。
ユーザー毎に車の使用地や走行距離など条件が異なっており、スケジュール点検のタイミングも各様であるが、年間に3~4回設定されているのが通例となっている。
しかしながら、実際のスケジュール点検実施率は全体で6割程度と見られており、自動車リース会社では、事前にスケジュール点検の告知を行っているものの、実施率がなかなか引き上がらないのが実情である。

メンテナンス料金は、毎月のリース料金の中に一定額含まれていることから、リース会社にとっては、収益の向上(眠り口銭として)に寄与すると見られがちであるが、整備不良から突発的な故障や不具合などが発生し、却ってメインテナンス費用が嵩んだり、リースユーザーの不信感を生むことにもつながっている。

そこで、ナルネットコミュニケーションズでは、メインテナンス管理受託車両の点検実施率の目標を90%に設定し、コールセンターを利用することで、入庫の事前促進と未入庫の場合の再促進を行うことで、目標値に近い点検実施率を実現しているのである。
その結果、常に車両の品質を一定に保ち、整備工場での無駄な修理の発生防止を実現することで、リース会社には余計なコスト負担の低減とリースユーザーに車両の安全性と信頼性を提供することが可能となった。

3)提案営業
ナルネットコミュニケーションズでは、メインテナンス受託管理の専門企業として車両管理の提案営業の強化に取り組んでいる。提案の要点は、ずばりオートリース会社が契約している全国の自動車整備工場の中でノンコアとされる工場に委託しているメインテナンス車両の一括引き受けである。

オリックス・オート・リースや住商オートリースなどに代表される数十万台規模でメインテナンス車両を管理しているオートリース会社であっても、全ての車両が万全の体制でメインテナンスされているとは限らない。これらのオートリース会社では、全国に5,000~6,000のメインテナンス委託工場を確保しているが、優良工場(コア工場)は、全国でおおよそ1,500工場とされ、メインテナンス車両の8割相当はこの工場で管理可能である。
残りの3,500~4,000工場(ノンコア工場)は、ユーザー指定の新規工場や地域的に管理が難しい工場である場合が多く、オートリース会社が、コスト削減を目指してメインテナンス工場の集約化を掲げているものの、遅々として進んでいないというのが実態であろう。
ノンコア工場に委託している車両管理をアウトソースすることによって期待できる効果は次の通りである。

1)人手と手間の削減
ノンコア工場は、一工場あたりの委託台数が少ないため、委託内容への理解度が低く、作業発生都度での問い合わせが頻発するなど、人手と手間を必要とし、目に見えないコストが嵩んでいる可能性がある。これらの委託工場との取引をアウトソースすることで、オートリース会社のメインテナンス担当社員は、コア工場に注力し、生産性の高い業務遂行に取り組める。
さらにノンコア工場向けの各種書類発送業務やユーザー向け点検案内書作成費や送付コストの削減が可能となる。

2)コア工場への経営資源の集中
ノンコア工場に委託している車両管理をアウトソースすることで、オートリース会社は、コア工場に対する集中的な監督及び指導が可能になり、メインテナンス車両の更なる品質向上を追求できる。

メインテナンス料金の取り決め方は、リース会社がその契約先のメインテナンス工場に対して支払われた一台毎の整備費用を基準にリース会社とナルネットコミュニケーション間で設定されることになっている。

ナルネットコミュニケーションズでは、スケジュール点検項目や消耗部品、交換部品などのタイミングを独自の車両管理プログラムで運用することにより、事前に概算の修理費用を把握している。
交換部品と単価を記入した点検通知状をメインテナンス委託工場に事前に送付し、故障が発生する前に部品を交換することで、車両の安全性の向上とともに常に車両を万全の状態に保つことを可能としている。

また、この車両プログラムを使うことで、これまでメインテナンス工場で不必要な部品まで交換して費用請求してきた無駄な部品代金請求をチェックし、防止することが可能となり、オートリース会社の収益向上に役立っている。

「2004年 10月から新たなメインテナンス車両管理データシステムが稼動し始めたが、無駄な修理を発生させないという観点からは、車両管理データの蓄積がまだまだ不十分で更なる充実を図って行く方針である。」と出口社長は語っている。

さらに、メインテナンス能力の向上は、オートリース会社にとって利点となる。何故なら、メインテナンスが良好なリースアップ車両は売却できる市場が育っており、残価以上の売却益を得ることも可能となっているからだ。

このためメインテナンス能力を高めておくことで契約満了時の車両売却価格を高めにすることが可能となる。
さらにリースユーザーのコスト削減意識の高まりから、車両リース期間が長期化する傾向にある。そのため、良質なメインテナンスを施すことで、再リース獲得の機会にもつながりやすい。

ナルネットコミュニケーションズの業務には、中古車買取と残価保証があり、管理車両の中で約 10 %を占めているが、自社で管理しているメインテナンス車両データを利用することで、平均して下取り価格より 1 割程度高値で買い取ることに成功しているという。
自動車リース業界は、規模拡大による経済合理性が強く働き、損益分岐点が5 万台とされてきたが、昨今では 10 万台とも言われるようになってきている。 オリックス・オート・リースの保有台数 40 万台を筆頭に 10 万台を超える大手企業は僅か数社にしか過ぎない。5 万台強を保有しているオートリース会社は 10 指に余るほどであるが、これらの上位企業で 70 %強のリース車両シェアを獲得している。

今後、益々競争激化していくオートリース業界にあってメインテナンス収益や車両処分益で多くの収益を稼がないと、次第にそのオートリース会社は競争力を失っていくことになろう。

収益力の更なる向上には、メインテナンス工場の思い切った集約化が必要であるが、メインテナンス委託を直ぐに打ち切りという訳には種種の理由により出来ないのが、現実であろう。そうであるならば、委託台数の少ないメインテナンス工場は割り切ってアウトソースするというのも現実的な対応ではないだろうか。

<寺澤 寧史>

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