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コラム

自動車解体事業者のネットワークシステムの全体最適化

(NGPグループ、「NGPパーツシステム」を13日から稼働へ。
約200社で在庫融通)

NGPグループ、約3億円の費用をかけた新システムを6月13日より稼働へ

見積発行機能・保証書発行機能などが加わったほか、インターネット回線でグループの在庫データや売上データを一元管理できるようになり、より高度で即時性の高い分析資料の作成などが可能となる。当初、198拠点で導入へ。
<2005年05月27日号>

<2005年06月08日号掲載記事>

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今回取り上げる記事は、自動車解体事業者のネットワークグループ最大手のNGP が、グループ会員向けの独自システムとしてバックエンド業務や販売業務の効率化を図るためにインターネット経由で多様なデータ検索を可能としたデータベースを開発した、というものであり、グループ企業の売上拡大を狙いとしているものと思われる。

しかし、この記事見出しだけでは、NGP の出自や事業内容など分からないと思われるので自動車解体事業及び NGP グループについて、簡単に紹介してから本論に入りたいと思う。

【初めに】

読者の皆さんが長年使用した愛車(いわゆる使用済み自動車)はどのような末路を辿るのか、ご存知であろうか。

大きく分けると、

1)中古車市場再参入
使用済み自動車と一時抹消されたものが、その後再度中古車市場に流入するケース

2)中古車輸出
中古車(いわゆる丸車)若しくは部品として輸出されるケース

3)自動車解体事業者行き
解体・処分・部品取りなど

の 3 つのルートが存在する。

このうち、3)の自動車解体事業者の工場での解体工程はおおよそ次の通りである。

使用済み自動車入庫 ⇒ 前処理(各種廃液抜き取り) ⇒
部品・材料取り外し ⇒ ソフトプレス ⇒ シュレッダー ⇒
シュレッダーダスト ⇒ シュレッダーダスト埋め立て

通常自動車解体事業者の多くはソフトプレス工程までを手掛けているが、主な収益源は、

1)中古部品取り・販売
2)素材販売
3)フロン・エアバッグ処理などに伴う還付
4)中古車輸出

などとなっている。

【NGPグループとは】

NGP グループ(日本自動車リサイクル事業協同組合)は、1985年に自動車解体事業者 3 社が西日本グッドパーツとしてグループ活動を結成したことに始まる。その頭文字、西日本=N、グッド=G、パーツ=P の 3 文字をグループ名としたものである。

現在では約 160 社(200 拠点)のグループ会員を擁するリサイクル部品流通ネットワークの最大手となっている。

【日本の自動車解体事業の実情】

それでは、日本の自動車解体事業者数は全国にどの位存在しているのであろうか。

平成 11年に総務省による日本標準産業分類が大改定されているが、自動車解体事業者は産業分類及び職業分類上 、明確に位置付けられていないため、実態は不明である。

しかし九州大学の外川教授らの調査によると、全国で約 5,000 事業者の存在が確認されており、通例この数字で事業者数が語られることが多い。

年間に解体される廃車台数も前述したように、使用済み自動車全てが解体処理となるわけではないことから実数値の把握は困難ながら、該当年度の保有台数、新規登録台数、自動車の通関統計を用いて推定することは可能である。

因みに、ここ数年の廃車対象車両は 500~ 560 万台のレンジとなる。この数値から、正規に通関した中古車台数や手荷物扱いで海外に持ち出された中古車台数を除すると、廃車対象車両の内、解体処理となる台数はおおよそ 400 万台レベルではないかと推定されている。

<国内自動車の保有台数と使用済み台数推移>(単位:千台)

.             保有台数 新規登録台数 使用済み台数 中古車輸出台数
2000年  72,649   5,963     5,036     430
2001年  73,407   5,906     5,148     460
2002年  73,989   5,792     5,210     600
2003年  74,212   5,828     5,605     710
2004年  74,655   5,853     5,410      -

※使用済み自動車台数=(前年末自動車保有台数+当年新規登録台数)
-当年末自動車保有台数

出所:国土交通省、日本自動車工業会、日本中古車輸出業共同組合

これらの自動車解体事業者はもともとは自動車に使用されている良質な鉄を回収するする鉄屑業者であり、大昔、国産車の登場以前は部品調達に時間がかかる輸入車向けに補修部品(中古部品)の供給を行う事業者であった。

その後の大きな事業モデルの変遷は以下の通りである。

1)1970年代まで
主に鉄屑という原料販売することで生計を立ててきた。

2)二度のオイルショック(1971年、1979年)後
二度のオイルショックを乗り越え何とか安定を保ってきた鉄屑相場は、1985年のプラザサミットでドル高是正が合意されたことにより、それまで 2.4 ~ 2.7 万円 /t で推移していた鉄屑相場価格が 1.4 万円 /t まで暴 落し、鉄屑だけでは生計が立たなくなった。

結果として、解体車両から部品を取り出し、品質保証なしのリユース部品、若しくは品質保証を付けたリサイクル部品として自動車整備工場を通じて流通させるようになっていった。

しかし 1 社では、自動車整備工場からの自動車補修部品需要に対応できるはずもなく、その都度、近隣の同業者間で中古部品を融通しあうことで供給してきた。

3)その後
やがて、その相互融通による中古部品の供給にも限界がくると、より広範囲な自動車解体事業者が個々の中古部品を共通在庫としてコンピューターネットワークに登録し、組織化していこうとする動きが広がっていった。

このような動きの中で、グループ化されてきた自動車解体事業者間ネットワーク組織は、上述した NGP 以外に現在では全国に 15 ほど存在している。以下、主要流通グループの概要である。

<国内主要自動車解体事業者ネットワーク>

グループ         設立 加盟企業数 在庫登録点数 地域

NGP           1985年  160社   96万点   全国
ビッグウェーブ      1983年   95社 68万点   全国
SSG           1985年   43社   35万点   北海道
システム・オート・パーツ 1989年   62社   33万点   東北
部友会          1991年   35社   26万点   九州
シーライオンズクラブ   1995年   22社   18万点   九州
リサイクル総研倶楽部   2002年   86社   50万点   全国
SPN※          2003年    -     -     -

※SPN(スーパーライン・パートナーズ・ネットワーク)はNGPより分離・独立

上記の主要ネットワークグループの加盟企業数は、合計で約 500 社で在庫部品数は約 330 万点という膨大なデータベースが出来上がっている。全国の自動車解体事業者のうち、コンピューター化されている事業者数は約 1,000 社程度とされていることから、半数程度の事業者が上記 7 グループに加盟しているものと見られる。

【拡大が続くリサイクルパーツ】

各ネットワークグループでは、独自に中古部品に品質基準を定め、中古部品の品質向上を図っている。

筆者が矢野経済研究所に在籍していた当時の調べでは、1998年度の国内中古部品市場規模は 680 億円であったが、2002年度には 920 億円にまで拡大している。

また、データが多少古くて恐縮であるが、平成 15年に経済産業省が自動車部品流通戦略研究所に委託した「自動車リサイクル部品認知度向上調査」では、一般ユーザーにおけるリサイクル部品の一般的な認知度とリサイクル部品のどのような点に注目しているのかを 、インターネットを通じたアンケート調査を実施している。

自家用車が事故または故障により部品交換の必要性が生じたとの仮定で、リサイクル部品に関する情報に触れた際にどのような選択をするかを調べるため、二者択一の設問形式で回答を求めたものであるが、その結果はユーザーの 85 %がリサイクル部品を選択したことから、必要な情報が提供されれば、ユーザーはリサイクル部品を利用することがわかり、一般ユーザーに対するリサイクル部品の潜在需要が高いことが、確認されたとしている。

これまでリサイクル部品の販促活動は、新品部品と比較すると極端に少なく、一般ユーザーへの情報発信は殆ど行われていないのが現状であろう。

自動車解体事業者が中古部品の品質や保証内容に関する統一表示、市場動向に関する情報提供などを整備工場を通じて、一般ユーザーにアピールしていくことが出来れば、更に中古部品市場は拡大をしていくものと想定される。

【ネットワークグループ間の課題】

このように一見すると、順調に拡大が続いている中古部品市場ではあるが、その裏に隠された課題・問題も山積している。

上述の通り、1980年代後半から自動車解体事業者のネットワーク化が進んでたことにより、自社の中古部品だけでなく、コンピュータ上の登録在庫を調達することも可能となってきており、自動車整備工場のニーズにある程度は応えることが出来るようになりつつあるが、最大の課題は、多くのネットワークグループが独自ネットワークであり、その他のネットワークグループとの互換性がないことである。

自然な流れとしてこれらネットワークは、近年日本自動車リサイクル部品販売団体協議会を母体とするジャプラが開発したジャプラシステム、NGP ・ビッグウェーブが利用するエコライン、翼システムのパーツステーションの 3 つに収斂されつつあるが、これら 3 つのシステムは相互に未接続であり、業界デファクトが確立されていない状態が続いている。

こうした状況を、NGP グループから 2003年 4月に分離独立した SNP は、『市場環境並びにシステムの利用顧客に対する貢献度を更に高めるには、システム利用者が、NGP グループだけに限定される形では、今後の熾烈な競争に生き残れないとの観点から、このシステムの業界標準化を図る』としている。

また、各グループ間での中古部品品質基準もバラバラであり、このことも業界標準作りの障害となっている。

使用済み自動車から取り出される中古車部品に関しては、現状品(何も手を加えない状態)、状態確認品(スチーム洗浄程度)、品質保証品(テスタで品質確認)のように段階別に表示するようにすべきではないかと考える。

あくまでも中古部品の利用者は、最終顧客である一般ユーザーである。その利用者である一般ユーザーの利便性に寄与するものであるべきはずだ。結局、誰のためのシステム構築なのか、その視点が抜け落ちているのではないだろう
か。

【終わりに】

NGP グループは、約 3 億円もの資金を投じ新システムが稼動するとのことだが、ネットワーク会員の利便性向上を目的とするのではなく、結果としてリサイクル部品を利用する最終顧客=一般ユーザーオリエンテッドのために存在するシステムであるべきではないか。
その投資を無駄にしないためにも、NGP という狭い枠組みだけにとらわれず、ネットワークの全体最適化(業界ネットワークの標準化)を最終目標に取り組んでもらいたいものである。

<寺澤 寧史>

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