アビーム コンサルティングと住商アビーム自動車総研、中国における自動車部品メーカーの事業取組み状況を調査。中国での成功要因として、新規顧客獲得活動の回答が半数を超える。 ~高いアフターマーケットへの期待・模倣品の横行が課題に~

大手コンサルティング会社のアビームコンサルティング株式会社(以下:アビーム コンサルティング、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:西岡一正、旧デロイトトーマツ コンサルティング)と株式会社住商アビーム自動車総合研究所(以下:住商アビーム自動車総研、本社:東京都中央区、代表取締役社長:加藤真一)は、中国に 現地法人を持つ日系自動車部品メーカーを対象に、中国の自動車市場における事業の取組み状況に関する調査を実施いたしました。その結果、中国での事業成功 要因は「自動車メーカーの生産販売戦略」(82%)に続いて、「自社の新規顧客の開拓」(54%)が入り、部品供給先自動車メーカーに追随して進出したも のの、現状のQCD(品質・コスト・納期)改善や量産体制の構築に追われ、採算性や将来性を踏まえた新規顧客開拓活動などが充分でない状況があることが明 らかになりました。

※ 調査対象企業は、合計で31社、売上は、5000万元未満(14%)、5000万元~1億元(21%)、1~5億元(46%)、5-10億元(7%)、 10億元以上(11%)、取扱製品は、車体部品(48%)、エンジン部品(32%)、電装品・電子部品(32%)、駆動・伝導及び操縦装置部品 (19%)、懸架・制御装置部品(16%)、その他(3%)になります。

WTO加盟への期待と中国での事業成功要因

中国汽車技術研究中心の調査によると、中国の自動市場規模は、販売台数で2003年には400万台、2010年までには約800万台に達し、日本を抜きア メリカに次ぐ世界2位になるとされています。このような著しい成長が予測されるなか、市場に大きな影響を与えるWTO加盟に関して、今後3年間で、34% の日系自動車部品メーカーが「かなり期待している」と回答、「期待している」(7%)、「どちらかと言えば期待している」(52%)とあわせると、9割以 上の回答者が、WTOへの加盟が中国事業に好影響を与えると期待を持っている状況が明らかになりました。このように期待されている中国市場において、 82%の部品メーカーが、「自動車メーカーの生産販売戦略」を中国での成功要因と考えており、これは供給先自動車メーカーの中国市場でのシェア獲得が、供 給元部品メーカーの中国事業拡大の鍵を握っていることを考えれば当然のことといえます。54%の企業が成功要因とした「自社の新規顧客の開拓」に関して は、現在の事業体制を維持することに追われている企業が、今後予想される自動車メーカー間の競争激化や自動車メーカーからのコスト削減要求に対応すべく、 特定の自動車メーカーの依存度引き下げによるリスク分散や交渉力の強化への必要性を重視していることが背景として考えられます。

《中国事業成功要因》
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アフターマーケットへの期待と「模倣品」への懸念

住商アビーム自動車総研では、アフターマーケット(自動車補修・市販部品市場)の規模は、2002年の約630億元(約8千億円)から、2010年には約 1770億元(約2.3兆円)まで成長すると予測しています。この市場に対して、今回の調査対象企業のうち、35%の企業が市場に現在参入済み (23%)・計画中(12%)と回答しています。このうち、72%の企業が3年後の市場で成果に対し、「期待以上」・「どちらかと言えば期待以上」と回答 しており、アフターマーケットへの期待の高さがわかります。このように期待の高い中国市場ですが、課題を明らかにするために、現在と3年後の問題度合を5 段階で評価し、3年後の問題度の平均から現在の問題度の平均を引くことで、今後改善に向かうであろう課題を調査しました。その結果、現在、アフターマー ケットに参入・参入を計画している企業、参入計画のない企業とも、「模造品の横行」が現在も3年後も重要な課題であると回答しています。これは、中国国内 の零細部品メーカーにより粗悪製品や模倣品が反乱している現状、またコピーを続けることで、次第に技術力を身につけ、競合に成長することへの脅威などを企 業が抱いているといえます。
なお、参入済み・計画中の企業において、今後3年間で最も改善される項目は、「部品・部材調達先の品質・技術・開発力」(-0.73ポイント)、「自社の IT網の整備・構築」(-0.64ポイント)、「自社の物流網の整備・構築」(-0.55ポイント)であり、参入計画のない企業に比べ、特にサプライ チェーン網の構築、IT化についての問題解決に自信を有していることが伺えます。また、自動車メーカーによる原価低減要求強化と自動車メーカー間の競争激 化が予測されるなか、顧客開拓の競争優位性を確保するとともに、それら関連費用の低減を企業が視野に入れていると考えられます。

《アフターマーケット参入済み・計画中企業の課題点》

《アフターマーケット参入計画のない企業の課題点》

今回の調査結果を受け、アビーム コンサルティングの製造事業部プリンシパルの松尾博敏は、「中国は世界の自動車関連企業がこぞって進出、あるいは進出の準備をしており、アフターパーツの 分野でも大きなマーケットとなっている一方、本調査でも明らかになったような様々な課題が存在しています。中国におけるビジネスを成功させるためには、地 場企業とのアライアンス、製造・開発・販売・サービスまでの一貫した顧客・製品情報のフィードバック、法律・税務等のレギュレーションの問題をしっかりと 踏まえたビジネス戦略とオペレーションが必要不可欠であり、当社ではそのための効果的なビジネスシステム構築のご支援をさせて戴いています。」とコメント しています。
また、住商アビーム自動車総合研究所社長の加藤真一は、「アフターマーケットを販路、収益源とだけ見るか、自社の能力拡充と課題解決のためのイニシアチブ の一つという観点を加えるかで、数年後の自社の競争力やポジショニングが変わり得ることが、本調査でも示唆されていると考えます。今回はアフターマーケッ トを切り口にしましたが、企業の戦略や製品の特性、取引構造等に応じて強化すべき能力や解決すべき課題は当然異なり、イニシアチブも変わります。当社では 自動車業界の方々や同業界に参入予定の方々に戦略的課題解決のためのコンサルティングサービスをご提供しています。」とコメントしています。

アビーム コンサルティング株式会社
(旧デロイト トーマツ コンサルティング/ブラクストン)について
アビーム コンサルティングは、アジア、北米を中心とした海外ネットワークを通じ、それぞれの国や地域に即したグローバル・サービスを提供している総合マネジメント コンサルティングファームです。戦略、BPR、IT、組織・人事、アウトソーシングなどの専門知識と、豊富な経験を持つ約2000名のコンサルタントを有 し、金融、製造、流通、エネルギー、情報通信、公共などの分野を担う企業、組織に対し幅広いコンサルティングサービスを提供しています。年間連結売上高 (2003年5月期)は305億円

住商アビーム自動車総合研究所について
住商アビーム自動車総合研究所は、住友商事とアビームコンサルティングが共同で設立した自動車業界特化型コンサルティングファームです。500社以上の自 動車部品メーカーとのビジネスネットワーク、自前の自動車ディーラー90店舗の経営を始めとする自動車業界で展開している幅広いビジネスモデルにおいて住 商が培った自動車業界の知見に、アビームのコンサルティングノウハウを加えて、「経営と現場」、「業界と市場」の双方を結ぶ視点から、業界各社の自動車固 有の課題にソリューションを提供しています。