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コラム

日産中古車の「選択と集中」が目指すものとその課題

(日産、中古車販売事業を再編へ、店舗数を 1 割削減する一方で大型店を開設中古車関連の約 80 店を閉鎖へ。中古車販売台数を 2007年度に 1 割増の 22 万台に)

<2005年 06月 29日号掲載記事>

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日産自動車は、2008年度までに、約800ある中古車販売店舗の1 割に当る 80店舗を削減するとともに、一方で大型店の新規開設を進め、店舗運営コスト削減や競争力向上を目指し、2007年度に中古車販売台数を 22 万台と 2 万台引き上げの達成を目標としている。店舗を削減しながら一方で中古車販売台数は増やすという今回の発表は、奇異に感じられるかも知れない。

順を追って筆者なりの解釈を加えてみたい。

【自動車メーカーにとっての中古車事業】

そもそも、自動車メーカーの中古車事業には、どのような意味合いがあるのだろうか。

(1)新車取得コストの実質的軽減(リセールバリューを高め、新車購入負担を軽減)

(2)将来の新車代替母体の拡大(将来の中古車から新車への乗り換え客の囲い込み)

(3)ディーラーの新車投資能力の強化(収益源の多様化、収益力の強化)

自動車メーカーにとっての最大関心事は、市場投入した新車販売台数の動向であろう。最近の動きを見ていると、新車発売時期には、目標販売台数の 2 倍の受注を獲得した、1 万台受注とかの見出しが躍っているが、発売後 3 ヶ月から半年も経過すると、目標台数の 1 / 3 程度しか獲得できず、新車効果も限定的と言わざるを得ない状況が続いている。そのためには、少しでも新車を売りやすくするツールが必要となる。

かかる状況下にあって、(1)の新車取得コストの実質的軽減のために、リセールバリュー(残存価値)が最大化できるように新車販売時から各種の施策が必要になる。

例えば輸入高級車に取り入れられている各種プログラムが、それに該当する。

(A)メンテナンスプログラム
メンテナンスプログラムには、一定期間の定期点検サービス、消耗部品交換サービスが込まれており、常に万全のコンディションで車を使用することになることから優良な中古車が発生する。

(B)整備履歴
メンテナンスを担当する販売ディーラーでは、車の整備履歴やコンディションを把握しているから、トレーサビリティのしっかりした中古車が発生する。

(C)認定中古車
さらに、これらの車には、メーカーが定めた一定条件をクリアし、正規ディーラーでメンテナンスを実施して認定中古車とするから信頼性の高い中古車が発生する。

コンディションがよく付加価値の高い車を新車顧客以外に販売することは、上記の(2)将来の新車代替母体の拡大と(3)ディーラーの収益性の多様化、強化につながり、結果としてディーラーの新車への再投資に回ることは、自動車メーカーの期待に合致する。

【新車ディーラーにとっての中古車事業】

次に、販売を受け持つ新車ディーラーにとって中古車事業は、どのような位置づけにあるのだろうか。

新車ディーラー 1 社平均の売上高は、自販連の「自動車ディーラー経営状況調査報告書」によれば、2003年度で売上高約 93 億円となっている。

その売上高の約7割を新車販売に依存しており、利益総額も大きいものの、既に新車利益率は、1 割を割り込み薄利多売の様相を呈している。

一方で、中古車部門は着実に売上高比率、利益率の両面で拡大を続けており安定した収益源となっていることが分かる。売上利益率では、既に数年前から新車より、高い利益率を実現している。

サービス入庫による売上高は、全体の 16 %強、利益率は 40 %を確保しており、ディーラービジネスでは最も収益率が高い。この利益の源泉は、新車部門から大半がもたらされているものと想定されるが、ここ数年新車販売部門が横ばいで推移している状況を考慮すると、中古車部門からも利益がもたらされているはずで、利益率の高いサービスや部品の売上も伸びてきていると考えられる。

新車販売が足踏みを続けている昨今、堅調に伸長している中古車販売の流れを断ち切ることなく拡大させていくために新車ディーラーでの中古車売り方の工夫も求められるところでもある。

<部門別売上高比率および利益率>
.          1999年度  2000年度  2001年度  2002年度  2003年度
新車   売上高 67.0 %  67.3 %  66.4 %  66.1 %  68.4 %
.      利益率 10.5 %  10.9 %  10.7 %  10.4 %   9.5 %

中古車  売上高 12.2 %  12.1 %  12.7 %  12.9 %  13.4 %
.      利益率 11.9 %  12.6 %  12.8 %  12.6 %  13.9 %

サービス 売上高 16.0 %  15.6 %  16.1 %   15.8 %  16.2 %
.      利益率 39.7 %  39.8 %  40.6 %  40.7 %  40.0 %

部品   売上高  3.2 %   3.4 %   3.2 %   3.4 %   3.5 %
.      利益率 25.9 %  26.1 %  27.4 %  28.0 %  27.4 %

その他  売上高 1.6 %   1.6 %   1.6 %   1.8 %   1.6 %
.      利益率 17.1 %  18.9 %  16.5 %  18.2 %  15.2 %

* 注:売上高比率は、全体売上高に占める各部門の売上高
利益率は、各部門の売上高に占める売上利益

出所:(社)日本自動車販売協会連合会
「自動車ディーラー経営状況調査報告書」

【日産自動車の中古車事業再編の中身】

今回の日産自動車の中古車販売店の削減と大型化による店舗効率化の促進と中古車販売台数の 1 割拡大について、実現の可能性はあるのか、その意味するところは何か論議してみたい。

現在の日産自動車の中古車販売台数は、800 店舗で年間 20 万台であり 250台/店の販売台数となっている。これを向こう 3年で店舗数を 1 割削減し、集約化を進めることで 300台/店とし 1.2 倍に拡大としようとするものである。

この中古車事業再編に伴う、期待される効果は次の 3 点であると思われる。

(1)中古車販売台数の拡大(将来の新車代替母体の拡大)

ここで以下の条件の中古車販売店が 10 店舗あったと仮定する。

A:10 店舗 2 店舗  2 回転/月  2台/月×2 店舗=4台
8 店舗 0.5 回転/月 0.5台/月×8 店舗=4台
と 10 店舗合計 8台/月の販売となる。

これを店舗を 1 割削減し、集約化を図ることで、中古車の品揃えが充実し、これまで以上の集客効果が期待できるようになり、一部の店舗で回転率が向上したとしよう。

B:9 店舗  5 店舗  2 回転/月  2台/月×5 店舗=10台
4 店舗 0.5 回転/月 0.5台/月×4 店舗= 2台
と合計 12台 /月の販売となり、店舗数は 1 割減ったにもかかわらず月間の中古車販売台数は、従来の1.5倍に増加することになる。

(2)ブランドエクイティの向上(新車取得コストの実質的軽減)

中古車はよく「生もの」に例えられるように鮮度が命の商品である。日々、鮮度が落ち市場価格が下がっていくという商品特性を持っている。ここに、抜群に鮮度がよく100万円で売れるクルマがあったとして、半月毎に 1 万円ずつ値崩れしていくと仮定しよう。

(1)の A のケースでは、2 店舗は 1 回転するのに半月なので販売価格は 99 万円、8 店舗は 1 回転するのに 2 ヶ月かかるので販売価格は 96 万円となる。この 10 店舗での平均販売価格は 97.5 万円となる。((99 万円×4台)+(96 万円×4台)÷8台=97.5 万円)

一方、B のケースでは、5 店舗が半月で1回転と回転率が上がり販売価格は 99 万円、店舗削減により 1 回転するのに 2 ヶ月かかる店舗は 4 店舗で販売価格は 96 万円となる。この 9 店舗での平均販売価格は 98.5 万円となる。((99 万円×10台)+(96 万円×2台)÷12台=98.5 万円)

従って、市場価格で平均 1 万円のブランドエクイティが向上することになり、その分新車購入コストは下がるということになる。

(3)収益性の更なる拡大(ディーラーの新車投資能力の強化)

仮に、前述した中古車の仕入原価が 90 万円だったとしよう。

A のケースでは、台当り利益 7.5 万円であり 8台の販売で 60 万円の利益を稼ぐことになる。また、B のケースでは、台当り利益は 8.5 万円、12台の販売で 102 万円の利益を稼ぎ、全店舗合計の収益性は、70%も拡大することになる。

そのことは、ひいては将来への新車への再投資に振り向けられる可能性も大きくなることを意味している。

このように(1)~(3)を通じて「店舗数を削減しながら販売台数を伸ばす」という命題には、実現の可能性も意味もあるということになる。

しかし、これはあくまでも机上の計算であり、上記の 3 つの実現に向けて幾つかの超えなければならないハードルがある。

第一に、ディーラー側では、中古車部門の人事・組織戦略の見直しが必要であろう。

人事面では、中古車部長に将来の店長候補となるくらいの一流の人材を登用すべきである。スーパーマーケットで生鮮三品の売り場に最も優秀な人材が配置されるのと同様に日々鮮度の落ちる中古車の仕入、陳列、在庫管理は一流の人材にしかできない。

また、組織面では、新車部門のご都合主義に左右されず、適正な下取り価格の値付けや仕入が確保されるよう確乎たる権限が付与されたものであるべきである。

第二に、自動車メーカー側でも単に拠点数の削減やディーラー自身の自助努力に期待するだけでなく、中古車が売れるための仕掛けや仕組みをディーラーに提供すべきである。
例えば、本日加藤が述べているような個人リースの活用や、本コラムの中で触れたような輸入車が導入しているメンテナンスプログラムや中古車認定制度など新車販売時点からの各種施策との統合も必要なはずである。

<寺澤 寧史>

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