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コラム

「アフターマーケットの成功者たち」『第 16 回 ガリバーインターナショナル 』

国内製造業の屋台骨たる自動車産業。国内 11 社の自動車メーカーの動向は毎日紙面を賑わしている。

しかし、消費者にとって、より身近な存在であるはずの自動車流通業界のプレーヤーについては、あまり多く知られていないのも事実である。

群雄割拠の国内の自動車流通・サービス市場において活躍する会社・人物を、この業界に精通する第一人者として業界内外で知られる寺澤寧史が、知られざる事実とともに紹介する。

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第 16 回『ガリバーインターナショナル』

中古車市場はこの 10年で大きな変貌を遂げた。オートオークション市場への出品台数はほぼ倍増の勢いで伸びており、中古車販売事業者の仕入れの半分強はオークション経由となっている。そうした中、オークション市場に高品質な中古車を供給し市場の一翼を担っているのが、中古車買取店である。

今回ご紹介するのは、中古車買取業界の文字通りガリバーとなった『ガリバーインターナショナル』である。

ガリバーインターナショナルの設立は 1994年 10月で、設立後 4年で店頭公開、2000年 12月に東証二部上場、2003年 8月東証一部上場と順調に成長を遂げている。全国 500 ヶ所の視認性のよい立地に目立つ黄色の看板を掲げているし、テレビや雑誌の宣伝広告も活発なので、査定までしたことはないという人でも一度は名前を耳にしたことがあるはずだ。

【ガリバーのビジネスモデル】

ガリバーのビジネスモデルは近年かなり複雑化しているように見えるが、本質的には直営店での中古車買取事業と、FC 店に対してブランドや技術、アセット、サービスの利用料を課金する B2B 事業(FC 事業)の二本立てである。

<FC 事業>

収益の 7 割は直営店での中古車販売事業からもたらされるが、設立当初は FC店が主体で、しかも非常に特徴的であったことから、ガリバーといえば一般にFC 事業を指すものと考える人が多い。そこでまず、FC 事業のビジネスモデルから考えていくことにしたい。

ガリバーの FC 事業は、設立当初は買取の一本立てで、それをバリュー・チェーンとプロセスごとに分解して、本部と FC 店の役割を明確に区分し、FC 店の負担を最小化したこと、つまり機能の分化と特化に特徴があった。

第一に、中古車事業のバリューチェーンを買取と販売に峻別し、販売はオークションに任せて自らは買取だけに特化したことが特徴である。

第二に、中古車買取に必要なプロセスを大幅に単純化した上で、検査と査定、作業と判断に分解し、FC 店舗には本部の基準に基づく車両状態の検査と顧客・車両インターフェース(接客)の作業だけを任せ、集客(宣伝広告)や、検査結果に基づく価格査定とオークション出品のタイミングや場所の判断は本部に一元化した。

ガリバーは設立後 5年という驚異的なスピードで全国約 500 店舗の展開を完了することに成功したが、そこに寄与したのがこのバリューチェーンとプロセスの単純化・分化・特化を伴う FC 制である。短期間に全国レベルでの認知度と店舗インフラを大量に開発することがこの業態に不可欠であり、業界に精通したプロ集団ばかりを集めてそれを実現することは不可能だった。

寧ろ本部の指示に躊躇・先入観なく聞き入れることのできる業界の素人ばかりを起用して、素人でも戦力化できる中古車事業モデルを創出したことで、時間の壁、専門性の壁を取り払うことができたと考えるべきである。

ところが、2000年度を境にガリバーは FC 店の整理・縮小と直営店舗の増強・拡大に走った結果、ガリバーの FC 事業は大きく変質している。

FC 店は 01年 2月期の 473 店をピークに毎年数十店ずつ減少し、05年 2月期では 249 店となっている。逆に、98年 2月期には 36 店しかなかった直営店は年々増加し、05年 2月期には 248 店と FC 店と完全に比肩する水準となった。

FC 事業の基本的な収益は FC 店からのロイヤルティ収入であり、その水準はほぼ月額 100 万円と推計されるので、ピーク時の 01年 2月には年間 60 億円弱のロイヤルティ収益があったと思われるが、05年 2月期では 30 億円強と、半分近くまで落ち込んでいると思われる。

FC 事業のロイヤルティ収益の減少を補っているのが、主として以下の 3 つである。これらの会費・手数料を合計すると約 40 億円と推計され、ロイヤルティ収入の落ち込みを補ってあまりあると考えられる。

1)ドルフィネット
全国の店舗で買取られた車両がオークション出品されるまでの期間、ネット上に共有在庫として保持し、他の店舗が優先的に落札できるようにしたもの。衛星通信と専用端末を利用する。ガリバー自身は、情報配信料とマーケティング費を毎月徴収しているほか、落札時に手数料を徴収する。

2)ウェブジオーク・ GAO オークション
ドルフィネットと同様にオークション出品までの期間の共有在庫を落札するシステムだが、ドルフィネットが主としてガリバー店舗用であり、衛星を利用するのに対して、整備工場などガリバー店舗以外向けに開発したインターネットを利用したシステム。ウェブジオークはワンプライスでの落札であるのに対して、GAO オークションは競り上がり制である。
ガリバーはいずれも落札時の手数料を徴収している。

3)ジーパス
上記 2)のうち追加料金を払った会員向けに特別サービスを提供するもの。車両のオークションでの相場価格が分かる「ガリバー買取値付システム」や落札代金支払延長が可能なスライドファイナンスが利用できるシステムである。ガリバーは定額の月額会費を徴収している。

<直営事業>

直営店の中古車販売事業は今やガリバーの収益の 7 割を支える基幹事業である。

前述のとおり 98年 2月期には 36 店舗しかなかった直営店だが、その後年を追うごとに 99年 2月期 63 店、00年 2月期 92 店、01年 2月期 126 店、02年2月期 154 店、03年 2月期 198 店、04年 2月期 205 店、05年 2月期 248 店と、FC 店を吸収しながら店舗数を拡大している。

また、弊社の推計では一店舗辺りの買取台数も 03年 2月期頃までは年間 500台前後だったものが、04年 2月期に 600台を超え、05年 2月期には 650-660台に到達したのではないかと思われる。大規模化も進んでいるのである。

さらに収益性も向上しており、02年 2月期頃まで 4 万円台だった単位営業利益が、昨今は 7 万円台に達していると見られる。買取環境は後述するように厳しさを増しているはずなので、システムや店舗投資の償却が一段落した成果が出始めたことによるのではないかと思われる。

この結果、直営事業の営業利益は 02年 2月期の 38 億円から、05年 2月期には 3 倍以上の 126 億円まで伸長している。同じ 05年 2月期の FC 事業の営業利益は 14 億円にとどまる。この年には金融事業で先行投資が膨らんだという特殊要因はあるものの、今やガリバーは 「FC のガリバー」ではなく、「直営のガリバー」となっているのである。

【顧客に対する価値提供:Customer】

ガリバーが提供する中古車買取システムを利用する自動車ユーザーへの価値提供は次の 4 つに大別できる。

1)買取価格の透明化
ガリバーの提供する中古車買取価格は、全国のオークション取引を基にした買取価格であり、提示価格は全国統一価格である。
ガリバー以前には、自動車ユーザーが車を売るには、新車ディーラーに下取りに出して新車を買うか、中古車販売業者に売却するかのどちらかであった。新車ディーラーの場合は新車値引と下取り価格の境目が不明確だったし、中古車販売業者の提示する価格は業者ごとの開きが大きすぎて、信頼性が置けないという消費者が多かった。ガリバーはこうした問題を解消したのである。

2)買取価格の地域格差の解消
ガリバーの買取価格は全国統一価格であるため、これまでのように地域によって同程度の中古車でも中古車価格にバラツキがあったのを解消することに成功しいる。すなわち全国どこのユーザーが中古車の査定を依頼しても、買取提示価格で不利益を蒙ることがなく、安心して利用できる環境となっているのである。

3)買取価格のリアルタイム化
ガリバーは、買取後直ちにオークションに出品するから、従来の中古車販売業者のように在庫に伴う費用や金利が発生せず、それらをコストとして差し引くことのない時価どおりの買取価格が理論的には提示されることになる。

4)売却のための労力低減
これまでユーザーが中古車を売却あるいは下取りに出すにあたっては、複数の業者を回る手間が掛かった。
中古車売却に労力を厭わないユーザーであればまだしも大方のユーザーは納得さえ行けば一度で売却を決めたいと思うものである。ガリバーは、中古車を売却するユーザーの立場で中古車相場を根拠にした価格を提示することでユーザーに納得感を与えたのである。

【競合他社に対する優位性:Competitor】

ガリバー以外にも中古車買取店は存在するが、競合する他の買取チェーンと比較すると次の点で優位性がある。

1)抜群の顧客認知度
ガリバーの認知度は首都圏で 94 %に達し、第二位のアップルの 70 %、第三位の T-UP の 47 %を引き離している(プロト調べ)。いまだに訪問販売が主体の新車ディーラーと異なり、来店型販売の買取業態では知名度は最大の武器になる。また、他社がこの形勢を逆転しようとすれば、相当の宣伝広告投資が必要になり(プロトによると買取店の認知経路の 78 %はテレビコマーシャルである)、収益を、ひいては買取価格を圧迫することになる

2)知名度に合わせた効率的な店舗展開
いくら知名度を得てもユーザーの近隣に店舗が配置されていなければ買取に結びつかない。ガリバーの 497 店に対して、第二位の T-UP は 488 店、第三位のラビットは 414 店である。店舗数では絶対的ではないが、知名度との兼ね合いでは最も効率的な出店が出来ていると言えるだろう。
また、店舗数だけでなく店舗の配置も重要である。他の買取チェーンでは仲の良い複数の中古車販売事業者が共同出資で創業したものもあり、拠点数はそれなりに多いものの実態は出資者が複数店舗を持ち、出店エリア調整や店舗のリロケーションをフレキシブルに実行できないという致命的な欠点を内包していることや、店舗開発スピードが見劣りするものもある。

3)全国統一価格の提示
当たり前のことのようであるが、ガリバーでは直営店ではもちろんのこと、FC 店での買取もデータベースを具備したガリバー本部が査定するため、全国統一価格をユーザーに提示できる。
ところが、他の買取チェーンではそうした機能がなかったり、そうした体制を取っていないために顧客に提示する価格は店舗ごとにバラバラというケースも多い。多くの競合他社は、ガリバーが顧客に提供している価値を同じレベルでは提供していないということになる。

【ガリバーの強み:Company】

これら顧客価値や競合優位性を産み出すガリバーのリソース面、アセット面での強みは、以下のように整理することが出来る。

1)本部機能が存在する組織体制
これも全く当たり前のことのように聞こえるが、ガリバーには情報を一元的に集約・管理し、一元的に指示・統制する FC本部というものが存在する。その結果、FC 店の指導・教育をしたり、エリア調整を行なったり、出品先や車種の絞込みや分散を行なったり、全国統一のサービスを提供することが可能になっている。
逆に言うと、他社ではチャネル・キャプテンが存在しないか、指導力や強制力をあまり持たない立場に置かれており、同様の価値や優位性が発揮しにくくなっている。

2)データ解析が可能な情報システム
全国の情報集約が可能な体制にあり、年間 30 万台の買取出品実績があればこそだが、過去の取引情報をデータベース化して、車種・出品先を最適化する情報システムを構築している。
この結果、店舗や地域ごとの恣意裁量による収益のバラつきや顧客の不満を解消し、競争力と収益性を両立する買取・出品が可能になっている。

3)機動的な直営店を内包するチャネル体制
FC 店とのコンフリクトという副作用はあると思われるが、一定比率まではチャネルに適度な緊張を与え、本部が策定する戦略が浸透するスピードや深さでは直営店に優るものはない。また、本部と現場とのローテーションや情報交流により、本部が現場から遊離した企画や計画を立てたり、現場が近視眼的になりすぎることを防ぐ効果もあると思われる。

【ガリバーの課題】

3C (Customer、Competitor、Company)分析の結果からは、ガリバーはいかにも磐石に見える。だが、強いて課題・弱点を挙げるとすれば以下の点である。

(1)新車ディーラーとの競合

買取業界から見れば、これまで中古車の仕入れに消極的だった新車ディーラーの買取強化は、代替品もしくは新規参入の脅威となる。

だが、実際のところ、下取・買取を合わせたマーケットは 430 万台と推計され、そのうち買取台数は 70 万台だから残り 360 万台は新車ディーラーに下取で流れている。

現在、新車ディーラーは買取業界と同様にオークション相場に買取基準を変更しつつあり、本気で買取に乗り出した場合には拠点数で 16 千を超え、知名度でもガリバーを凌駕するだけに油断は出来ない。

(2)オークションの交渉力強化

ガリバーの販売先はオークション(正確にはそれを通じた中古車販売業者)のため、仮にオークション側が締め付け(出品制限はなかろうが、出品料や成約料の値上げはありうる)を強化してきた場合には、収益性、ひいては買取価格競争力に影響してくる恐れがある。

オークション側にとってもガリバーは上顧客であるから、短期的にはこうした事態は考えにくいが、今後ガリバーの買取台数・出品台数が減少してくると、オークション業界は寡占化が進んでいるだけにありえないとはいえない問題となる。

ガリバーが急速に多角化を進め、自社オークションを開始した理由はこれらの中長期的課題に対処するためであろうと思われる。また、その成否は多角化した事業の中でも買取店以外の店舗向けの事業、とりわけオークション事業の成否と、本業の買取事業での台数維持に掛かっていると考えられる。

「日本の自動車流通に革命を起こそう。そして多くの方がライフスタイルに合わせて中古車を気軽に乗り換えられるよう、中古車をより魅力的なものにしていきたい」という 10年前の羽鳥社長の言葉に心から賛同する筆者はガリバーがこれらの課題を乗り切って、自動車流通革命を実現する日を一日も早く見たいと思う。

<寺澤 寧史>

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