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コラム

AYAの徒然草(45)  『脳の気分転換で、ライバルに差をつける。』

仕事で成果を出すことにも自分を輝かせることにもアクティブなワーキングウーマンのオンとオフの切り替え方や日ごろ感じていることなど素直に綴って行きます。また、コンサルティング会社や総合商社での秘書業務やアシスタント業務を経て身に付けたマナー、職場での円滑なコミュニケーション方法等もお話していくコーナーです。
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第45回 『脳の気分転換で、ライバルに差をつける。』
小学生の時、漢字の書き取りテストに向け、家で一生懸命ノートに書いて反復練習をし、完璧に覚えたと思ったのに、いざ、テストに臨み、答案用紙を見た瞬間に、「思い出せない!頭が真っ白になってしまった!」という経験ってありませんか?
また、こんな話を聞いたことはありませんか?スポーツ選手が、練習の時は上手くできていたのに、なぜか本番では失敗してしまうというような話です。たとえば、フィギュアスケートの選手が、練習の時はジャンプに成功していても、なぜか本番になるとミスをすることが多いとか、陸上の走り高跳びの選手が、練習の時は余裕で飛べていた高さなのに、本番ではなぜか失敗してしまうとか。

どの話も、「本番では緊張していたから」と思いがちですが、実は理由はそれだけではないんですよ。どうしてだかおわかりになりますか?

私が最近読んだある本に、「人間の脳は、新しい知識や技術を習得しようとする時、その知識や技術を単独では覚えられない仕組みになっている」と書いてありました。専門用語で「文脈干渉効果」と言うそうです。
人は、何かを覚えようとする時、その時の「状況込み」で覚えてしまうんだそうです。つまり、何か新しい知識や技術を習得しようとする時に、同じ状況で繰り返して練習してしまうと、その知識や技術とその時の状況が結びついて記憶されてしまうそうなんです。

さきほどの漢字の書き取りの練習の場合、いつも自分の部屋の自分の机で、いつも同じノートで練習してしまうと、覚えたい漢字と状況(「自分の部屋」と「ノート」という状況)が一緒に記憶されてしまいます。だから、テスト本番の時は思い出せなくなってしまったんですね。「自分の部屋」が「学校の教室」に変わり、「ノート」が「答案用紙」に変わった途端、覚えた漢字がするすると出てこなくなるのです。
スポーツ選手の話も同じです。いつも同じ場所で同じ練習を積んでいると、本番の会場が練習の時と違っただけで、いつもの実力が出せなくなることがあるのです。

学習効果を妨げるこの脳の仕組みを回避するためには、習得したい知識や技術を「状況」と切り離して習得しなくてはなりません。そのためには、時々、漢字の勉強をする状況を変えてみた方が良かったんですね。
ランダムに、今日は自分の部屋で計算用紙に書く、明日は図書館でノートに書く、たまにはリビングのテーブルで裏紙に書く、というように。知識と状況の切り離しに成功すれば、状況(場所)が変わっても、習得したことを思い出しやすくなるんです。

さて、「何かを習得しようとする時、その時の状況込みで覚えてしまう」ということは、つまり、「状況が揃うと、するすると思い出す」ということですよね。ということは、裏を返すと、「この状況だとこのことしか思い出せない。」または、「そのことばかり頭に思い浮かんでしまう。」ということでもあり、弊害もありそうです。

こんなことってありませんか?たとえば、みなさんが、仕事で、何か考えごとをしなくてはならない時、いくら考えても良いアイデアが浮かんでこないというようなことです。「ベストな解決策は何だろう?」とか、「どうしたらカイゼンできるかなぁ?」と試行錯誤をしなくちゃいけない時なのに、考えても考えても時間だけが過ぎ去り、行き詰ってしまうことです。
思い当たる節のある方は、考える状況(場所)がいつも同じになっていませんか?会社の自分の席か、家の自分の部屋か、または通勤の電車の中でというように。

考える状況(場所)に変化がないと、脳は、「この状況(場所)で考える」というモードのままで突っ走るため、考えるための材料(知識や経験)がいつも同じものしか揃わないのです。そうなると、いくら考えたって同じ思考にしかならないのです。考える状況(場所)に変化がないと、新しい発想や斬新奇抜なアイデアはなかなか思い浮かんでこないんです。

そんな時は、ちょっと外に出て散歩をしながら考えてみるとか、家から離れたところにあるカフェでいつもと違う景色を見ながら考えてみたりして、考える状況(場所)を変えてみるだけでヒラメキが訪れます。これは、単なる気分のリフレッシュではなかったんです。ちゃんと脳の仕組みの理屈があってのことだったんですよ。

当社では、みんなでアイデア出しを行う際にこんな工夫を施していました。
新しいビジネスモデルについて全員でブレーンストーミングを行う時に、通常の机とイスの会議室ではなくて、違うフロアーにある畳の会議室で行っていたことがありました。(現在は、その畳の会議室を撤廃してしまったため、普通の会議室で行っています。)「畳の部屋」という会社生活から離れた非日常の空間で靴を脱ぎ、開放的な気分でアイデア出しを行うことで、執務を行うオフィスでは思いつかないような斬新なアイデアがじゃんじゃん出てきていたのです。状況の切り替えが、私たちの脳の思考回路を切り替えていたのです。

また、「何かを習得しようとする時、その時の状況込みで覚えてしまう」という脳の仕組みから想像すると、現在の自分の実力は、「今の会社で」、「今の勤務地で」、「今のポジションで」、「今の上司・部下・同僚で」といった現在の様々な状況込みでの実力かもしれません。そのうちの一つでも状況が変わってしまうと、同じ実力は発揮できないかもしれないのです。つまり、自分の本当の能力は、全く違う環境でもすぐに適応し、その上で、同じ能力を発揮できるかどうかだと思うのです。

これは、「転職」を経験したことのある方は納得すると思います。私も、転職経験があるので実感しています。会社が変わると、当然ですが、周りにいる人が変わります。それに、社風も違えば慣習や文化、常識までもが違ってきます。そんな中で、それまでの状況込みで習得した自分の能力を同じように発揮するまでには苦労することも多く、また、時間も掛かるものです。でも、自分の本当の実力を試す良い機会になったと思うのです。

習得したいことを状況と切り離して習得するために、斬新なアイデアがすぐにヒラめくように、また、自分の置かれている状況がいつか変わる場合にも備えて、日頃から、脳の柔軟性を養っておいた方が良さそうです。それには、たまには自分の専門外の分野の話にも積極的に耳を傾けて脳に気分転換をさせ、新鮮な空気を吹き込み、思考のマンネリ化を防ぐ訓練をしておいた方が良いかもしれません。脳も、楽な方へ楽な方へと働きやすい仕組みになっているようですから。

私は、そのような訓練の一つとして、最近、読む本の選び方をちょっと変えてみたんです。仲の良い先輩や友人に、最近読んだ本の中でオススメの本を聞いて、その本を読むようにしているんです。その人が良いと思った本を読むと、その人の興味の的がわかり、心の内を覗いた気分になってなかなか面白いのです。でも、これが目的ではありません。

みなさんもそうだと思いますが、自分が日頃読んでいる本は、当たり前ですが、自分が読みたいから読んでいるんですよね?本屋さんに行って、たくさんの本が陳列されている中、自然と目が行き、手を伸ばしている本を読んでいるんだと思います。
でも、自ら興味を持って読んだ本は、おもしろいと思う確率は高くても、「新鮮さ」に出会う確率は低いのです。それが、人が薦めてくれた本だと、未知の世界に触れることが多いのです。ただし、「う~ん、なんだか最後までよく理解できなかったなぁ・・・。」と思う時も正直言ってあります。それでも、自分の興味の殻を割って外に飛び出している分、いろんな刺激を受けることは間違いないのです。まさに、脳を気分転換させて思考のマンネリ化を打破している感覚です。

自分の興味のあることや、専門分野を追求することはとても大切なことです。でも、それは、ともすると、視野を狭めていることにもなっているかもしれません。また、同じ分野にいる人たちは、皆、同じように専門性を極めるように努力しています。
そんな中で、ライバルに差をつけるためには、違う分野にも触れて視野を広げることも大切だと思うんです。そして、日頃から脳に気分転換をさせて、身につけたい知識や技術を状況と切り離して習得する訓練を積み、どんな状況でもすぐに適応できる人間になりたいなぁと思います。

<佐藤 彩子>

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