ホンダ、韓国へ「CR-V」輸出と販売を開始。「アコード」に…

◆ホンダ、韓国へ「CR-V」輸出と販売を開始。「アコード」に次ぐ2車種目
米国モデルをベースに本革シートを標準装備するなど顧客の嗜好に合わせた

<2004年10月12日号掲載記事>
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今年になって日系自動車メーカーによる韓国市場進出のニュースが目に付くようになってきている。

今回のホンダの CR-V 投入は今年 5月のアコード投入に続くものであり、日産もインフィニティブランドで高級車を販売予定であるとのこと。トヨタは既に 2001年よりレクサスブランドで高級車市場へ参入している。

韓国の自動車市場は、2003年には約 132 万台とアジア有数の市場規模となっており、輸入車市場も、関税の引き下げや日本車輸入解禁(1999年)などの施策により、2003年で約 2 万台規模まで成長している。こういったことが日系自動車メーカー参入の主要因であることは間違いないが、それに加えて対韓国自動車メーカーという観点からの戦略的な意味もあるのではないかと考える。

韓国自動車メーカーはアジア通貨危機後の業界再編を経て着実に実力をつけてきている。2003年の世界販売台数を見ると現代自動車の販売台数は日産、ホンダを越え、J.D. パワーアソシエイツの初期品質調査でもトップクラスの高い評価結果を得ている。主戦場となる北米、西欧でも韓国自動車メーカーは販売台数を増加させており、特に北米のエントリーカーセグメントでは 90% 超と圧倒的なシェアを獲得している。

韓国自動車メーカーの競争力の源泉は価格競争力と優れたコストパフォーマンスにある。米国市場を見ても韓国自動車メーカーの販売価格はどのセグメントにおいても日米欧の競合モデルと比較して、相対的に安価に設定されている。一方、品質的にも先程言及したように目覚しい向上を遂げつつある。そして、その価格競争力は主に韓国全体の低コスト構造によりもたらされている部分が大きいと思われる。

かつて北米に進出した日系自動車メーカーがその優れた品質とコストパフォーマンスでビッグ 3 からシェアを獲得してきたように、韓国車メーカーは日系自動車メーカーと類似した道程をたどってきており、今後脅威となりうることが想定される。実際、今後の動きとして現代自動車はトヨタのレクサスのような高級車ブランドを立ち上げる計画もあると伝えられている。

しかし、類似した道程をたどっているものの、現段階では日系自動車メーカーと韓国自動車メーカーでは利益構造の面において異なる部分があるものと思われる。

日系自動車メーカーの場合、現在北米が収益の柱となっており 6~ 7 割を北米に依存していると言われている。これまで小型、中型、大型、SUV の各セグメントで販売台数を伸ばしてきたのに加え、今後はビッグ 3 の最後の砦であるピックアップで相次ぎ新車を投入していく予定である。

一方、韓国自動車メーカーの場合、北米で急激にシェアを伸ばしているといっても、それはエントリーカークラスの話であり、収益の柱はこれまで規制に守られ各セグメントでシェアを独占してきた自国であると思われる。

実際、現代自動車の平均販売価格を国内市場向けと輸出向けで比較した場合、国内市場向け平均価格は輸出向けより 50% 以上高くなっている。クラス別にも輸出向けは排気量 1~ 1.5 リッターの乗用車の比率が高い一方で、国内向けは排気量 2 リッター以上の MPV の比率が高くなっており、高単価車種の販売が多い。

韓国自動車メーカーは自国内で得た利益をもとに価格競争力を高め、積極的な海外進出を展開している面が少なからずあるであろう。

そう考えると今後、競合が予想される韓国自動車メーカー対策として、彼らの利益の源泉である韓国市場(特に自動車メーカーの収益の中心となる中、大型、MPVといったセグメント)をいかに切り崩すかというのも日系自動車メーカーにとり重要なテーマの一つとなるのではなかろうか。現段階での韓国における輸入車シェアは 2% に満たない微々たるものであるが、今後この割合が徐々に拡大していく可能性は否定できないし施策次第でそのスピードを加速させることも可能と思われる。

その意味で今回のニュースは韓国自動車メーカーの利益の源泉である韓国市場を切り崩すための施策とも位置付けることもでき、その成果が注目される。

<秋山 喬>