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コラム

IT化や電動化に伴う自動車業界の役割の変化の可能性

◆Google、“自動運転カー”プロジェクトを発表。既に公道で試運転中

同社の車で収集した膨大な情報をデータセンターで処理することで実現するとしている。 米Googleは10月9日(現地時間)、自動車用自動運転システムを開発中であると発表した。既に米カリフォルニア州の公道で走行テストを実施しており、同システムを搭載した自動車を14万 …

<2010年10月10日号掲載記事>

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【米グーグル社の自動運転プロジェクト】

米国でグーグル社は自動運転システムの開発プロジェクトを進めているという。単に開発に着手しているという類の夢物語ではなく、既に合計 22 万 km 以上の公道実験にも成功しているという。

元々、米国では政府主催で自動運転車両のレースも開催されているというが、今回のプロジェクトには、こうした分野のエンジニアを集めて取り組んでいるという。

実験車両は、各種カメラ、センサー等々を搭載したプリウスで、周囲の状況を把握しながら、同社の地図データと照らし合わせて、人工知能で判断・走行するというもの。走行にあたっては、運転席にはドライバー、助手席にはソフトウェアエンジニアが座り、常時システムの動作状況を監視し、安全面も配慮して行ったという。

自動運転自体は、昔から期待されている将来技術であり、当社も自律走行や自動運転につながる運転支援技術を実現していると言われる方も少なくないと思う。今回の報道において、技術面以上に注目すべき点が二点あると考える。一つは、自動車業界の企業ではなく、IT 業界のグーグル社が取り組んでいるという点、もう一つは、政府もしくは自治体(地元警察等)公認で取り組んでいるという点である。

【異業種企業の脅威】

ご承知の通り、リーマンショック以降、米国大手自動車メーカーは窮地に追い込まれ、再建を目指している状況にある。日系自動車メーカーも決して楽観できる状況ではないが、グローバル市場での競合は、欧州メーカーや韓国メーカー、そして中国に代表される新興国メーカーになる、と考えている方も少なくないだろう。

確かにこれらのメーカーとの競合は避けられないだろうが、ここにきて、昨今の為替相場を巡る攻防を見て、改めて米国経済の底力に脅威を感じている方もいっらっしゃると思う。こうした中、米国で引き続きグローバル市場を牽引し続けている IT 業界の雄が、短期的に実現可能な商品ではなく、将来に向けた技術開発という側面で自動車業界にも参入してきたということに注目したい。

数年前であれば、「米 GM と米グーグルが自動運転技術を開発」という形になっていたかもしれない。しかし現実には、日本のトヨタ製の車両を改造して、グーグル社が単独で取り組んでいる、という状態である。IT 企業単独であっても、その気になれば、ここまで踏み込んだ技術開発にも取り組むことが可能であるというのは、大きな脅威と考えるべきであろう。

こうした異業種の脅威は、IT 業界に限った話ではない。以前、以下コラムでも指摘したが、電気自動車(EV)という製品が、業界構造の変化をもたらす可能性もある。EV においては、実に二次電池が車両価格の半分以上のコストを占めるといわれており、その高価な主要部品の調達に、電池メーカー各社の協力が不可欠だからである。結果として、従来の自動車メーカーと部品サプライヤという関係からは一線を画したものとなりつつある。

『EVがもたらす業界構造の変化の可能性』

自動車の技術革新に伴い、IT 化や電動化が進展することで、こうした異業種企業の存在感は、今後更に高まる可能性が高い。自動車メーカー各社も、自動車メーカー同士の競合・協力関係だけでなく、こうした異業種との関係も総合的に俯瞰して戦略を練ることが求められるであろう。

【政府・自治体との連携】

もう一つ留意しなければならないのが、政府・自治体との連携である。前述の通り、IT 化や電動化が進展する中で、インフラとの協調連携の重要性が高まることが予想されるからである。

今回の自動運転のプロジェクトにおいても、例え法律的に違法でなければ可能ということなのかもしれないが、地元警察の理解が得られなければ、公道実験は不可能だったはずである。

日本国内において、同様の実験を行うことを考えた時に、政府や自治体の支援は得られるだろうか。かつて、無許可で試験開発車両を公道走行実験したことで大きな問題となったことを思い出す方もいるだろう。国家として自動車産業の発展・育成を支援するという観点に立てば、こうした取り組みを行う企業が、安全かつ円滑に実験を行い、技術開発を進められる環境を積極的に整備していく必要があるはずである。

ITS という言葉が生まれて久しいが、ITS 分野の技術開発とその普及を次のステップに進めるためにも、路車間通信や車々間通信など、インフラ協調型のシステム連携が不可欠とも言われている。実際、既に技術的には可能になっている領域も少なくないはずである。政府・自治体と連携する形で、日本で先進的な技術が実用化に至ることを期待したい。

これは、電動化の領域でも同様のことが言える。EV やプラグインハイブリッド車(PHEV)の運用にあたり、充電インフラ環境が不可欠であり、政府・自治体もその設置や費用面での様々な支援策を打ち出している。こうしたインフラ環境の整備についても、やみくもに政府や自治体の所有地に設置を進めるのではなく、利用者の利便性を考慮した形で、業界関係各社との連携を進めながら、効果的な設置、普及を進めるべきであろう。

こうした IT 化や電動化によって実現する新たなクルマ社会が、今後の日本の自動車産業の一つの競争力になる可能性もある。クルマという製品単体で勝負するのではなく、インフラも含めたクルマ社会という仕組みでグローバル競争に挑んでいくという考え方である。そのためにも、今後政府・自治体の役割が大きくなっていくはずである。

【自動車業界に期待される役割】

クルマがより安全で環境に優しく便利なモビリティとして持続的に進化していくためには、IT 業界や電機業界などの異業種企業、そして政府・自治体を中心としたインフラ社会との連携が不可欠になることは間違いない。

もっとも、こうした事業構造の変化に着目した取り組みを、異業種企業や政府・自治体に任せるべきだ、というつもりはない。具体的な施策とそれによって実現可能になる成果を提案し、実行する役割は、現在自動車産業に携わる各社の責務だと考えている。こうした領域においては、個別企業ごとに取り組むよりも、業界横断的な体制を持って取り組むことで、異業種企業や政府・自治体との連携も取りやすくなるのではなかろうか。

そして、その中で、自動車メーカーやその他自動車業界のプレイヤーが果たすべき役割は、必ずしもこれまでと同じとは限らない。製造事業からサービス事業への転換も求められるかもしれないし、国内事業から海外事業への展開を求められるかもしれない。IT 化や電動化により、製品構造や参入プレイヤーが変化することで、事業構造の変化にも着目し、自らの戦略を立案・実行していくべきであろう。

世界の注目を集める技術が日本の自動車業界から生まれてくることを期待したい。

<本條 聡>

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