くるま解体新書第8弾『求められる部品メーカー像(1)』

弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルティング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るまで、さまざまな角度から提案していく。

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第 8 弾は、弊社副社長の秋山喬が、求められる部品メーカー像について 5 週に渡って紹介する。今回はその第1回にあたる。

第8弾『求められる部品メーカー像(1)』

(日刊工業新聞 2005年02月09日掲載記事)

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21 世紀の自動車産業は大変革期を迎えようとしている。日米欧といった先進市場が成熟に向かう一方で中国、ロシア、インドといった新興市場が成長し、2010年には全世界で 7500 万台を超える規模になると予想されている。自動車メーカー各社はグローバル供給体制の構築と同時に、環境、安全、情報化といった莫大な開発費用を要する最新技術への対応にも迫られている。

そういった状況の中、自動車部品メーカーには、これまで主に要求されてきたQCD (品質、コスト、納期) とは異なる要素も求められるようになっている。

今後は、変化を先取りした戦略的な施策を展開していくことが必要であり、そうすることが他社との差別化、収益性改善にも寄与するものと思われる。自動車メーカーサイドからどんな自動車部品メーカーが求められるのか。アンケートをもとに、自動車部品メーカーのあるべき姿や未来像を描いてみる。

自動車部品業界に関するアンケートは住商アビーム自動車総合研究所が実施した。自動車メーカー社員を対象に、自社発信のメールマガジン「住商アビーム Auto Business Insight」を通じ、103 人から回答を得た。部品メーカーに求められる役割が変化していく中で、実際どういった部品メーカーが評価されているのだろうか。我々は評価できる自動車部品メーカーの具体的な社名と評価の理由に関して調べてみた。

その結果、デンソーを評価していると回答した人が 55 %と圧倒的であった。またデンソーを評価する理由として 52 %が技術開発力を挙げ、高く評価している。

デンソーが高く評価される大きな要因は、自動車部品メーカーでありながら、自動車メーカーサイドに立った技術開発を進める点だ。「自動車メーカー視点の開発」といった評価理由のコメントが示すように、顧客である自動車メーカーの置かれた状況を理解し、競合他社との差別化に寄与するような部品を提案していることが評価につながっている。
自動車メーカーの先にある消費者や市場を意識した技術開発、製品開発(ニーズのくみ上げ、価値の提供)を自動車部品メーカーが進めることは自動車部品メーカーにとっても望ましい。

トヨタ自動車のみならず他メーカーが「系列を超えてでも調達したい」という意向を持つのは、デンソーの単なる部品メーカーではない姿勢を評価してのことだろう。この点に次なる世代の部品メーカー像が見えてくる。

次回はさらに深堀りし、自動車メーカーが部品メーカーのどういった能力を重視しているかについて論じてみたい。

<秋山 喬>