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コラム

中古車販売のチェーン展開の可能性

◆J.D.パワー、「日本中古車ユーザー購買実態・購入満足度調査」を初実施

<2006年11月20日号掲載記事>

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【調査結果の概要】

新車の領域では IQS (初期品質調査)等の指標でおなじみの J.D.パワー社が初実施となる 2006年日本中古車ユーザー購買実態・購入満足度(Used Vehicle Sales Satisfaction Index 略称 UVSSI)調査の結果を発表した。

UVSSI という略称名を見ても分かるとおり、今回の調査は新車領域で行われる SSI の中古車版ということことが出来る。ちなみに SSI とは 消費者が車両を販売店から購入したとき、販売店での購入処理作業、販売店員の態度、納車と販売後のフォロー、価格評価、及び、融資や保険のプロセスなどを消費者にアンケート調査し、統計的処理を施して、販売に対する顧客の満足度を示した指標をいう。

SSI と異なる点は新車販売が規格品ビジネスであるのに対し、中古車販売は一物一価ビジネスであるため、購入満足度の中に、一物一価の商品に対する満足度も含まれてくるということだろう。新車領域では商品に対する満足度は APEAL といった他の指標でカバーされている。

結果を見てみると、中古車ユーザーの車両購入に関する総合的な満足度に影響を与えるファクターは「契約・納車」 30 %、「セールス担当者」 27 %、「購入車両」 24 %、「店舗・展示」 19 %の 4 つで、購入時の満足度でユーザーが重視するのは購入車両よりも販売店対応だった。

また、満足度が業界平均を上回ったユーザーは、同じ販売店での再購入と推奨を「必ずする」と「たぶんする」と答えた人が合わせて 50 %超えるなど、車両購入時の販売店に対する満足度と将来同じ販売店で再購入する意向やその販売店を知人に推奨する意向の間に関連があることが確認できた、としている。

ちなみに、購入先タイプ別の平均スコアは、国産車メーカー正規販売店が 711ポイント、輸入車正規販売店が 698 ポイント、中古車専業店/その他販売店が657 ポイントであった。(ちなみに、メーカー系列では、1 位は 723 ポイントのホンダ系。2 位は日産系 (716 ポイント) で、トヨタ系 (714 ポイント)、マツダ系 (689 ポイント) と続く。)

【調査結果からの示唆】

今回の調査結果を総括すると、購入時の満足度でユーザーが重視するのは購入車両よりも主に販売店の対応であること、また、その満足度が次回購入時や知人への推奨といった形で、連鎖していく可能性があること、そして、国産、輸入車といったメーカー系正規販売店と中古車専業店との間にポイントの大きな開きがあるといったところだろう。

規格品ビジネスであり、メーカーによるコントロールが強く、商品面での差別化が難しい新車販売と比べ、一物一価ビジネスである中古車販売では仕入れ等で商品面での工夫、差別化が可能であり、その分顧客対応が新車販売に比べて軽視されがちである。

しかし、一方で、消費者側は中古車の購入にあたっては、「もしかすると品質不良車を掴まされてしまうのではないか」といった類の漠然とした不安や不満を抱えており、購入時の安心感をある意味で新車以上に求める。その傾向が今回の結果にも表れているといえるだろう。

消費者側の意識とすると、勿論、商品そのものに対して安心感、信頼性を得られればよいのだが、素人では品質評価ができないため、それを店舗、セールスマンといった事業者の対応に対する安心感、信頼性という形で代替しているのである。

また、今回の調査結果として、メーカー系販売店と中古車専業店との間で大きなポイントの開きがあるのも、消費者の側にメーカー系だから安心という深層心理があることと無関係とはいえないと思われる。

中古車専業店の立場からすると、消費者の目の前に存在するセールスマン、店舗といったもので安心感、信頼性を感じてもらうほかはないわけだが、現在のところ、特に初回訪問時などは消費者の懐疑的な視線から免れることは難しい。

そのような状況において、消費者に対し安心を証明する有効な手段としてはチェーン展開が想定される。(直営、FC 双方を含む。)自動車に限らず、飲食店、不動産屋等、街中に存在するチェーン店舗に対して、我々はある種の信頼感、安心感を持って入っていく。知らず知らずのうちに見慣れた看板、マークが安心を証明するものになっているのである。

【なぜ中古車買取はチェーン展開が進んだのか?】

中古車購入時において消費者が漠然と感じる不安や不満感を払拭する上で、チェーン展開による安心の証明は有効な手立てになると思われるものの、現状の中古車販売市場は年間売上高 100 億円超の大手事業者がわずか 10 社で、市場の多くは零細事業者から成り立っている。

一方で、中古車買取店に目を移すと、全国に 400 店超の店舗数を持つガリバー、ラビットをはじめとして大々的にチェーン展開を行う事業者が存在する。

地域性の強い商品である中古車を同様に扱っていて、消費者への安心の証明が求められる両者であるが、なぜ買取だけが大々的なチェーン展開が可能となり消費者に対する安心の証明に成功できているのだろうか。中古車買取ビジネスの特性を踏まえながら考えていきたいと思う。

まず、チェーン展開が可能になるためには、消費者からの支持の拡大(マーケティング面)とチェーンオペレーションの仕組み確立(サプライ面)という要件が満たされなければならない。

消費者からの支持拡大という点では消費者に新たな価値による納得感を与え、それが普遍的なものとして全国に広がっていく必要がある。そして、その納得感の広がりがいずれチェーン全体の安心感、信頼性へとつながっていく。

また、チェーンオペレーションの仕組み確立という点では、どの店舗で誰が担当したとしても均一のサービスが行えるような仕組みを構築しなければならない。

中古車買取の場合、消費者からの支持拡大という観点では、新車ディーラーや中古車専業店の下取り時に消費者が感じる不透明さ(新車ディーラーの場合は新車値引きと下取り価格が渾然一体となってしまい、中古車専業店では下取り価格の妥当性が疑問)に着目し、標準化され透明性の高い査定、値付けプロセスを消費者に提示し、支持を得た。

そして、チェーンオペレーションの仕組み確立という点では、買い取った車両を在庫にせずオークションにて即時時価で処分し、査定、値付けプロセスを本部に集中することにより、どの店舗でも標準化されたオペレーションを行うことができるようにしたことが挙げられる。前述した消費者への透明性、納得感の提供も、このチェーンオペレーションの仕組みによりもたらされている。

さて、ではどうしてこのようなチェーン展開が可能になったかということだが、買い取った車両を即時時価でオークションで処分するのを徹底したこと、つまり、マッチングビジネスから脱して、一方通行の流れとしたこと、が根本にはあるように思われる。

一物一価で、地域性の高い中古車を狭い地域の中でマッチングさせようとすると(買い手を探そうとすると)、困難な上、それぞれの地域で独自のノウハウも必要になってきたりと標準化されたチェーンオペレーションにはつながりにくい。オークションを確実な売却先とすることで、一方通行の流れができ、オペレーションの標準化がしやすくなったのである。

ここで、チェーン展開に関し、中古車買取のたどった道筋を整理すると、マッチングビジネスからの脱却→オペレーションの標準化→透明性、納得感の訴求→顧客の支持拡大→チェーン展開→安心感、信頼性の醸成、ということになるだろう。

【中古車販売におけるチェーン展開の可能性】

現状の中古車販売業界においては、既存の中古車専業店同士がネットワーク化を進めているものの、利害関係もあって、大々的なチェーン展開にまでは発展しづらいだろう。中古車買取の代表的なチェーン事業者であるガリバーが FC加盟店の条件を中古車販売事業の未経験者とし、チェーン展開を一気に推し進めたのは有名な話である。

そして、中古車販売のチェーン展開を可能にするのは上記のような戦術の問題もあるが、そもそも事業モデルもこれまでとは異なるものを持ち込む必要があるだろう。そしてその際のキーワードは買取がチェーン展開したときと同様に、マッチングビジネスからの脱却ということになると思われる。中古車販売の場合でいうと、マッチングビジネスである在庫販売から、消費者の要望に基づきオークションで落札する完全プル型の販売形態への移行を指す。

在庫販売を行っている以上、仕入れた商品を消費者とマッチングさせる必要が生じてきて、標準化されたチェーンオペレーションには発展しづらい。この場合のチェーンオペレーションのイメージとしては、例えば、消費者の要望ヒアリングや標準販売価格の提示、納車といったプロセスを各店舗に残しつつ、本部にて各種マニュアルの作成、オークションにおける仕入れ、商品の割り当て、消費者への広告宣伝といったプロセスを担当するといったことが考えられる。

また、消費者の支持拡大という観点では、標準化されたオペレーションに基づく透明性、納得感の訴求ということになるが、現在のような目の前に既にある在庫を販売する形よりも、消費者が望む商品をオークションで調達するという形のほうが、消費者が感じる透明性、納得感も向上するのではないだろうか。現在でも一部、そのような形でやっている事業者も存在すると思うが、消費者に透明性、納得感を訴求する上で重要なのは徹底することである。

一方で、透明性、納得感という観点では、中古車販売は中古車買取と異なり、保証、アフターサービスという問題がついてまわることになる。買取の場合、消費者は売却したらもう手切れとなり納得感もその瞬間に感じて終わりであるが、販売の場合は消費者がその後も商品を使用し続けることになるため、納得感も徐々に形成されていく。そう考えると販売プロセスだけでなく、保証、アフターサービス面でも透明性、納得感を与える仕組みが必要になるだろう。

また、チェーン展開においては、本部が消費者の認知度を高め、来店を促す広告宣伝の役割を果たさなければならないことを前述したが、現在の自動車市場は新車でさえ消費者に移動の足と見なされてしまう状態であり、中古車販売も伸び悩んでいる。そんな中でも、中古車を自ら積極的に探そうとする層は存在し、新車では高くて手が届かない高級車を中古車で購入しようとする層などが該当する。まずはそういった層をターゲットにして透明性、納得感を訴求するのも一案であろう。

いずれにしても、現在のように中古車の出口である小売が伸びず、オークション間でのみ中古車が回遊する状態は全ての中古車事業者にとって好ましくないといえるだろう。そして、そのような状態を打破するにはこれまでとは異なる手法を持ち込み、消費者に安心感、信頼性を感じてもらうことも有効と考える。

<秋山 喬>

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