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コラム

イノベーションは「間」に生まれる

◆新型車の『短命化』、2006年の車名別ランキング(軽を除く)でも際立つ

<2007年01月14日号掲載記事>

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【2006年車名別新車販売ランキングより】

日本自動車販売協会連合会が発表した 2006年の車名別新車販売ランキング(軽自動車を除く)のトップ 3 は、カローラ、ヴィッツ、フィットで前年と変化がなかったが、3車種とも前年割れとなり国内市場の落ち込みを反映した。

一方、軽自動車の年間販売は、スズキの「ワゴン R」がダイハツの「ムーヴ」とともにカローラの台数を大きく上回り、軽人気を改めて印象づけた。

また、日本自動車輸入組合が発表した輸入車の 2006年車名別販売台数では、メルセデス・ベンツと BMW の販売台数が好調であり、軽と輸入高級車の二極化傾向が鮮明となっている。

そして、ランキングを見ると新型車の「短命化」も顕著になってきているようである。
2005年 2月と 5月にそれぞれフルモデルチェンジしたヴィッツとステップワゴンが、早くも 2 ケタのマイナスとなったほか、2004年の新モデルや新型車で、プラスとなったのは、スズキのスイフトだけで、2003年のモデルチェンジ後も、販売を伸ばしているのは、プリウスだけである。

【新型車の短命化と消費者の代替サイクル】

新型車の短命化の問題は、消費者の代替サイクルと密接に関連している。現在、自動車同様に一般消費者が数年おきに定期的に代替する商品として認識しているものとしては携帯電話、パソコンといったところが挙げられるだろう。携帯電話はバッテリーが持たなくなるし、パソコンは数年経つと性能面で物足りなくなる、といったところが代替の理由になる。これらはいずれも国内では成熟している市場であり、基本的には代替中心のマーケットである。

共通の認識をされているこれらの商品は消費者の代替サイクル、購買行動も類似している。前回の購入から数年たって代替の時期が来ると、その時期に販売されている新商品の購入を真剣に検討し始める。代替サイクルの途中では、新商品に対するアンテナの感度は格段に鈍るし、広告等で知る機会があってもちょっといいなと思ったくらいでは自身の代替サイクルを崩さない。そうなると新商品を開発した企業にとって、実質的な購買候補は数年前に購入してちょうどそのタイミングで代替を考えている層に限定されてしまう。

そして、そういった代替サイクルを堅持して、消費者が行動しているとすると、代替のタイミングでどうせなら、新しいものの中から選択しようという発想になる。これは携帯、パソコンも共通だが、むしろ自動車より顕著で、実質、販売店には最新の機種しか並んでいなかったりもするから、必然的にそうなる。

自動車メーカーとしては、かわるがわる順番にやってくる代替のタイミングを迎えた消費者を全て取り逃がすまいと新車開発期間の短縮につとめ、常に新商品がディーラーに並んでいるように、次々と商品を市場に投入する。

消費者は基本的に新しいものの中から選び、自動車メーカーからはすごい頻度で新車が市場に投入されるわけだから、少し前のモデルは古臭く見えてしまい、当然、新型車の寿命は短命化する。

新型車投入効果がなくなってきたことについて、消費者側の意識変化の問題として語られることが多いが、それだけでなく、メーカー施策との相乗効果により傾向が強まってきたといえるだろう。

このように考えると、短命化の問題は消費者が現在の代替サイクルを堅持しようと考える限り続く。そして、そのサイクルはイノベーティブな商品でないと崩せないだろう。つまり、消費者にサイクルを崩してでも買いたいと思わせる、もしくは革新性ゆえに最新でなくても古臭く見えない商品である。

好例がテレビである。ブラウン管テレビの時代が続いていたとすれば、それほど故障するものでもないし、消費者の代替サイクルも長かったはずだが薄型テレビの登場によりサイクルを崩してまで買いたいという人が増え、現在の好調な販売につながっている。プリウスの販売が 2003年以降も伸びているというのも商品の持つ革新性ゆえだろう。

改善型の商品では消費者はサイクルを崩さない。自動車の場合、壊れたら買い換えるといってもそれほど故障しないし、むしろちょっと待てばもっといい商品が出るかもしれないという思考とも相まって、むしろ代替サイクルは長くなる傾向にある。

【イノベーションは「間」に生まれる】

しかし、そのイノベーティブな商品を生み出すというのが大変である。ここでは一つの切り口を提供したい。

自動車に限らず、今後、国内においては軽と輸入高級車の二極化傾向に代表されるように、上下の関係にあるものは、格差社会の広がりとも相まって、上下に二分化傾向が強まり、長期的に見れば中間帯の商品の需要が減少してくるだろう。

しかし、横の関係にあるものについては、消費者のニーズの分散とも相まって、その中間的な需要が増えてくるだろう。そして、その「間」にこそ、イノベーションの芽が潜んでいるのである。

自動車業界の例を挙げると、「異なる種別の車を混ぜ合わせた」という広義の意味でのクロスオーバー車などはその典型であろう。1990年代のビッグ 3 の好調を支えたセグメントに SUV があるが、これも乗用車の走行性能とピックアップトラックの使い勝手とをいいとこ取りした、いわば両者の中間に位置づけられる商品である。

また、そのようにして生まれた SUV と高級車の更に中間帯的な商品として、レクサス RX やインフィニティ FX 等、狭義の意味でのクロスオーバー SUV (CUV)が存在する。

また、自動車から少し視野を広げて、移動手段ということで考えた場合でも中間帯に着目して、イノベーティブな商品を生み出した事例が見受けられる。

少し前の話になるが、自転車のお気楽さとバイクの駆動力の中間帯に位置する電動自転車もそれに該当する。また、JR 北海道にて開発が進められている DMV (Dual Mode Vehicle)はバスと電車の中間に位置する移動手段であるといえる。これらは実現技術の面からすると正確に両者の中間ではないのかもしれないが、少なくとも消費者が感じる価値、便益から見ると中間に位置づけられる商品、サービスである。

また 2006年の車名別新車販売ランキングに関する記事によると、トヨタは国内市場の低迷を受けて、今年から国内市場を細かいセグメントに分けて、徹底的にマーケティングする特別チームを設置。「市場創造型の商品とは何か、5年10年先を見据えて開発していく」(渡辺捷昭社長)という。

ここで市場創造型の商品といっているのは既存の商品の延長線上にあるものではなくて、やはり何らかの革新性を持つイノベーティブな商品のことを指しているのだろう。そして、市場創造ということを考えた場合には、「間」を探るということも効果的なアプローチの一つになるのではないかと思われる。

例えば、電車、地下鉄といった公共輸送機関が発達した都心部においては駐車場を確保する必要がある等の経済性の観点から、自動車をあえて所有しない層が存在する。個人で保有する自動車と皆が利用する公共輸送機関の中間に位置するカーシェアリング等の概念により、そういった層に対し、自動車使用時の便利さと非使用時における面倒の排除の両立を訴求できるかもしれない。

【「間」への取り組み】

これまで、セグメント、及び商品の中間を探ることを中心に述べてきたが、会社組織も「間」に注目して改編されることがある。現代の会社組織は効率化を追及するため、機能別、事業別に細分化されてきたが、専門分野が狭くなればなるほど、イノベーションは生まれづらくなる傾向にある。縦割りの弊害を排除し、横の連携を強化し、イノベーションを生み出しやすくするというのが組織改編の狙いとなる。

業界外の事例を見ると、日経 BP 社が発表した 2006年ヒット商品ランキング上位 50 品目の中で、最も多い品目数が選出された松下電器の場合、ヒートポンプ式ななめドラム洗濯乾燥機は洗濯機事業とエアコン事業との協業によって生まれているし、フィルターお掃除ロボットエアコンはエアコン事業と掃除機事業との協業によって生まれている。そして、そこには縦割り組織の壁を壊して商品開発を進めようという組織的なバックアップが存在した。

米国の未来学者アルビン・トフラーはその著書「富の未来」の中で、「画期的なイノベーションは専門分野の壁を越えた臨時チームによることが多い。」「想像力や創造性が刺激されるのは、それまで無関係だった考えや概念、無関係だった分野のデータや情報、知識が新鮮な形で組み合わされるときである。」と述べている。

そして、手前味噌で恐縮だが、弊社も商社が提供するソリューションとコンサルティンブ会社が提供するソリューションの「間」に、イノベーションの芽があると判断したことが設立の契機ともなっているし、異業種企業の自動車業界への参入を支援するサービスを展開しているのも、自動車業界と異業種の「間」にイノベーションの芽があると考えているからなのである。

<秋山 喬>

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