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コラム

電機業界の再編と自動車業界への影響

◆シャープ、パイオニアの筆頭株主に。包括的な資本・業務提携を発表

<2007年09月20日号掲載記事>

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【シャープとパイオニアの提携】

シャープとパイオニアは 20日、業務資本提携で合意したと発表した。シャープが、パイオニアに 14.69 %を出資し筆頭株主となる一方、パイオニアもシャープの株式の 0.9 %を取得し株式を持ち合う。そのうえで、製品の共同開発や相互供給などの業務提携を拡大し互いに競争力を強化する。

資本提携では、パイオニアがシャープを引受先に、3000 万株を発行する総額414 億円の第三者割当増資を 12月 20日に実施。同時に、シャープは保有する自己株式 1000 万株をパイオニアに 197 億 5000 万円で売却する。

業務提携ではシャープが液晶パネルをパイオニアに供給しパイオニアが液晶テレビ市場に参入するなど、両社が得意とする映像分野で協力するほか、次世代 DVD分野、ネットワーク関連分野、そしてカーエレクトロニクス分野で共同開発に取り組むとしている。

そして、カーエレクトロニクス分野では、シャープが持つ中小型ディスプレイ技術や通信技術、センサ技術とパイオニアが持つカーナビゲーション技術や車載ノウハウを組み合わせる事により、新たな事業創出を目指す。

シャープは、液晶テレビや携帯電話の好調で過去最高益を更新する業績拡大が続いている一方で、パイオニアはプラズマテレビの価格下落などで 2007年 3月期まで 3 期連続の最終赤字に低迷しており、シャープとの資本提携で信用力を補完する。

【合従連衡が続く電機業界】

電機業界では、開発投資負担の増加や、厳しい価格競争が年々進展しており、ケンウッドと日本ビクターの経営統合や、ソニーが東芝への先端半導体設備の売却・製造委託を検討するなど、今回のケース以外でも経営資源の効率化や相互補完を狙った合従連衡の動きが活発化している。

今回のケースで主導権を握るシャープであっても「グローバル競争が激しく、技術の進化が早い。1年先どころか半年、3 カ月先も予想がつかない。必要な技術を自社だけでまかなおうとすると、時間も費用もかかって商機を逃してしまう。」(片山社長)という状況である。

開発費負担の増加が業界の合従連衡を引き起こすという構図は自動車業界も同じであるが、電機業界の場合は価格競争の激化もあって自動車業界以上に業界再編の機運が高まっている。また、自動車業界と比較した場合の相違点が合従連衡を引き起こす要因ともなっている。

まずはデジタル化の進展が水平分業を可能としたことで、組立メーカーの参入障壁が下がり、韓国、台湾といった人件費の安い新興国メーカーの参入が増え、そのことが市場全体の製品価格の下落スピードを加速させメーカーの利益を圧迫しているという点である。
次に消費者との接点となる販売チャネルを大手量販店が担うようになったことに加え、消費者自体もインターネットサイトでの価格比較等の購買行動を取るようになったことで、メーカー側が小売価格をコントロールできなくなっているという点である。

そして、総合電機というネーミングが表しているように単一の企業の中で必ずしもコスト、技術の共通化ができているとは思えないテレビ、パソコン、白物家電などの多様な製品群を抱えており、開発費が広範囲に分散されてしまっているという点である。

このような構造的な要因により日本の電機メーカーは近年、海外メーカーに比べて低い成長性と利益率に甘んじてきたと言われている。しかし、このような状況への反省を踏まえて電機業界の各社は核となる技術、製品の絞込みとブラックボックス化、つまり選択と集中を開始しており、その過程の中で様々な合従連衡が起こってきているというのが現状である。

そのため、合従連衡を画策する際の主眼は、自社の製品ポートフォリオのどこを内部で強化し、どこを合従連衡により補完し、どこを縮小するのかという色分けをしたうえで、最終的にどのようなポートフォリオを目指すのかという点に置かれることになる。

【ポートフォリオの中での車載事業の位置付け】

しかしながら、これまで総合を売りにしてきた電機メーカーが製品ポートフォリオの選択と集中を進めるにあたっては、選択と集中をすることのリスクをどのようにヘッジし、コントロールしていくかという点が重要な課題になってくる。

そのような状況においてはデジタル家電や半導体といった分野に比べて、市場が安定している車載分野は花形とはならないもののポートフォリオを構成する要素として重要性を増し、実際、日立製作所、東芝、三菱電機といった多くの電機メーカーが強化を打ち出している。

実際、半年、3 ヶ月先も予測がつかないようなデジタル家電の世界と比べると、一旦、納入が決まれば、当該モデルの生産が続く 4、5年の間は少なくともある一定量の納入が保証される車載の世界では収益の安定性が大きく異なるのは間違いない。

また、同じ半導体でも車載用は市場全体が 2005年の 160 億ドル強から 2009年には 220 億ドル以上に成長し、この間の年平均成長率は 8 %になると予測されており(出典:米調査会社「Strategy Analytics 社」)、民生用に比べて市場や価格の安定性に大きな差があるだろう。

だがもちろん車載分野もメリットばかりではない。

B to B のビジネスになるため、当然、取引の主導権は自動車業界側にあり、電機業界としては仕事の進め方や取引に関する条件などは自動車業界の常識、商慣習を受け入れなければならない。

今回のケースではパイオニアが持つ車載ノウハウをシャープに提供することが提携のメリットの一つとして挙げられているが、自動車に搭載するうえで自動車業界側が重視するポイントや特性というのは、取引が少ない状態ではなかなか会得しづらいというのも確かである。

ご存知の通りシャープは液晶をコア技術として売りにしており、今後、インパネ部のディスプレイへの採用等を提案していくことになるだろうが、その際にも民生用とは異なる車載ならではの要件が出てくる。そういった場面では、これまでカーナビを中心に長く自動車業界と付き合ってきたパイオニアの車載ノウハウが活きてくることだろう。

【自動車業界への影響】

自動車業界側としては今後、電子化が更に進展し電装品分野が製品の競争力をも左右する部品分野になってくることを踏まえ、電機業界の合従連衡の動きも注視しながら、上手なサプライヤマネジメントを行っていく必要があるだろう。

電機業界との関係づくりという観点において、相手方の電機業界の立場から考えてみるといくつかの示唆が得られる。

まずは車載分野をポートフォリオの一つとして重視する電機メーカーは増えるが、そういった企業は従来の自動車部品メーカーと異なり自動車業界をあくまでポートフォリオの一つ、one of themとして認識しているという点である。

車載分野は採用が決まるまでに時間がかかるといったことはよく耳にする話であるが、そういった企業は車載分野にメリットが感じられないようであれば他の事業分野へリソースを振り向ける可能性もあるということである。自動車業界側では自動車業界の商慣習を上手く伝達するとともに車載事業のメリットを感じさせていく必要があるだろう。

また、今後、電機業界の合従連衡が進む中で、企業間での車載事業の集約、統合といった話も可能性がないわけではない。

自動車業界の立場からするとこのような車載事業の集約により新技術、新製品提案が増えるかもしれないが、逆に業界構造の観点から相手の交渉力が強まるかもしれないということを念頭に入れておくことも必要だろう。

いずれにせよ、電機業界が水平分業の進展によって競争力を失っていったことも踏まえると、今後、部品メーカーに電機メーカーを加えたサプライヤ構造をどのように保ち、業界全体として競争力を維持していくかという点は、製造業である自動車メーカーにとって重要な課題であり続けるものと思われる。

<秋山 喬>

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