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コラム

ソフトウェアプラットフォーム導入に伴う業界構造の変化

◆NEC、欧州業界標準の車載ソフト開発を支援するコンサルティング事業に参入

                    <2008年07月24日号掲載記事>

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【Automotive SPICEに関わるサービス】

 NEC は、自動車業界において組込みソフトウェア開発の標準プロセスとして導入が進んでいる「Automotive SPICE」の導入から定着までをトータルに支援する「Automotive SPICE 適用コンサルティングサービス」の提供を開始した。

 同サービスは、Automotive SPICE の監査実施に不可欠な ISO/IEC15504 公式アセッサーを有するビジネスキューブ・アンド・パートナーズと協業することで、コンサルティング、および教育サービスを共同で提供するものである。

 Automotive SPICE を用いて車載ソフトの開発プロセスの現状を分析し、顧客企業での改善活動を支援するとともに、ビジネスキューブ・アンド・パートナーズのアセッサーも加えた教育や監査対応トレーニングを提供することで、顧客企業の効率的な Automotive SPICE の導入を実現する。

 同社はこれまで、携帯電話や自動車などの組込みソフトウェア開発で培ったノウハウをもとに今回のサービスを立ち上げたという。
【組込みソフトウェア開発プロセス標準化の動き】

 自動車業界では、従来からのエンジン制御、シャシー制御に加え、環境技術、安全・快適制御、情報通信など、多くの分野で電子化が進んでおり、組込みソフトウェアがこれら電子制御の要となっている。

 既に一般の車両でもカーナビ分を除いてソフトウェアは約 400 万行とされており、レクサス LS460 などの高級車に至っては、700 万行という航空機並みの量となっている。このようなソフトウェアにバグが起これば製品自体の品質問題に直結することになり、自動車メーカー各社はソフトウェアの品質確保を重要な課題として認識している。

 今回のニュースにもなっている Automotive SPICE は、VW、ダイムラー、BMW等、欧州の主要自動車メーカーが参画する団体である HIS によって、2005年 8月に策定された。複雑さを増していく自動車の組込みソフトウェアの品質を保証し、予算内で、開発プロジェクトを期限内に完了させるためのガイドラインであり、ISO/IEC 15504 の指導を元に ISO/IEC 12207 を修正したものである。

 組込みソフトウェアを欧州の自動車メーカーに納入している企業には、Automotive SPICE をガイドラインとしたソフトウェア開発プロセスの改善活動が推奨されており、2007年からは正式に開発プロセスのアセスメントに使用されている。

 しかしながら、Automotive SPICE は ISO から派生したということからもわかるとおり、あくまでも品質について基本的な要件を規定しているに過ぎず、日系自動車メーカーは更なるソフトウェア開発品質の向上に向けた取り組みを開始している。

 例えば、トヨタは、Automotive SPICE も参考にしつつ、そこにトヨタ生産方式の要素を盛り込んだ独自の「トヨタソフトウェア開発方式」(仮称)の策定に乗り出している。部品メーカーを含めてソフト開発の手法を標準化することで基本的な開発方式を修得した技術者であれば「国籍を問わず、どこでも、誰でも、高品質な車載ソフトを開発できる」ことを目指している。
【ソフトウェアプラットフォーム導入の影響】

 組込みソフトウェアに関し、品質を工程でつくりこむ、また自動車メーカーが調達先のプロセスをモニターするという考え方はこれまでの自動車業界における品質管理手法とも共通する。このように、既存の機械系部品とソフトウェアという製品特性の違いこそあれど、これまでのものづくりの中で培った思想や考え方が適用できる部分も多いと思われる。
 そのような観点で考えると、既存部品では当たり前となっている共通化、標準化という発想も組込みソフトウェアに適用されるべきものの一つであろう。

 現在、標準がない状態で次々と新機能が追加されるため、組込みソフトウェアの開発量は膨大なものになっているが、そもそも、ソフトウェアは開発=生産という特性を持つため、共通化、標準化した際のコスト削減効果は既存部品以上になるものと推測される。

 そして、共通化、標準化を推進するために重要となるのがソフトウェアのアーキテクチャであり、特に、現在各自動車メーカーが注力しているソフトウェアプラットフォーム(基盤ソフトウェア)の導入が大きな影響を及ぼすものと思われる。

 ソフトウェアプラットフォームは ECU の基盤ソフトウェアを標準化して各社で共有しようという考え方に沿ったもので、欧州の標準化団体「AUTOSAR」が標準ソフトを策定中であり、日本でもトヨタ、日産、ホンダなどによる標準化団体「JASPAR」が AUTOSAR の仕様の検討作業を進めている。

 従来の ECU はハードウェア、ミドルウェア、アプリケーションソフトという構造になっているが、ソフトウェアプラットフォームはそのうちのミドルウェア部分を標準化しようというものであり、これにより、ハードウェアの違いに左右されずアプリケーションソフトをECU上で動作させることが可能になる。

 そして、それによりもらたらされる変化が、ECU のアンパッケージ化であり、アンパッケージ化に伴う ECU 統合、アプリケーションソフトの共通化の促進である。

 順を追って見ていくと、基本的に従来は一つの部品メーカーが ECU のハードウェア、ミドルウェア、アプリケーションソフトのすべてを独自で開発していたが、プラットフォーム導入により、ハードウェアは A 社、アプリケーションソフトは B 社が開発というようにまず ECU をアンパッケージ化して考えることが可能になる。

 また、アプリケーションソフトがハードウェアの違いに左右されなくなるため、これまで異なる部品メーカーが開発していた複数の ECU を一つの ECU に統合することも容易になる。

 実際、各自動車メーカーは ECU を「安全」、「パワートレイン」、「ボディ」、「マルチメディア」の 4 群に分けて統合を検討しており、レクサスLS460 では安全系のソフトウェアプラットフォームを導入し、複数の統合 ECUを誕生させている。

 更に、繰り返しになるが、アプリケーションソフトがハードウェアの違いを考慮する必要がなくなるため、アプリケーションソフトの再利用、つまり共通化も容易になる。

 このようにソフトウェアプラットフォームの導入により、アプリケーションソフトの共通化をはじめとしてソフトウェア開発が大きく効率化されるものと期待されているのである。

<秋山 喬>

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