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コラム

本業の補完として自動車金融を効果的に活用する

◆トヨタファイナンス、カード会員は680万人。トヨタ系販売店経由が420万人

                    <2008年10月09日号掲載記事>

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【ビッグ3の金融子会社の行方】

 自動車業界では相変わらず世界的な金融危機の影響が吹き荒れている。

 米政府による 250 億ドルもの低利融資が決定したものの、ビッグ 3 の格付けは上昇せず、その後も GM とクライスラーの合併や、フォードによる子会社株式の売却など更なる業界再編の噂が飛び交っている。

 弊社では、以前、本メールマガジン上で、今後、ビッグスリーの資本増強策として、既に発表されている政府による低利融資等の支援以外で、最も効果があると考えられるものは何かというアンケートを実施した。

 その結果、最も多かった回答が「オートリース事業やファイナンス事業等の本業以外の事業の売却を進める」というもので、全回答の 38 %に上り、続いて、「本体に対して他自動車メーカー等、第三者からの出資を受け入れる。」が、22 %、そして、「米国以外の地域での事業の売却を進める」「傘下に持つメーカー、ブランドの売却を進める」という回答が 17 %で同率であった。

 ビッグ 3 はまず、何よりも本業に回帰すべしという意見が最も多かったわけだが、実際、既に GM は 2006年 12月に金融子会社である GMAC の株式のうち51 %を、サーベラス FIM インベスターズ率いる投資グループに売却し、3年間にわたり総額 140 億ドルの現金を受け取ることになっている。

 また、フォードについては金融子会社であるフォードモータークレジットカンパニー自体の株式はまだ売却していないものの、日本法人としてマツダ含むフォードグループへの各種金融商品の提供を行っていたプライマス・ファイナンシャル・サービスの株式の大部分を三井住友銀行、マツダ、セントラルファイナンスへ売却することを 2008年 3月に発表している。
【自動車金融の果たしてきた役割】

 自動車メーカーにとって本業はあくまで、自動車製造であり、いつの時代でも市場のニーズにマッチした商品、現在であれば環境、安全性能の高い商品を提供していくことが本分であることは間違いない。

 金融子会社も親会社である自動車メーカーの安定した業績あってこそ、安く資金を調達できるわけであるし、そもそも自社の自動車という商品に対するニーズがなければ、自動車金融に対するニーズも存在しない。

 しかしながら、これまで自動車の普及拡大期において自動車メーカーが自ら手がける自動車金融が果たしてきた役割も無視することはできない。

 GMAC は 1919年に設立され、現金取引が主体であった 1920年代の米国の自動車販売において、当時は銀行も無関心であった自動車購買者のための、自動車販売融資を開始した。これにより、需要の前倒しが起こっただけでなく、購買力自体も高まり、一般消費者に対する自動車の普及に大きく貢献した。

 また、1990年代~ 2000年代にかけて米国では社会全体として貯蓄率が低下したが、それに伴って、日々の支払い負担が軽い個人リースが普及し、自動車需要を下支えした。

 米国と比べると日本は自動車メーカーが自社系列の金融子会社を持つのが遅れ、長らく、自動車金融の主役は信販会社であったが、近年になって、主役はメーカー系金融会社に移行しつつある。

 例えば、本ニュースで取り上げているトヨタファイナンスの売上高は 2001年には約 440 億円だったが、2008年には約 1600 億円まで拡大している。

 一方で、単に量的な拡大だけでなく、市場の成熟期を迎える国内では自動車の購入方法や利用形態といったことに関し消費者にこれまでとは異なる新たな選択肢を提示することが求められており、その部分でも自動車金融に期待される役割は大きい。
【国内における自動車金融への期待】

 本ニュースによるとトヨタファイナンスが 7年前に開始したクレジットカード事業(TS CUBIC CARD) の会員が 680 万人を超え、そのうち 420 万人が系列のトヨタ販売店経由のものであるという。

 また、すべての会員が一年間でショッピングする金額は、約一兆五千億円であり、ショッピングによって貯まったポイントを販売促進の原資として使ってもらうというビジネスモデルが臨界点を超え軌道に乗り始めているという。

 この事例から今後の自動車金融を考える上で 2 点ほど示唆が得られる。

 まずは言わずもがなではあるが、系列ディーラーという顧客との確固たるタッチポイントを保有することによる強みである。

 今後、日本も少子高齢化に伴い、貯蓄率が低下していくことが予想されており、日々の支払い負担の軽い残価設定型ローンや個人リースへのニーズが高まってくることが見込まれているが、そういった新たな金融商品の普及を考えた場合にも、顧客とのタッチポイントがあることは大きな強みである。

 異業種の事例でいうと非接触 IC カードにおいて JR 東日本が発行する SUICAが他を引き離して普及したのも毎日の通勤という顧客とのタッチポイントがあったからに他ならない。

 また、もう一点は顧客がショッピングで貯めたポイントをディーラーで使用することができる仕組み、つまり顧客にとって自動車以外の財布から自動車用の資金を捻出する仕組みを構築したということが注目される。

 実際、TS CUBIC CARD で貯めたポイントはトヨタ販売店・レクサス販売店・ダイハツ販売会社・日野販売会社・ジェームスのお店などで、すべてのサービスや商品購入時に使用できる。

 また、「使ってバックプラン」を選択すると、毎月の割賦支払金額にもポイントを利用し、月々の支払い負担を軽くすることが可能になる。

 国内においては、市場の成熟化に伴い、消費者にとって自動車は特別な存在という意識は薄れつつあり、他の部分での支出が増えれば、自動車に関わる支出を減らそうという動きになる。その意味で、事業者としては消費者が自動車にお金を使いやすいような仕組み、環境を整備することが必要である。

 タッチポイントを利用して金融商品を普及させ、その金融商品でもって自動車用の資金を他から捻出してくる、という仕組みはまさに自動車販売を側面からサポートするものといえるだろう。
【自動車金融の効果的な活用】

 このように自動車金融はあくまでも、本分である自動車の製造、販売を補完するために存在するものであるが、効果的に活用すれば消費者に対し、新たな選択肢を提示することができる。

 かつて、ビッグ 3 は自動車本体をプラットフォームとして、自動車金融で稼ぐというビジネスモデルに傾斜していったが、本分である自動車の製造、販売の部分が消費者のニーズから乖離してしまいビジネスモデル自体が瓦解した。

 日系自動車メーカーはビッグ 3 を他山の石として、自動車金融を本業を補完するものと理解しつつも効果的に活用していくことが必要であろう。

<秋山 喬>

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