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コラム

環境変化が急速に進む時代に求められる俊敏な経営

◆米 GM、連邦破産法 11 条適用を申請することを前提にした新提案を提示

           <自動車ニュース&コラム 2009年 5月 28-29日号>

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【大きな節目を迎える自動車産業】

 この原稿を執筆している時点では確定こそしていないものの、どうやら先日のクライスラー破綻に続き、GM が連邦破産法 11 条、いわゆるチャプター 11を申請する見込みである。

 元々 GM は無担保債務削減交渉の過程で、債権者に新会社の 10% の株式を割り当てる方向で交渉を行っていたが、政府、及び UAW に対して割り当てる株式数に比べて不平等なものであったため、多くの債権者の同意を得られず交渉は26日に決裂していた。

 その後、GM は破綻回避を事実上、断念し、28日に債権者に対し株式の 10% に加え 15% の新株引受権を割り当てるという修正案を提示して、過半数以上の同意が得られた見込みである。

 また、29日には UAW と医療保険債務削減で合意したのに加え、30日には、子会社の独オペルの資産を、カナダ自動車部品大手マグナ・インターナショナルに売却することも決定した。独政府もオペルに 15 億ユーロ (約 2,000 億円)のつなぎ融資を実行するという。

 これら各種の調整はクライスラーのときと同様、プレパッケージ型ディールと言われるもので、事前調整を行ったうえで、チャプター 11 を申請し、法手続きを円滑に進め、早期の再建を目指すものである。

 一連の法手続きにより新生 GM は株式の 60% を米国政府が、12% をカナダ政府が、17.5% を UAW の退職者向け医療保険基金が、10% を債権者が保有することになり、実質的に国有化されることになる。

 100年近くもの間、業界をリードしてきた GM の破綻により世界の自動車業界は大きな節目を迎えることになる。

【自動車産業に起こる急激な変化】

 GM の破綻という大きな節目を迎えるとともに自動車業界には急激な変化が起こりつつある。変化の方向性こそ過去数年にわたり言われてきたものであるが、とにかくその速度が速まっているというべきであろう。

 まずは市場面である。

 金融危機による影響が出る前の 2007年の市場規模上位 3 ヶ国を見てみると、米国が 1,615 万 5,579台、中国が 698 万 662台、日本が 508 万 7,723台である。それが 2008年には米国が 1,320 万 9,158台、中国が 755 万 5,457台、日本が 482 万 3,589台と米国の市場規模が 1年で一気に縮小した。

 更に中国は、2009年第 1 四半期の販売台数が前年同期比 3.88% 増の 267 万 8,800台となり世界一に浮上した。中国の新車販売台数は 09年全体では 1,000 万台を突破し、年間でも米国を抜き、世界一になるとの見方が強まっている。

 金融危機以前から将来の主戦場は新興国になると目されており、中国はその代表格と見られていたわけだがその動きが急激に加速しつつある。

 また、製品面においても急激な変化が起きつつある。

 金融危機による一時的な原油高、そして大型車を中心としたビッグ 3 の凋落は、消費者にも業界にも環境対応の必要性というものを改めて印象付け、環境車、小型車という不可避のトレンドが急激に加速し始めた。

 実際、自動車メーカー各社は経営が悪化している状況下においても、環境技術への開発投資は維持することを表明しており、環境対応車の市場投入計画等を社外に対して積極的に発信している。

 実際、国内市場では政策の追い風もあって、ハイブリッド車の普及が急激に進みつつある。好調を維持しているインサイトに加えて、後追いとなった格好のプリウスも既に受注が 10 万台を超え、現在の受注分の納車は秋以降になる見込みである。

 また、今週のニュースを見ても、ホンダがハイブリッド車のラインナップ計画を見直し、新モデル投入時期を予定より早めていくというニュースが報じられている。

 筆者同様、業界に関係されている方の多くが環境変化のスピードに驚かれていることだろう。

【企業内の各ファンクションに求められること】

 そして、このような業界環境の急速な変化は、当然、企業内の各ファンクションにも影響を及ぼすことになる。取り組まなければならないテーマ自体が全く新しくなるわけではないが、その取り組み、及び問題解決にこれまで以上のスピードが求められるようになるということである。

 まず、研究開発部門について見てみよう。

 前述したように急速な環境の変化により、ハイブリッド車が普及期を迎えつつあるわけだが、普及期の成功要因としては、商品ラインアップの幅広さが重要になるため、これまで以上に車両開発のスピードをあげて、より多くの車種を市場に投入していくことが求められる。

 また、新興国が主力市場になるにしたがって、コスト構造を大幅に見直した低価格車の開発も急務になってくる。

 加えて、長期的視点に立った継続的な研究開発を行っていくことは環境が急変する中でも変わらず求められることである。

 今まさにハイブリッド車の普及期が始まりつつあるわけだが、ハイブリッド車が次世代のクルマのあり方のゴールではなく、電気自動車といった選択肢も将来的には想定されており、次世代のクルマはどうあるべきかというテーマを日系自動車メーカーが業界のリーダーとして牽引していかなければならない。

 次に購買、生産部門である。

 クルマそのものの構造が大きく変化するのに伴い、クルマの作り方というのも大きく変化してくるのは当然であり、次世代の生産技術とも言うべきことがテーマとしては浮上してくるだろう。

 また、現在は各社とも海外への設備投資を控えている状態であるが、今回の金融危機において為替のインパクトの大きさを実感した各社は再度、海外での現地生産・世界最適生産のあり方を検討する必要に迫られるものと思われる。

 そして、その際には比較的、少量の生産であっても採算を維持できる柔軟性のあるものづくりが問われることになるだろう。

 また、将来的には、より一層のグローバル化が進むということを踏まえると、グローバルレベルでの技能の伝承というのも課題になってくることになるだろう。

 最後に販売部門である。

 先進国ではクルマが日常生活の中で特別な存在ではなくなりつつある。若者を中心にクルマ離れが起こっており、これまで長らく続いてきた系列別のチャネルに対する不満も出てきている。自動車産業そのものに逆風が吹いている状況下においては販売のあり方も抜本的に見直す必要に迫られるものと思われる。

 また、一方で、急速に市場が拡大する新興国においてはブランドを向上させる意味でも販売網及びサービス拠点を早期に構築していくことが重要になる。
【俊敏な経営の必要性】

 しかしながら、環境の変化が激しい時代において、各ファンクションに共通して求めれるのは、業務を短サイクル化することであり、企業として俊敏な経営をしていくことだろう。そして、それは今回の GM 破綻から反面教師的に得られる教訓でもある。

 PDCA という一連のサイクルを早く回して、必要に応じて軌道修正をしていくことが急速に変化する環境に迅速に対応していく唯一の方法である。

 そういう意味では、先程は言及しなかったが、現場に対して迅速なフィードバックを行うための経営管理制度や、情報システム、変化する環境に適応できる柔軟な発想を持つ人材を育成するための人事制度といった企業の仕組みを形づくるバックオフィス部門も重要な役割を担うことになるだろう。

 一方で、企業としてのぶれない方向性を指し示す長期的なビジョンももちろん必要であり、その方向性に基づいていかに PDCA サイクルを早く回していけるかということが、大きな節目を迎え、環境が急激に変化する自動車業界においては必要なことではないだろうか。

<秋山 喬>

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