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コラム

中国市場の変化と一層の現地化の必要性

◆今年の中国での新車市場、前年比約10%増の1500万台超えも

                    <2010年03月08日号掲載記事>

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【伸長する中国市場】

 中国自動車工業協会の熊伝林副事務局長は、先日、東京都内で記者会見を行い、2010年の中国の新車販売台数見通しについて、同協会の公式見解である 1500万台(前年比約 10 %増)を上回る可能性があると述べた。また、中長期の見通しに関しては、自動車保有台数の増加に伴い、2015年ごろまでは毎年 10~ 15 %の成長が持続するとの見方を示した。

 中国の新車販売台数は 2003年にドイツ、2006年には日本を超える規模まで増加していたが、2009年には 1360 万台と米国を抜き世界一の市場となった。熊伝林副事務局長の見方に従い、今後 2015年まで 10 %成長が続くとすると、2015年には 2400 万台を超える規模にまで達するということになる。

 新興市場については BRICs というキーワードで一括りにされることが多いものの、2009年時点の販売台数でインド 197 万台、ロシア 146 万台、ブラジル314 万台ということを踏まえると、市場としての規模は中国が突出していることになる。

 今後の世界市場の伸びは新興国が牽引するということは業界内の共通認識となっているが、自動車メーカー各社にとっては、まず中国を攻略していくことが新興国での台数増加に直結することになる。

 中国の新車販売台数 1350 万台のうち、約 1000 万台が乗用車であり、そこでの主要日系自動車メーカーのシェアを見てみるとトヨタ、ホンダが 6%、日産は 5 %と 3 社を合わせても 15 %超に留まっており、今後どこまでシェアを伸ばし存在感を示せるかが注目される。
【市場構造の変化】

 では、ここで中国市場の概略を見てみよう。

 これまで中国市場は小型車が市場の過半を占める日本やインドよりも中型~大型車が多い米国との類似性が指摘されており、その背景には商品の見栄えを重視する中国人の嗜好があるとも言われている。

 このような市場特性を踏まえ、日米欧の自動車メーカーは沿岸部における中大型車を販売の中心に据えており、実際、トヨタやホンダも北米での高いブランドイメージを中国に持ち込む形で、主に北米市場向けに開発したカムリやアコードを一部手直しして中国市場に投入していた。

 しかしながら、リーマンショック後の 2009年はじめに政府が打ち出した自動車産業調整振興政策の効果により、台数増加とともに、市場構造も変化してきており、販売車種の小型化や販売地域の内陸部への広がりが進展している。

 具体的には、自動車産業調整振興政策に盛り込まれた排気量 1.6 リットル以下の乗用車に対する自動車購入税の引き下げ、オート三輪や低速トラックから軽トラックへの買い替えや排気量 1.3 リットル以下の乗用車購入に対する財政的補助、さらに、旧型車の買い替えを促すための補助資金増加、といった販売促進策が功を奏した格好である。

 2009年の新車販売台数をセグメント別に見てみると、C セグメントが 1350 万台のうち約半分の 47 %を占めており、次に B セグメントが 16 %、D セグメントが 14 %と続く。

 実際、販売トップ 10 の車種のうち、首位の BYD 社 F3 をはじめとする 6 車種が C セグメントとなっている。C セグメント中心の市場構造には前述したとおり中大型傾向が見受けられるものの、いずれの車種にも販売促進策に該当する 1.6 リットル以下のモデルが用意されている。日系自動車メーカーからはC セグメントのカローラ、D セグメントのカムリ、アコードがトップ 10 にランクインしている。

 また、同じセグメント内でも、日米欧が高価格帯、韓国系が中価格帯、中国系が低価格帯とすみ分けがなされているのが特徴的である。そして、日米欧ブランドの 2009年 1月~ 10月における前年同期比の伸長率がそれぞれ 20 %、40%、35 %に留まっているのに対して、韓国系は 85 %、中国系は 60 %の伸びを示しており、政策効果による自動車購入層拡大の恩恵を韓国系、中国系メーカーが享受している状況が見て取れる。

 日系自動車メーカーは上記の販売トップ 10 や台数伸長率を見る限り、急速な市場の変化への対応が遅れぎみであり、今後は市場ニーズや、政策を踏まえて投入車種や価格等を改めて検討していく必要があるものと思われる。
【政策が指し示す市場の方向性】

 ご存知の通り、中国においては市場の将来像に政策が大きな影響を与える。リーマンショック後の金融危機に対する景気刺激策として、自動車産業調整振興政策が公表され、その中の販売促進策が功を奏したことは前述したが、中国政府は本政策において自動車産業育成の今後の方向性についても示している。

 その中でも具体的な数値目標が示されているものを以下に挙げた。

「市場の成長」
09年の自動車生産・販売が 1000 万台を超えるように努め、3年間の平均伸び率を 10 %に保つ。

「企業再編」
生産販売規模 200 万台を超える自動車企業集団を 2~ 3 社、100 万台を超える自動車企業集団を 4~ 5 社育成する。生産販売規模で現在は 14 社で 9 割以上のシェアを占めているが、これを 10 社以内とする。

「市場構造最適化」
乗用車は排気量 1.5 リットル以下のシェアを 40 %以上に引き上げ、その内、排気量 1.0 リットル以下の小排気量車のシェアを 15 %に到達させる。トラックは大型トラックの比率を 25 %以上にする。

自主ブランド乗用車の国内シェアを 40 %以上とし、そのうち基本型乗用車のシェアは 30 %超とする。また、自主ブランド車の輸出比率は生産販売台数の10 %弱とする。

「新エネルギー」
現在の生産能力を拡大し、電気自動車、プラグインハイブリッド、普通型ハイブリッド等の新エネルギー車の生産能力を 50 万台とする。新エネルギー車の販売台数を乗用車販売全体の 5 %前後に引き上げる。主要な乗用車メーカーは認証を取得した新エネルギー自動車製品をラインアップしなければならない。

 これらの項目を見ると、当然、環境問題対応といった観点もあるが、それ以上に政府による自国自動車産業強化の意思が伺える内容となっている。中国系自動車メーカーであっても製品競争力を有する小型車セグメントを市場の中心として育成していくことで、自主ブランドシェアの拡大を目指すとともに、構造的にはシンプルであり競争ルール逆転の可能性を秘めている電気自動車を新エネルギー車の本命に据えるといった具合である。

 一方で、日米欧の自動車メーカーは、今後これまで以上に中国市場でプレゼンスを築いていこうと思ったら、このような政府の思惑や政策とも上手く折り合いをつけていかなければならないということになる。

 日系自動車メーカーがかつて低価格と高品質を武器に米国市場へ進出した際に、当初こそ集中豪雨的な輸出による貿易摩擦が発生したが、その後、現地生産、現地調達の拡大、米国メーカーとのセグメントのすみ分けを行うことで徐々に米国でのプレゼンスを安定化させていった。

 当然、そのときとは状況も立場も異なるため、アプローチも異なるが、巨大な市場にアクセスさせてもらう代わりに、現地の自動車産業、及び社会に対して何が提供できるかという点もまさに現地化を考えるうえでは必要な視点となるものと思われる。

 そのような視点で考えると、現時点で中国の自動車産業が必要としており、外資系自動車メーカーに対して期待しているのは、やはり魅力的なクルマを創るための研究開発技術だろう。

 外資系自動車メーカーとしても現時点ではまだまだ研究開発機能の現地化が行われているとは言いがたい。技術流出のリスクもあるが、現地ニーズに即した製品開発を行っていく必要性も踏まえると、現地での研究開発体制を積極的に強化していくことが重要と思われる。
【製品開発機能現地化の必要性】

 かつて一人当たり GDP が 3000 ドルを超えるとモータリゼーションが始まるというのが業界内で通説となっていたが、中国は世界最大の市場となった 2009年にようやく一人当たり GDP が 3000 ドルを超えた。

 今後の市場拡大が見込まれる内陸部は当然まだ 3000 ドルに到達しておらず、今後、販売台数を増加させていこうと思ったら、そういった地域の現地ニーズを汲み取った製品開発を行うことが求められる。

 そのような製品開発は多分に先進国の常識にはとらわれない要素があり、当然、製品開発自体を先進国の拠点で行うにも限界があるものと推測される。今後、中国に限らず、新興国の市場を開拓していくには、従来、現地化と言う際に真っ先に連想された生産、調達機能に留まらず、製品開発機能をいかに現地化していくかということが重要になってくるだろう。

<秋山 喬>

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