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コラム

携帯電話との比較で考える自動車の将来像

◆中国・奇瑞汽車、米ベタープレイス社と共同でバッテリー交換式EVを量産へ

                    <2010年07月27日号掲載記事>

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【変革期に有益な他業界比較】

 7月 27日、中国の奇瑞汽車は、ベタープレイス社と共同で、バッテリー交換式の電気自動車の量産準備を進めていることを明らかにした。ベタープレイス社は充電ネットワークの整備、運営を行う米国のベンチャー企業であり、バッテリー交換による電気補給方式を推進している。

 奇瑞汽車は電気自動車分野において、バッテリー交換式とプラグイン式の 2方式を並行していく方針であり、ベタープレイス社とは充電ネットワークの構築においても提携中である。

 奇瑞汽車は中国政府が充電ネットワークの規格整備を進めるなか、国の基準に合った設備ネットワークを構築できるよう、ベタープレイス社と手を組んだものと思われる。

 リーマンショック後の自動車市場は、従来の主戦場であった日米欧の先進国市場に代わって、BRICs に代表される新興国市場が成長をリードしている。各メーカーとも台数増が見込まれる新興国市場では、シェア拡大の牽引役となる低価格車を投入する一方、成熟した先進国市場向けには、高付加価値化を目指し、多様な環境対応車の導入を計画している。

 また、本ニュースのように、新興国においては、モータリゼーションと環境対応が同時並行的に進んでいる部分もあるが、その背景には変革期に乗じて、電気自動車の普及を促し、業界内での主導権を握ろうとする新興国政府、メーカーの思惑も見え隠れする。

 このような変革期においては、将来を見据える際に他業界の事例を参考にすることが有益である。自動車に先立って新興国の市場化が進んだ携帯電話業界を中心に他業界事例を見てみたい。
【新興国における状況】

 まずは新興国における携帯電話市場の状況を見てみよう。

 携帯電話の 2008年の世界生産台数は約 12.2 億台であり、過去数年にわたり年率 10%~ 20 %程度の成長を示しているが、市場の約半分は、新興国を中心に販売されており 100 ドル以下のローエンド、スーパーローエンドセグメントに分類される端末群で構成される。そして、当該分野ではノキア、サムスンが規模のメリットを生かして強みを発揮している。

 日本の端末メーカーは 300 ドル以上のハイエンドセグメントを志向し続けた結果、世界市場全体では傍流の存在となってしまい、ノキア、サムスンがそれぞれ 37 %、20 %のシェアを獲得している一方で、日本勢は、その他 24 %の内数という状況である。

 この要因は、一定のボリュームが見込める国内市場に安住してしまったこと、国内市場では通信会社に言われたとおりの仕様にする必要があり、結果的に端末メーカーとしての競争力が失われてしまったこと、等、さまざまな指摘があるが、他業界に対しては、常に世界のマジョリティを意識しながら事業展開することの重要性を示唆しているといえるだろう。

 自動車業界でも、今後は新興国における低価格車が市場のボリュームゾーンになることが推測されるが、まだ、どのプレイヤーが抜け出すのかは不透明な状況であり、各社が試行錯誤を続けている。

 携帯電話におけるローエンド、スーパーローエンドセグメントに属する端末の特徴としては、通話とショートメールメッセージのみに特化していることが挙げられるが、低価格車の開発においても、それと同様に、製品にどこまでの機能を持たせるのかの判断が重要になるだろう。

 また、携帯電話業界ではないが、グローバル企業の代表でもある GE は昨今の環境変化を踏まえ、先進国向けに開発した商品を新興国向けにカスタマイズするのではなく、新興国でゼロから製品開発し、そこで生まれたイノベーションを先進国へ展開する手法をリバースイノベーションと称し、製品開発戦略の柱に据えている。

 自動車も従来の先進国向けの自動車から引き算で機能を考えるのではなく、ゼロから新興国向けの自動車はどうあるべきかを考えていく必要があるだろう。
【先進国における状況】

 次に先進国における主に高機能携帯電話市場の状況を見てみる。

 前述したとおり、日本の端末メーカーによる従来の端末は絵文字メールや電子決済機能等、高機能ではあるものの、国内市場に取り残された存在になってしまっており、ガラパゴス携帯とも称されている。一方で、iphone に代表されるスマートフォンは世界規模では言うまでもなく、日本市場でも市場の主役になりつつある。

 スマートフォンは携帯と PC の中間ともいうべき製品であり、小型 PC に通話機能がついたものと見る向きもある。実際、iphone を販売するアップルは、従来の携帯端末メーカーではなく、それゆえに、自由な発想を生かして端末の新しい使い方を消費者に対して提案している。

 このように、高機能携帯電話の領域では、従来の携帯端末とは異なる新しい使い方、そしてそれに付随する機能を持った端末が市場の支持を得ている状況といえる。

 一方で、自動車に目を移すと、先進国向けには、高度な環境性能を売り物にしたハイブリッド車や電気自動車など、さまざまな環境対応車の導入が実施、計画されている。

 中でも、電気自動車は、米国や中国政府の思惑もあり、世界レベルで急激に注目が集まっているものの、依然として、従来のガソリン車と比較した場合の価格や航続距離、インフラなどが課題として取りざたされている。

 しかしながら、それは従来のガソリン自動車と同等の役割、使い方を担わせようとする前提において課題になるのであって、例えば、スマートフォンのように従来と異なる新しい使い方をするようになるのであれば、機能面の課題はさほど問題でなくなるかもしれない。その意味で、引き続き新しい使い方の模索がなされるべきだろう。(例えば、自動車とバイク、自転車の中間帯的な使い方、等)

 また、電気自動車に関して言うと、自動車がスタンドアローンではなく充電設備等の外部ネットワークと接続されることで、携帯電話のように端末自体の付加価値が下がり、外部ネットワークの重要性が高まるということが指摘されている。しかしながら、当の携帯業界に目を移すと、iphone に代表されるように再び端末の価値が注目される時代になり、魅力的な端末を揃えた通信会社が有利になるという状況が生まれてきている。

 つまり、外部ネットワークに接続される、ネットワーク製品(端末)は、端末自体がコモディティ化し、差別化できない状況になってしまうと、端末の付加価値が下がり、外部ネットワークに左右される事業モデルになってしまうが、端末の魅力次第ではそれを回避、軽減できるということだろう。そして、魅力的な端末ということを考えた場合には、従来との差別化につながる新しい使い方を消費者に訴求することが重要なポイントとなる。

【自動車業界への示唆】

 以上、主に携帯電話業界の事例を参考にしながら、新興国と先進国の状況それぞれにおいて自動車業界への示唆を探ってきた。

 その結果、どちらの市場においても言えるのは、自動車の使い方はどうあるべきかを踏まえて、製品機能の再定義を行うことが必要な時期に来ているということではないだろうか。そして、各社にとって、その成否が将来の業界内での立ち位置にも大きな影響を及ぼすことになるものと思われる。

 また、新興国については先進国と同じ道筋を通るわけではなく、将来に向けての変化も同時並行的に起こる可能性があるため、今回のニュースにあるような電気自動車にしても、それこそリバースイノベーションとして、新興国からイノベーションが起こってくるかもしれない。

 いずれにしても、これまで日本の自動車業界はグローバル化を通じて、競争力を強化することに成功してきたが、現在~今後の変革期に際しても、世界を睨みながら主導権を維持すべく事業展開していく必要があるだろう。

<秋山 喬>

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