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コラム

部品分野の選択により収益性をコントロールする

◆国内自動車部品大手、収益力で欧州勢に見劣り。円高など響く

                 <2010年08月31日号掲載記事>

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【日系と海外勢の収益性の違い】

 2010年 4~ 6月期の自動車部品メーカーの収益性を日系と海外勢で比較した場合、日系が平均で 6 %強だったのに対し、海外勢は 8 %弱と日系のほうが劣っているとの記事が日本経済新聞に掲載された。

 これは複数の部品分野において、日系と海外勢の収益性の比較をしたものであり、一例を挙げると駆動系ではアイシン精機(7.6 %)と米 ボルグワーナー(8.2 %)、エアバッグではタカタとスウェーデン オートリブ(12.7 %)が比較されている。()内の数字は各社の売上高営業利益率である。

 記事においては、日系の収益性は損益分岐点の引き下げにより、リーマンショック前の水準を上回ったものの、円高により輸出採算が悪化していることが指摘されている。

 しかしながら、日系部品メーカーの収益性が海外勢より劣っているという指摘は、以前よりなされてきたことであり、その背景としては日系の場合、自動車メーカーとの間で安定的な取引関係が重視されるのに対し、海外勢は短期間の取引関係でリスクも大きくなりがちといった、取引構造、商慣習の違いが影響を及ぼしている。
【収益性に影響を及ぼす業界動向】

 一方で、昨今の自動車業界の変化に伴い、部品メーカーの収益性にも影響を与える要因が出てきている。

 まず、収益性へのマイナス要因としては、新興国を中心に低価格車の普及が進み、それに伴い部品メーカーに対して更なる原価低減が求められるという点が挙げられる。新興国の地場系部品メーカーと競合するケースも増えるであろう。

 低価格車を実現するためには、製品構造の抜本的見直しもさることながら、各構成部品の更なる原価低減も避けては通れない。自動車メーカーが低価格車でも必要最低限の収益を確保するためには、まず一義的に部品メーカーにそのしわ寄せがやってくることになるだろう。

 部品メーカーとしては、調達、生産面で現地調達、現地生産を検討する、また設計開発面では設計の簡素化、共通化を検討するといった取り組みを行うことで、自らも収益性の確保に努める必要がある。

 また、収益性へのプラス要因としては、自動車の電子化に伴う水平分業型ものづくりへの転換が挙げられる。パソコン等の電子機器のように組み立てより部材の付加価値が高まる、いわゆるスマイルカーブ化する可能性が指摘されている。

 勿論、自動車を構成する全ての部品が一様の影響を受けるわけではなく、部品分野によって影響度が異なるのは言うまでもない。モータやバッテリ等の新たなキーデバイスの重要性が増す一方で、既存のパワートレイン関係の部品についてはその将来性が不透明な状況である。またさほど影響を受けない部品分野も実は多い。

 このように、マイナス、プラス双方の要因が想定されるが、プラスの影響を享受するプレイヤーは限定されるため、部品メーカー全体の収益性ということを考えた場合には、今後はマイナスの影響が及ぶことになるだろう。
【部品分野の選択により変わる収益性】

 部品分野ごとに今後の業界変化の影響を受ける度合いが異なることは上述したが、自らの事業領域である部品分野の選択が収益性にも大きな影響を及ぼしていることは言うまでもない。

 例えば、ある部品の場合は、設計を自動車メーカーが行うがために、どうしても製造機能のみを担う部品メーカーの収益性は低くなってしまうという事情がある。また自動車メーカーが車種間での共通化を推進する部品であれば、部品メーカーとしても規模のメリットを享受することが可能かもしれないが、車種ごとに専用設計がなされる部品であればまた事情は異なる。

 その意味で自社の部品分野の選択は部品メーカーにとって根幹の戦略といえる。また、逆にこれら部品分野は、事業活動を通じて拡大、分散化してしまいがちのものでもあり、収益性の観点からは定期的な見直しも必要である。

 そして、自社の部品分野の選択、見直しを行うにあたっては、いくつかの観点から検討する必要がある。

 まずは自社の既存の技術、設備の応用により、競争上有利になる、コストメリット享受が期待できる部品分野であるかどうかである。

 材料技術や生産技術といった既存の技術や、関連する設備の活用が見込める部品分野に進出するというのは部品メーカーにおける事業領域拡大の王道である。しかしながら、ある日振り返ってみると進出した部品分野が飛び地になってしまい、分野間のシナジーがないという状況にもなりがちであり、必要に応じて見直しが必要である。

 次に周辺部品分野の取り込みによる付加価値向上の可能性である。

 既存部品の周辺分野を取り込み、モジュール化、一体化することにより、自動車メーカーに対する付加価値を向上させられないか(コスト削減、機能性向上、等)、というのも部品分野検討上の一つの観点である。このケースの場合、自動車メーカー視点から見て、付加価値が明確に向上するということが重要になる。

 更には、当該部品分野の市場将来性も重要なポイントである。

 当然のことながら、部品分野ごとに市場将来性は大きく異なり、例えば、HV、EV 化した際の将来性はどうなのか、また 、プラットフォーム共通化による規模のメリットを享受できるのかといったようなさまざまな要素が将来性に影響を及ぼす。

 このように複数の観点を踏まえながら自社の部品分野の選択、見直しを行っていく必要があり、それによって収益性も変化することになる。
【まず、何屋を目指すかを定義する】

 そして、上記したような検討の前段階としては、まず自社のポジショニングを明確に定義するという作業が重要になってくる。

 それはつまり、自社はシステムサプライヤを目指すのか、それともスーパーティア 2、3 を目指すのか、また、材料、生産技術、部品分野といった軸のうち、どの軸に基づいて事業領域を定義するのか、といったことをはっきりさせる作業である。

 そうすることにより一本筋の通った状態で内部での検討を行うことが可能になるし、外部に対しても自社の目指すところ、及び、専門性が鮮明になり、付加価値を認識してもらいやすくもなるといった効果が期待できる。

 今後、業界環境が大きく変わる中、部品メーカーにおいては、自発的かつ、戦略的に事業展開を行うことが重要であり、それによって収益性も自らコントロールしていくことが必要になるだろう。

<秋山 喬>

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