PMOの役割について考える

◆インターネット ITS 協議会、車載機器などの共通仕様書案をまとめる

   <2006年03月08日号掲載記事>

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 インターネット ITS 協議会とは、以下の 3 つの成果を目指す会員制の組織である。

・インターネット ITS の社会基盤としての展開シナリオ作成
・インターネット ITS 技術の開発、実用化、標準化
・新規事業のインキュベーション

 会員は通信機器メーカーやエネルギー関連、商社、保険会社、自動車メーカー等、様々な民間企業が登録しており、大学を含めると 100 団体以上となる。

 ITS 協議会のように複数の企業や大学を持つ組織体だけでなく、1 企業内においても、何かの目的を達成するための活動を管理・運営する機能は、限られた期間内で効率よく品質の高い成果を出すために重要な役割を担っている。

 今回は、インターネット ITS 協議会を例に一般的に PMO (Project Management Office)と呼ばれる機能に求められる役割ややり方について、筆者の経験を踏まえて考えてみたい。

【目的の共通認識】

 インターネット ITS 協議会の目的は、上述の 3 点に集約されるが、そもそも、このプロジェクトが発足するきっかけとなった社会的背景や、その企業が置かれている状況も踏まえて、プロジェクトメンバー、インターネット ITS 協議会の場合には会員と共通認識を持つことが重要となる。

 共通認識を醸成するためのツールとしては、ホームページ、電子メール、テレビ会議など様々であるが、プロジェクト発足時には、キーメンバーだけでも一同に会して、顔を付き合わせる方法を取るほうがよいであろう。

【成果の品質管理】

 各メンバーが成果を作成する前工程において、最終的成果と、そこに連動する中間的成果の定義、つまり各成果物に盛り込まれるべきガイドラインを明確にすることである。インターネット ITS 協議会では活動目的自体にも掲げられているが、成果を標準化することは全体の成果品質を管理する上で重要となる。

 各メンバーが作成した成果を取りまとめ全体の成果物に仕立てあげるのも、PMOの重要な役割であるが、作成前に標準化しておかないと、各メンバーからの成果を取り纏めるだけでも、大変な工数が発生する。また、成果のレベルが一致しない場合には、全体としては、一番、品質の低い成果に合わせる場合も発生する。

 また成果だけでなく成果を出すための活動プロセスに使われるワークシートも PMO が提供することが望ましい。プロジェクトメンバーの考えた方や能力は様々で、作業自体も標準化した方が効率がよいからである。

【進捗管理】

 最終目的達成までの全体スケジュールと、主要報告会(マイルストーン)を設定したスケジュール表を作成する。そして、スケジュールの遅延や方向のずれを、なるべく早く察知するための各メンバーの取り組み状況、課題を管理することも必要になる。いってみれば、赤信号になってからではなく黄色信号を察知するということである。

 課題は管理するだけでなく解決の方針を示すことも必要である。新たな考え方や、纏め方、攻め方の切り口を示すことがよいであろう。上手く進んでいる他メンバーから学ぶのも重要である。

【成果の合意形成】

 プロジェクトには複数の利害関係者が関わっている。ある利益も、みる側面によっては、害になったりすことがままある。全ての要望を取り込むわけにはいかないので、優先順位を付けることが必要になる。

 優先順位を付けるには共通の評価基準が必要になる。評価基準は各利害関係者の決定権限のあるキーマンを巻き込むことが必要で、場合によっては個別の根回しも必要になる。

 コンサルタントを始めとした外部機関を雇うメリットもここに一つある。特定企業・部門の特定の者が PMO を遂行すると、成果の中身如何に関わらず斜に構えてしまうメンバーもいるからである。第 3 者が行うことにより、公平性を前面に出すことができる。

【おわりに】

 PMO の役割は、いってみれば各メンバーに対して 5W1H を明確することである。しかし、単にそれを明確にするだけでは、スケジュールを引くだけの線引屋と揶揄されてしまうこともある。

 筆者は成果のガイドラインやワークシートを作成したり、各メンバーが抱える課題を共有しながら解決のための示唆を提供するところに PMO の付加価値があると考える。自動車メーカーやサプライヤからの拡販戦略や競争戦略の再構築プロジェクトの支援のみならず、異業種の自動車業界への新規参入や事業強化のプロジェクトに PMO の立場で参加することも多い弊社が最も気をつけている部分である。

<宝来(加藤) 啓>