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コラム

性質の異なる顧客に対しどう事業を拡大するか

◆日産の「ビジネスセンター」が利用販社拡大へ

<2006年08月01日付日刊自動車新聞掲載記事>

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【日産の「ビジネスセンター」が利用販社拡大へ】

自動車メーカー各社が国内販売網の再編を進める中で日産の販売スキームを見直す動きが目を引く。

・一つは系列 52 販社、約 1,300 拠点の総資産約 4 千億円を分離・分社化し資産管理会社「日産ネットワークホールディングス」に統合する動きである。
・二つは今回取り上げる販社の機能を代行するシェアード・サービスセンター(以下 SSC)「ビジネスセンター」拡大の動きである。

以前弊社長谷川はコラムの中で、前者に関して資産管理業務と販売・サービス業務を分離・分社化することで販社の営業力を強化する狙いがあると指摘しているが、後者の狙いもそこにあると考える。

(弊社長谷川のコラムは以下を参照頂きたい。
「販売チャネルの最適化における今後の課題について」

一般に企業における経営活動(業務)を 4 つに大別すると、

1.資金調達 (銀行交渉、株主対策等)
2.事業資産の取得・管理 (不動産・動産取得、在庫仕入等)
3.資産を活用した対顧客活動 (マーケティング、販売、サービス等)
4.諸活動の記録 (経理登録、売掛・買掛管理等)

に分けられるであろう。

日産は、自社系列国内販社が元々行ってきたこれら 4 つの経営諸活動のうち、

1 と 2 の業務を資産管理会社に移管
4 の業務を今回取り上げる SSC に移管

させることにより、販社の限られた経営資源を 3 の対顧客活動に集中させることを企図している。また、これにより販社の役割や責任を明確にし営業力を高めようとしていると考えられる。

ただ資産管理会社と SSC への業務移管が可能な販社の対象範囲には違いがある。

資産管理会社への業務移管の対象となる販社は日産と資本関係のある 52 販社であるのに対し、SSC への業務移管の対象となる可能性があるのは、日産車を取り扱う全ての販社の 139 販社である。

メーカーにとってみれば SSC の効果を最大化するためには、より多くの業務移管事業者を確保することにより「規模の経済」を働かせることが肝要である。
よって、地場系販社への SSC 導入は大切である。

一方、販社にとっても「ビジネスセンター」に自動車登録や受発注など販売事務に関する業務や、会計や債権・債務管理など経理に関する業務をアウトソースすることでマーケティング、販売、サービスといった業務に特化できるという意味で SSC 導入は検討の価値があるように思える。

以降では地場系販社への SSC 導入に伴う課題や今後の方向性について考えていきたい。
【地場系販社への SSC 導入の課題】

地場系販社への SSC 導入を考えた場合、以下のような課題があるだろう。

・「資本関係がないことによる経済合理性の説明責任」
実質連結決算範囲内でありメーカー本体と一体経営がなされているメーカー資本販社と異なり、地場系販社に対する SSC 導入は個別の導入契約における経済合理性が重要になる。SSC 導入の必要性や SSC への業務委託料を上回る効果をより一層訴求していくことがポイントになるであろう。

・「小規模事業者向けであるが故の収益性確保」
地場系販社には小規模事業者が多いと言われている。小規模事業者は SSC 対象業務を極少ない人員で対応していると考えられることからそもそもの SSC 導入効果が低いことや、支払可能な業務委託料金額が低いと想定され、結果的 SSCとして、若しくは地場系販社としての収益性確保が難しくなる可能性がある。

・「地理的要因による効果的なコミュニケーションの維持」
一部のオープンポイントを除きメーカー各社の販売エリアは全国に広がり、販社も全国に拡散している。特に地場系販社は所謂 5 大都市以外のエリアに多いと想像される。しかし SSC をメーカーが全国に展開することは費用対効果の面から考え難い。日産の例でも東京、名古屋、大阪、福岡の 4 拠点である。全国に拡散している販社とどのようにコミュニケーションを取るかは大きなポイントになるだろう。
【今後の方向性】

これまで SSC を導入してきたメーカー系販社と地場系販社は性質が異なるため、地場系販社への SSC 導入にあたっては、SSC の業務委託料と導入効果の見合い、業務委託料の設定、全国に拡散する販社にどう対応するかがポイントになると述べてきた。

これらを踏まえたうえで、今後の SSC の導入を検討する事業者には以下のような方向性の内容を検討してはどうかと筆者は考える。

・サービスを絞り込む
販社業務の量や特性を分析し、販社側での業務変更等による追加コストを最低限に抑え、導入効果が見込める業務のみを対象としたサービスを行う。販社の業務内容や処理方法により、導入効果が見込める業務も異なるであろうから、いくつかのプレパッケージ的なパターンを設定する。

SSC 対象の業務を絞り込むことで販社から見れば一定の効果を発揮しながら業務委託料を低減させることが可能となるであろうし、SSC 側としてもパターンを設定することでサービス開発の費用を下げることでき、結果的には業務委託料の低減や自社の収益性向上に繋げることが可能となるであろう。

・サービス対価の受領方法を工夫する
SSC が提供する業務に対する対価を、業務委託料だけでなく別の形で求めることも考えられる。

例えば SSC をメーカー単体で設立するのではなく、各販社が一定比率を出資する形で新規設立する。これにより、仮にメーカーが設立する SSC に利益が蓄積され販社は逆にコストダウン余地が少ないといった事態や、その反対に販社のコストは削減されたものの、SSC は大きな赤字を蒙るといった事態を、両者が WIN/WIN を自然と模索する形に整える。つまり、SSC 事業の結果として得た利益が各販社へ配当の形で還元される形である。

短期的には販社の負担は増えるかもしれないが、長期的には販社が SSC の経営に参画することで、サービス品質が高まることやコスト意識が高まり業務委託料の低減に繋がることも考えられる。

・地域コミュニティや業界団体を活用する
少ない SSC 拠点で全国に拡散している販社に対応することは一部 IT ツールを利用することで可能かもしれないが、自ずと限界があるであろう。また、販社側でも IT ツールの導入など追加投資も発生するだろう。

こうした事態を回避するひとつの可能性として、寧ろ全国に拠点を持つ行政や業界団体と共同で SSC を設立・運営することはできないだろうか。行政や業界団体が専門性を必要とする SSC のサービスに直接携わることは難しいかもしれないが、場の提供やネットワークを通じた顧客開拓など活躍できることはあるだろう。

以前に筆者は販社を強化、活性化できるのは自動車メーカーだけではなく地域コミュニティや業界団体にも可能性があることを述べたが、SSC の設立・運営に関わることは具体的取り組みの一つではないだろうか。

<宝来(加藤) 啓>

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