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コラム

限られた資産を効率的・効果的に運用する方法について考える

◆秋田、路面凍結情報の提供による安全運転支援プロジェクト

          <第6回国際オートアフターマーケットEXPO2007より>

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【第6回国際オートアフターマーケットEXPO2007が開催】

 去る 3月 16日から 3月 18日まで第 6 回国際オートアフターマーケット EXPO2007 が開催された。今回の出展内容を筆者なりに大別してみると 4 つのパターンがあり以下の通り分類される。

・川上の変化への対応
 川上である自動車製造領域での変化は、その川下に位置するアフターマーケットにも影響する。今回主に取り上げられていた川上の変化は、素材の変化と車の電子化である。具体的には整備・板金事業者向けに高張力鋼板やアルミニウム合金に対応する整備・板金の方法や、電子化に伴う故障診断システムの使用方法に関する内容を取り上げたものがこの類型に入る。

・環境問題への対応
 水性塗料や低 VOC 塗料を用いた低公害な塗装や洗車時の低公害なケミカル製品に関する内容を取り上げたものがこの類型に入る。

・高付加価値商品の紹介
 光触媒を用いたガラス・クリーニングや防犯対策フィルムなどに関する内容を取り上げたものがこの類型に入る。

・ビジネスモデルやビジネス支援ツールの紹介
 新車や中古車販売、整備、板金、リサイクル・リビルドパーツのフランチャイズやボランタリーチェーンなどに関する内容を取り上げたものがこの類型に入る。また、支援ツールでは整備や板金、用品販売システムなどを取り上げたものがこの類型に入る。

・インターネット ITS の紹介
 インターネット ITS の取り組み状況やアフターマーケットにおける活用の可能性を紹介したものがこの類型に入る。

 インターネット ITS は前回から注力して取り上げられているようである。車車間や路車間を通信する機器など ITS に関わる技術や機器は日進月歩であるし、一部 ETC を活用した SS や駐車場での支払も実用化している。

 そうした中でアフターマーケットにおいても今後 ITS がどのような進展を見せ、各アフターマーケット事業者にとってどのような影響やビジネスチャンスがありそうかどうかは注目の的である。今回はインターネット ITS 協議会事務局長、時津直樹氏の講演の中で紹介されていた「秋田、つるつる路面ナビゲーター(通称、つるナビ)」について取り上げたい。
【「つるつる道路ナビゲーター」とは】

 「つるつる路面ナビゲーター」は、プローブカーに関する社会実験の1つで地図上に車がスリップした場所やスリップしやすい場所を表示するシステムである。

 スリップしたかどうかは ABS (アンチロック・ブレーキ・システム)や TCS(トラクション・コントロール・システム)が作動したかどうかで判別する。
またスリップしやすい場所は、車輪回転数から計算される車体速度と実際の車体速度の差などから解析する。

 こうした情報に GPS から取得した位置情報を加えてインターネット上で公開している。将来的にはカーナビや他の道路情報との連携も視野に入れているとこのである。

 この社会実験に参加しているのは、国土交通省、秋田県、秋田市といった行政や、秋田大学、インターネット ITS 協議会などの大学や団体、民間からはマツダやスバルの研究所といった自動車メーカーを始めとして地元の企業や保険会社などである。

 自動車の走行時に、「つるつる道路ナビゲーター」のように速度や ABS、TCSなどの自動車内部の情報と、道路状況や天気状況などの自動車外部の情報を取得・提供する社会実験は名古屋市や横浜市などの大都市で行われいてる。

 今回筆者が注目したいのは「つるつる道路ナビゲーター」が、秋田という地方での社会実験であり、路面凍結という地方が持つニーズに着目している点である。
【地方が抱える問題】

 秋田県の歳入決算額は平成 14年度の 7,600 億円から平成 16年度は 7,300 億円と約 4 %の減少傾向にある。同様の期間における都道府県歳入決算総額は51 兆円から 48 兆円と約 6 %の減少傾向である。また平成 17年度の歳入総額の情報は取得できなかったが、秋田県の平成 17年度の歳入決算額は 6,900 億円と減少が続いている。つまり歳入総額全体が減少していくのに比例して秋田県の歳入額も減少しているのである。

 他県については更なる精査が必要であるが、筆者が言いたいのはいわゆる地方では秋田県と同様の傾向が見られ、地方では結果として税収を中心とした歳入を増やすために新たな商品やサービスを開発することが求められているのではないかということである。

 ところが、地方で新たな商品やサービスを開発しようとする際に直面する問題がある。「ヒト・モノ・カネ」、つまり経営資源の制約が大きいという問題である。各々について整理すると以下の通りとなる。

<ヒトの問題>
 名古屋市や横浜市はトヨタや日産といった自動車メーカーのお膝下であり情報や機能が集結している。一方で秋田のような地方では情報や機能が不足しがちであり、新たに商品やサービスを開発しようとしても、その仕組みを構築できる能力を持つ企業がいない。

<モノの問題>
 新たな商品やサービスに繋がる地元企業や住民のニーズがあったとしても、それらを生産する設備やサービスを提供するインフラが不足している。

<カネの問題>
 地方の財源は限られており、新たに提供できそうな商品やサービスがあり、それらを提供できる仕組みが考えられたとしても、実行するまでに必要な資金・予算がない。
【「つるつる道路ナビゲーター」の示唆】

 今回の「つるつる道路ナビゲーター」は社会実験であり、商品やサービスの事業化とはまた観点が異なるが、そうであったとしても上記の問題に一石を投じていると筆者は思う。

<ヒトの問題への対応>
 名古屋や横浜等と違って秋田には地元に大手自動車メーカーが存在しない。その代わりにマツダやスバルといった中堅自動車メーカーが複数参加している。またテレトピア秋田など秋田の企業や復建技術コンサルタントといった近隣(宮城県)の企業が参加している。

 あくまで仮説に過ぎないが、大手自動車メーカーは既に大都市の支援を受けて独自にいくつかの社会実験を単独で実施中であり、秋田が声を掛けてもプロジェクトに参加する意義を見出しにくかったことだろう。逆に、マツダやスバルのように単独実験を行なえるほど経営資源が潤沢ではなく、本社所在地の財政基盤も強くない地方の中堅自動車メーカーが雪国秋田のプロジェクトに理解を示したとも考えられる。

 県内に大手自動車メーカーが 1 社もないという経済的な不利や、地理・気象条件面での不利を、逆に特定の自動車メーカーの色が付いていない中立性、都市や自動車メーカーの拠点では出来ない実験ができる特殊性という有利な材料に転換することに成功したともいえる。

<モノの問題への対応>
 この実験には特別な設備やインフラが必要とはされていない。必ずしも秋田に事業所を持つ必要もない。道路インフラと自動車はどこにでもあるし、車載IT デバイスと通信ネットワークさえあれば、車輪回転数や車体速度の解析などは秋田に設備や事業所を持たなくともできるだろう。

<カネの問題への対応>
 名古屋や横浜で行なわれている「プロファイル信号機」(交通量や車速を分析して信号機同士で情報交換を行い、各交差点ごとに最適な信号サイクルを決める信号機)の整備には約 3 億円を要するといわれるが、その費用は全て国費で負担されている。

 今回の「つるつる道路ナビゲーター」の資金源がどこであるかは明確ではないが、雪国の凍結路面での事故抑止・被害軽減は「世界一安全な道路交通」という国家目標と一致するテーマであり、国の予算が一円も出ていないとは考えにくいし、自動車メーカーや地元の企業・住民の理解・負担も得やすいと考えられる。

 また、今回は参加していないが例えば同じような交通環境にあると考えられる北海道や東北、北陸、山陰、山岳地方の各県などにも声を掛けて負担を下げていくことも可能と考えられる。
【おわりに】

 今回は秋田の「つるつる道路ナビゲーター」を取り上げて地方が新たな商品やサービスを開発する際の課題や解決方法について考えてきたが、誤解を恐れずに言えば、地方とは保有する資源の制約が大きく、新たな商品やサービスを開発することが難しいと考えられる人達の一例にすぎない。同じことは産業界の中でも経営資源全般に制約を抱える中小企業全般にも言えることである。

 例えば中小企業が新たな商品やサービスを開発しようとすれば、必要な人材<ヒト>が足りないという制約に直面する。

 秋田の事例に習えば、この問題を一社で解決しようとするのではなく、複数の企業・組織でコンソーシアムを組んで共同開発するという問題解決策が浮かんでくる。その際、誰に声を掛けるかであるが、業界のトップ企業は既に独自開発を進めている可能性が高いから、複数の業界中堅企業に声を掛けてみることを検討してみる価値があるというのが、秋田モデルからの示唆であろう。

 また、開発に必要な物的資源<モノ>が限られるという課題に対しても、極力汎用的な設備・インフラや地理的・規模的な制約が不利にならない設備・インフラの活用を検討してみるというのが秋田モデルからの教訓ではないかと思う。情報を商品として、その納品にインターネットを利用するようにすれば必ずしも全ての物理的設備を保有する必要がない。

 開発に必要な財政資源<カネ>が足りないという課題を抱える中小事業者も多い。だが、秋田のケースのように、行政の支援を活用するとか、同じような困りごとを持つ同業者とのアライアンスや大手企業に共同開発を提案することにより、資金の負担を減らすことができるのではないだろうか。

 ここまで見てきたとおり、商品・サービス開発にあたって経営資源の制約が課題になることは事実だが、やりたいこと・やるべきことが明確で説得力のあるものであれば、それを実現するための技術やチームを呼び集めることは可能であり、技術やチームワークによって課題が解決されることも多い。寧ろ、最大の難関は、適切な技術や共感してくれるチームメートを呼び集められるだけの明確で説得力のある商品やサービスのコンセプトを創り出すことが出来るかどうかに掛かっている。当たり前のことだが、今一度商品・サービス開発の原点に戻って再考してみる価値はあるように思う。

<宝来(加藤) 啓>

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