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コラム

原材料価格高騰が自動車流通業界に与える影響

◆自動車メーカー各社、新車の改良で装備を高級化し、価格を引き上げる動き

自動車メーカー各社は原材料価格の高騰をコスト削減では吸収しきれなくなってきたが、単純な値上げには踏み切れず、車の性能向上やカーナビを標準装備化するなど装備のグレードアップとセットで価格見直しを行い、「買い得感」を訴えている。今後は「あまり使われない装備は外していく」 (日産の志賀 COO)との検討も。

                    <2008年6月18日号掲載記事>

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【原材料価格の高騰によるコスト増】

 ご存知のように国内自動車市場を取り巻く環境は厳しい。国内販売台数は減少傾向にあり、販売車種も、相対的に利益率が低い小型車・軽自動車へのシフトが進んでいる。原油価格の高騰に伴い低燃費車へのニーズが高まり、更に小型車・軽自動車シフトが加速していくと考えられる。

 販売側での不調に加えて、製造側では原材料価格が高騰している。記事によれば、今年度の自動車用鋼材は、前年度より 3 割強高い 1 トン当たり 10 万円台となる見通しとあるから、1 トン当たり 2~ 3 万円のコスト増となり、仮に自動車が 1.5 トンの鉄の塊とすると、3 万円~ 4.5 万円のコスト増となる。

 先週の弊社本條の記事の通り、部品メーカーの営業利益率も減少に転ずる見込みであり、製造側での原価低減活動も限界に近づいていると考えられる。
【自動車メーカーによるオプション商品利益取込】

 そんな環境下で、コスト吸収力を高めるために、これまでオプション扱いだった機能・商品を標準装備とすることは、自動車メーカーにとって、一つの有効な施策だと考えられる。*

*ただし、オプション販売は、新車に付帯するディーラーの収益源の一つであり、それを奪うことにもなるので、マージン率やインセンティブの見直しなどディーラー・マネジメント全体を考慮しながら進めることが重要と考えるが、それは今回述べたい主旨ではないので、ここでは、その議論は割愛する

 新車購入時に、ディーラーでオプション装備される商品の代表例はカーナビやアルミホイール、ランプ、エアロパーツなどである。

 実際に、最近発売となった車種でも上級グレードになるほど、こうした機能・商品を標準装備化する傾向は顕著になっている。アルファードでは、上級グレードになると、フロントスポイラーやアルミホイール(インチアップ)などが標準装備化され、ティアナでは、カーナビ、キセノンヘッドランプ、アルミホイール(インチアップ)などが標準装備化、フリードでは、アルミホイール、プロント・リアスポイラーなどが標準装備化されている。

 今後、コスト吸収力を高める為に、ベースグレードでも装備の充実化が図られる。もしくはある程度装備を充実化させたグレードへの統一が進められる可能性がある。

 こうした標準化の候補となる商品群の中で、最有力と考えられるのがカーナビである。その理由は以下 2 つである。

(1)単価
 単価が高く(10~ 30 万円)、相応の粗利が見込まれるからである。
 カーナビを取り込んだ際の粗利額を試算してみたい。アフター市場での HDDカーナビ販売価格相場を 20 万円(工賃込み)、用品店・ディーラーの調達相場は 50 %(10 万円)、工賃を 1 万円と仮定すると、粗利は 9 万円となる。

 一方で、純正オプションのカーナビの販売価格相場は 30 万円程度(実際には値引きもある)。冒頭で述べたように顧客に「買い得感」が必要だから販売価格相場を アフター市場より安い 15 万円と仮定し、調達価格を用品・ディーラー同様と仮定(10 万円)とすると、5 万円くらいは粗利が残ると試算される。

(2)台数
 顧客からのニーズが高い一方で流通チャネルが多岐(純正装着、ディーラー・オプション、その他アフターマーケットプレイヤー)に渡り、取り込む余地があると見られるからである。

 平成 18年度の自動車部品出荷動向調査によれば、カーナビの国内向け出荷金額は 417,845 百万円であるが、この内、自動車メーカーの純正装着向けは 232,199 百万円と、カーナビ全出荷金額の 56 %に留まっている。
 カーナビを取り込んだ場合の粗利増加額は(1)で見たように 5 万円と原材料価格の高騰によるコスト増を、ある程度はカバーできる潜在能力を持つと思われる。
【部品メーカー(カーナビメーカー)の対応】

 それでは、オプション商品の標準化の動向をカーナビメーカーの立場に立って考えてみたい。

 自動車メーカーへの供給(純正装着分)は価格交渉が厳しく、かなりの低価格で供給していると思われる。一方で、これまで相対的に収益性の高かったアフター市場でも、販売台数の低迷や若者のクルマ離れなどにより用品業界全体が冷え込んでいる。また、販売価格 5 万円前後の PND (Potable NavigationDevice)の台頭により収益性の高い DVD ・ HDD カーナビ市場は縮小傾向にあると考えられる。

 更に言えば、商品サイクルが自動車は 4~ 5年、カーナビは 1年と異なるため、自動車のモデル末期には旧型のカーナビになりがちであるなど標準装備化に対応する難しさもある。

 しかしながら、自動車部品の平均営業利益率 5 %に比べれば、カーナビはまだ高い方だと思われるし、純正装着が増えることで、収益源を更に安定させることができると思われる。

 ただし、カーナビメーカー間での純正装着向けの価格競争が激化し、利益率は低下する可能性が高い。自動車メーカーの価格低減圧力も更に高まるはずである。今後、純正装着市場を巡る競争がより厳しくなるかもしれない。
【流通業界全体に与える可能性】

 これまではカーナビを例に説明してきたが、これはカーナビに限った話ではない。これまでディーラーオプションであったり、用品店チェーンでの販売が主流であったりした商品が、標準装備化する可能性があるからである。

 例えばホイール(とそれに伴うタイヤ)なども同様である。近年、ランフラットタイヤを採用する車種が徐々に増えてきている。ランフラットタイヤに欠かせないものがタイヤ空気圧センサであるが、表示系の観点から、標準装備(もしくはメーカーオプション)となるケースがほとんどである。

 タイヤやホイールを交換するにあたっても、センサ側の設定も変更する必要が生じる為、自動車メーカーの技術的バックアップを受けている正規ディーラーでの対応が必要になることがある。昨今の電子化の流れは、正規ディーラーへの対応を必然化させる影響も与えている。

 こうした流れが進むと、ディーラー以上に用品店チェーンの方が大きな影響を受ける可能性がある。用品市場自体が冷え込む中で、大手用品店チェーン各社は、自動車の買取・販売、車検・板金・その他整備など既存の用品販売市場から業務領域の拡大を進めているが、こうした動きが加速する可能性がある。

 更に、大手用品店チェーンの多角化が加速すると、買取チェーンや一般整備工場など、その他の業種にも影響が波及する可能性が高い。それぞれの市場で競争が激化したり、合従連衡が加速したりすることも予想される。

 原材料価格の高騰は、単にクルマの価格が上がるとか、部品メーカーの収益が低下するといっただけでなく、自動車流通業界に構造変化をもたらす可能性を秘めた問題だと考えている。

 各業界、各社の置かれている状況によって、取るべき戦略は変わってくるだろうが、いずれにおいても、危機感を持って対応策を先行させることが重要となるであろう。

<宝来(加藤) 啓>

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