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コラム

車種別の販売施策を展開するということ

◆日産、新型「フーガ」でハイブリッド仕様投入を視野に 1年の買い替えプラ

<2009年11月19日号掲載記事>

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【日産「フーガ」がフルモデルチェンジ】

日産のフラッグシップセダン「フーガ」がフルモデルチェンジをした。価格は 399 万円~ 550.2 万円で、販売目標は月販 800台とのことである。

日産の志賀 COO の「高い品質を保ちながら、安全と環境性能を併せ持った高級車の魅力を提供していく」という言葉が表すように、安全面や環境面で、様々な新機能が搭載されている。

例えば、安全面では、今のところ、インフラ側の整備が追いついておらず、機能を発揮することができないが、路車間通信により、音声ガイドとナビ画面表示で、ドライバーに交差点での様々な危険 (出会い頭衝突、一時停止規制見落とし、信号見落とし、赤信号停止車への追突) への注意を喚起する機能を備えている。

また、環境面では、これまで追突防止など安全面での役割が強かったレーダー制御を、ナビゲーションとの協調などにより、燃料カット頻度を増加させ、環境面での役割を強化している。燃費向上のための情報を足の裏からドライバーに伝える「ECO ペダル」なども導入されている。

【新型「フーガ」発売に合わせた販売面での施策】

加えて、新型「フーガ」の導入に合わせて、販売側でも、いくつかの施策が打ち出されている。

一つ目は、旧型「フーガ」の認定中古車制度の開始である。

認定基準は、走行距離 6 万キロ 未満の車両で、事故修復歴 (査定協会基準)がなく、外観傷や故障部位について補修・修復済みの状態となっている。

また、「エンジンリフレッシュ」、「エアコン洗浄」、「ウインドウ撥水フロント 3 ヶ月」の 3 つの商品をセットで実施する。そして、認定中古車には、2年間の無償保証が提供される。

一般に、認定中古車制度は、対象車両の流通を自社グループ内に取り込む効果があり、それは中古車価格を自社でコントロールできることに繋がる。

新型「フーガ」の販売という観点からは、旧型「フーガ」から新型「フーガ」へ買い替えを検討する顧客に対して、中古車価格のコントロールを前提に、相対的に条件の良い下取り価格を提案でき、新型「フーガ」への買い替えを促進することを狙ったものであろう。

そして、二つ目は、1年間のファイナンス・プログラムである。

来秋発売予定のハイブリッド仕様の新型「フーガ」購入希望者を対象に実施され、1年後の残価 80 %を保証するものだ。ローンとリースの双方で展開される。

本プログラムは、ハイブリッド仕様の発売を待つ顧客の買い控えや、先行してハイブリッド車を発売している他社への顧客流出を防止する効果があると考えられる。

しかも、単に防止するだけでなく、顧客に、新型とハイブリッド仕様の新型と 2 回新車を購入してもらうことが期待できる。

【販売施策が与える中古車への好影響】

1年間のファイナンス・プログラムが与える効果は、前述したような新車販売だけに留まらない。1年後に発生する新型「フーガ」の中古車を確保することができるからである。

ご存知のように、車両の残価は、新車購入からの期間に応じて、一定に下がるわけではない(※)。いわゆる「新車プレミアム」というものがあり、購入から間もない期間は、残価の下げ幅が大きく、一定期間を経過すると、残価の下がり方は緩やかになる。この新車から 1 回でも使用された時に下がる値幅のことを「新車プレミアム」という。

※車両の残価には、市況や流通台数、車のタイプ、走行距離、色など、様々な 要因が影響するが、ここでは期間(年式)に単純化させて頂いている。

つまり、顧客から見ると、新車購入から短期間で流通している中古車は、車両の状態と価格を比べて、割安に感じやすいことが一般的である。

現在、中古車市場においては、買い替えサイクルの長期化により、新車購入から一定期間が経過した中古車が増える中で、新車から短期間で流通する中古車は、品薄状態で、相場の高騰が続いているという。

中古車は、新車とは異なり、製造するものではなく、発生するものである。1年間のファイナンス・プログラムは、1年落ちの中古車という、もともと割安感が出やすい(売り易い)上に、人気が高まっている中古車を発生させることに繋がる。

【今回施策のチャレンジ】

今回の新型「フーガ」に関する一連の施策のメリットを述べてきたが、メリットばかりではないかもしれない。筆者はハイリスク・ハイリターンでチャレンジングな取り組みだと考えている。

一つ目は、ガソリンエンジン仕様とハイブリッド仕様の併売、及び、その投入順序である。実は、レクサスでも同様の事例があった。先行してガソリンエンジン仕様を投入し、その後、ハイブリッド仕様を投入した場合に、先行して投入したガソリンエンジン仕様の販売が激減し、ハイブリッド仕様に人気が集中してしまった。

勿論、ある程度のバランスが維持されることが望ましい。仮にハイブリッド仕様に人気が集中し、ガソリンエンジン仕様の新車在庫が滞留してしまうと、この新車の値引きを余儀なくされ、下取りすることになる認定中古車の価格にも影響を与えてしまうからである。

昨今のハイブリッド人気を考えれば、買い控えや顧客流出を防ぐ手段として有効だとは考えるが、ハイブリッド仕様の投入時の需要次第で、リスクがあることは想定すべきであろう。

二つ目は、1年後 80 %というの高い残価設定である。新車から短期で流通する中古車の相場が高まってるとはいえ、高めに設定する以上、残価を下回るリスクは否めない。また、残価を下回らないまでも、販社として残る中古車利益は限られたものになるかもしれない。

しかしながら、ハイブリッド仕様や高級車というセグメントに限らず、車種別(≒購買属性別)に販売施策を変えていくという手段は、今後もチャレンジしていく余地があると考える。車種別にその顧客特性を分析し、自社の商品に引き込む施策、より上級車種に買い替えサイクルを繋げていく施策や、買い替えサイクルを早める施策など、既成概念に囚われず、様々な切り口から、販売手法を再考してみても有効なのではないだろうか。

<宝来(加藤) 啓>

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