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コラム

国内販売における継続的な取り組み課題について考える

◆自工会、昨年後半には販売が前年を上回るようになり、最悪の状況は脱した

「エコカー補助金制度の 9月までの延長、エコカー減税の継続などの追い風を生かして自動車産業の活性化を進めたい」と青木会長。

<2010年01月06日号掲載記事>

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【新車販売の状況】

09年の国内販売台数は、08年の 5,082 千台から 473 千台減少し、4,609 千台となった。

年間合計台数は減少したが、月次で見ると、1月~ 8月までは 08年を下回る傾向が続いたものの、9月以降は 08年を上回る傾向で推移した。

09年 9月以降に 08年を上回る傾向で推移した背景としては、不況の底打ち感と相まって、いわゆるエコカー減税やスクラップ・インセンティブ制度の効果が出てきたものと考えられる。

10年も、エコカー減税の継続やスクラップ・インセンティブ制度の 10年 9月までの延長(まだ確定はしていない)が想定されており、一定の効果が期待されている。

スクラップ・インセンティブ制度は、補助金総額が約 3,700 億円と限りがあるものの、1月 7日時点の交付決定金額は 1,865 億円(次世代自動車新興センター発表)と、まだ半分程度は残っている。現在のペースであれば、補助金総額の限度に達して、スクラップ・インセンティブ制度が想定以上に早期終了してしまうことはなさそうである。

自工会では、上記のような効果を踏まえ、10年の販売台数を 4,798 千台(09年対比 189 千台増加)を見込む。

【今後も楽観できない新車販売】

10年の販売台数は 09年に対して微増で推移するという見込みに、手放しで喜んでいる業界関係者はいないであろう。

エコカー減税やスクラップ・インセンティブ制度は、需要の先食いが指摘されており、それらが終了した時に、反動で販売需要が減少することが懸念される。

また、08年秋に始まった世界的な経済環境の悪化は、底を打ったと言われているものの、現在も未だ不透明な状況が続いている。ただ、国内の販売台数は、経済環境の悪化以前から減少しており、仮に経済が回復したとしても、それが販売需要の回復に結びつくとは限らない。

中長期的には、需要減少の根底にある、顧客の「車離れ」や「所有から利用へ」といった価値観の変化や、少子高齢化など人口動態の変化にも対応していかなければならないだろう。

そうした課題を解決していくためには、業界全体として新たな取り組みも必要になるかと思うが、既存の取り組みの延長線上でも、まだできる事・余地があるのではないだろうか。以下では、そうした視点から、国内販売について考えてみたい。

【取り組み余地があると考える課題】

一つ目は、販売ネットワークの再編である。販社や拠点数の統廃合、間接業務の共有化など、ここ数年来、各社が取り組んではいるが、今後も、進められる余地はあるのではないだろうか。

改めて、自販連の統計数字を見てみると、全需は 04年から 08年の 5年間に、5,853 千台から 5,082 千台と 13 %減少した。一方で、販社数は、同 1,608 社から 1,393 社と 13 %減少したものの、顧客接点の中心となる販売拠点数は、16,607 拠点から 15,992 拠点と 4 %しか減少していない。

昨今、経済環境の悪化に伴い、想定以上に販売台数の落ち込みが進んだことにより、今一度、販売ネットワークの再編の目標から見直さざるを得なくなっているというのが、各メーカー・販社の実情ではないだろうか。

二つ目は、収益構造変化への対応である。09年の車種別販売台数の 1 位は「プリウス」となり、軽自動車を上回る販売を見せた。エコカー減税やスクラップ・インセンティブ制度の効果もあるが、ハイブリッド車人気の過熱といってよいだろう。

一方で、トヨタ系販社からは、以下のような声が聞こえてくる。

◆トヨタ販売店、利益幅が大きい高級車の顧客を「プリウス」が奪う問題「高級車が目的で販売店を訪れたユーザーも、エコカー減税などの影響で最終的には、お買い得のプリウスに流れてしまう」

◆「プリウス」は年配層が支持、トヨタの利益構造をも変える「大きな車を乗っている方はそれなりのプライド持っているが、プライドを捨てることなくボディーサイズを小さくすることが可能な車ということでプリウスが選ばれている」、クラウンなどからプリウスへのダウンサイジングで「利益構造が変わってきている」

<自動車ニュース&コラム 2010年 01月 11日号掲載記事>

あくまでも一部の記事であり、全体の傾向を示すものではないかもしれないが、必ずしもエコカー導入による買い替え需要の促進が、収益の増加に結びついてはいるとは限らない。

また、車種別販売台数の 2 位以降では、例年通り、軽自動車・小型車、ミニバンが中心となっている。ミニバンのトップはここ数年「セレナ」だったのが、今年は「フリード」となっており、ミニバンにおいても小型化傾向が進んでいると捉えられる。価格レンジの低い軽自動車・小型車は、相対的に新車販売の収益も低く、これも収益増加につながる環境とは言いにくい。

こうした状況を踏まえ、新車販売ではなく保有で儲ける「フローからストックへ」という収益構造の変革が言われて久しいが、より一層進めていかなければいけない状況になってきているはずである。

従来から、メンテナンスパックや延長保証など保有期間の収益を獲得する仕組みの導入は進んでいるが、既存の取り組みで対応余地があるものの一つとして、個人リースがあるのではないだろうか。

個人リースは、点検や車検など整備需要の取り込みや次回の買い替え機会を捉え易い商品として知られるが、ほとんど普及していないのが現状だ。

しかし、本メルマガの冒頭で紹介させて頂いた「新車が売れない時代に新車を売る方法」によれば、エース・オートリースがリースの仕組みを提供している東京日産では、個人客販売全体の内、現金が 45 %、ローンが 30 %、リースが 25 %だという。

一般に言われる、現金 70 %、ローン 30 %と比較して、明らかにリースの比率が高い。また、リースで販売した場合、付保率も 90 %近いと言い、保険という保有期間の収益も獲得できている。詳細は以下をご参照頂ければ幸いである。

「新車が売れない時代に新車を売る方法」

そして、改善余地のある既存の取り組みの三つ目として、従業員の生産性があるだろう。

例えば、自販連の調査によると、営業員一人当たりの新車直接(小売)販売台数の平均は、3.2台である。ご存知のとおり、あくまで平均であり、拠点や人員によるバラツキが多いであろう。

生産性のバラツキは、詰まるところ、店長の能力や個々の人間力の違いということはあるとしても、仕組みとして生産性を底上げする余地があると考える。その一つに、IT の更なる活用があるのではないだろうか。以前に本メルマガで長谷川が述べたように、インターネットで販売を完了させる取り組みや、登録関係の手続きを円滑にする IT インフラの整備などが考えられる。詳細は以下をご参照頂ければ幸いである。

「e が G を加速させる時代の自動車事業」

【継続的に課題に対応していく】

改善余地のある既存の取り組みとして、販売ネットワークの再編、収益構造の変革、労働生産性の向上について述べたが、どれも、一日にして成るものではない。

09年は、商品側では、ハイブリッド車が普及を始め、電気自動車の本格導入も始まり、販売・流通側でも、カーシェアリングに参入する事業者が相次ぐなど、新たな商品や流通の仕組みが脚光を浴びた年でもある。

更に言えば、少子高齢化社会を見据え、生活を補助するロボットや移動を支援する乗り物などの開発も進んでいる。今後、新たな商品や売り方、ビジネスモデルが登場してくるかもしれない。

そうだとしても、既存の自動車販売という業態がなくなることはないだろう。次の時代に対応できるリソースを生み出すという意味でも、足元の課題を継続的に解決していくことが重要だと考える。

<宝来(加藤) 啓>

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