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コラム

日系自動車メーカーの投資について考える

◆インドでの1月の国内新車販売、前年同月比50.2%増の24万1052台に

乗用車は 36.6 %増の 18 万 7605台と単月の販売では初めて 18 万台を超え、過去最多を記録。マルチ・スズキが 21.0 %増。タタ自動車は「ナノ」を 4001台出荷し、現代自動車を抜いて 2 位に浮上した。

<2010年02月11日号掲載記事>

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【新興国市場への積極的な投資】

新興国市場での好調な販売のニュースが紙面を賑わせている。それに合わせ、日系自動車メーカー各社も新興国市場への投資を進めている。

インド市場を例にとれば、先行しているマルチ・スズキはもちろんのこと、トヨタも、販売台数を 5~ 7年で倍増させ、現在の乗用車シェア 3 %を 10 %に高める計画を打ち出している。商品面では 10年末に低価格車「エティオス」を発売する予定で、販売面でも 10年末までにディーラーを現在の 98 店から150 店に拡大するとしている。

同様に、日産も、10年 5月にインドで、低価格車の発売を予定しており、ディーラーも現在の 7 店から 55 店に拡大する計画である。ホンダも 11年に低価格車を発売開始する予定である。

本格的な新興市場開拓のため、積極的に、新興国向けの新型車の開発やディーラー網の構築を行っている状況である。

【先進国市場でも必要な投資】

一方で、先進国市場の販売は、優遇税制やスクラップ・インセンティブなど政策面の要因はあるものの、09年末頃から、08年比を月次で上回る状況も見られ、販売台数の落ち込みの底は打ったと言われている。

実際、かねてからの主戦場である米国でも、09年 10月・ 11月とほぼ 昨年と同水準で推移し、09年 12月・ 10年 1月は昨年を上回る水準となっている。しかし、以前の 16~ 17 百万台といった水準まで回復するかは不透明な状況である。

回復のカギとなるのは環境対応車であり、各社が研究・開発を進めているのはご存知の通りである。

投資という面で考えると、従来からの工場の設備維持費や販売インセンティブなどに、環境対応という新規投資が加わったことになる。

【安定した利益の獲得が難しい中での投資】

ここで、事業ポートフォリオの観点から考えてみると、本来のあるべき姿としては、安定して利益を獲得できる既存事業を持ち、その利益を新規事業に投資していくのが理想系である。

事業は顧客や商品・サービス、流通経路など様々な要素の組み合わせから定義されるが、今回は、端的に事業を顧客≒市場と捉えると、日系自動車メーカーにとって、安定して利益を獲得できる既存事業とは米国・日本を中心とした先進国市場であり、新規事業とは中国・インドを始めとした新興国市場となるであろう。

しかしながら、米国市場は、前述したように、回復傾向にあるとはいえ落ち込んでいる状況である。また、環境対応車は、新たな投資が必要であり、現状で、安定して収益を獲得できる構造にあるとは言い難いだろう。

加えて、競争環境も厳しくなっている。特に、現代は、09年の IQS (初期品質調査)で 4 位と、トヨタ・ブランドの 6 位を上回る結果であり、品質で、日本車のお株を奪う躍進を見せている。(ちなみにレクサス・ブランドは 1 位)

また、自国の日本市場では、以前から販売台数の減少傾向が続いている。各社が発表している有価証券報告書では、日本市場は、一見、利益を出しているように見えるが、それに含まれている輸出の利益を取り除いたり、管理会計上で配賦される車両の開発・製造費を加味したりすれば、決して、安定して利益を獲得しているとは言い難い状況となるのではないだろうか。

更に、日本市場において、需要を牽引しているのは、環境対応車や小型車であるが、環境対応車は新たな投資が必要であるし、小型化は収益の圧迫要因となる。

つまり、本来、安定して利益を獲得すべき先進国市場で、利益を獲得することが難しい状況にある。寧ろ、環境対応車の開発のため、新たな投資が必要となっている。そして、その中で、更に新興国市場へ投資をしなければならない状況にある。

新興国市場への投資負担も重い。商品面では、先進国市場向けの車両を活用して訴求できる顧客層は限られており、各社が新興国向けの新たな低価格車を開発しているのは前述の通りである。

販売面でも、かつて日系メーカーが米国市場に進出した際には、ある程度の水準でディーラー設備や営業・サービス人員が存在したかと思うが、新興国市場では、自動車自体の普及がこれからという市場もあり、ディーラー網の構築や人員の教育など、ゼロからの投資も必要となる場面が想像される。

【投資に際して重要なこと】

安定した利益の獲得が難しい中ではあるが、競争が激化している新興国市場への投資は、スピードが重要ではないだろうか。

既に、新興国市場で日系自動車メーカーが、欧米や韓国の自動車メーカーの後塵を拝している市場もある。実際、中国市場での販売シェアは 1 位は VW、2位は現代、3 位は GM であるし、インド市場では 1 位はマルチ・スズキであるものの、2 位はタタ、3 位は現代となっている。

スピードを持って投資を実行していくためには、迅速な意思決定ができる組織・体制作りや、投資負担を軽減するためのアライアンスが必要なのではないだろうか。

アライアンスに関しては、日系メーカー同士が協業してのディーラー網構築や、自動車と同じく新興市場の開拓を目指す家電メーカーなど異業種との協業など、従来にはない枠組みでの検討も考えられるかもしれない。

一方で、先進国市場には、従来の商品や流通経路で訴求可能な顧客層(従来からの投資を維持することで訴求できる顧客層)と、従来以上の環境性能を持った商品が必要な顧客層(従来の投資に加えて新たな投資が必要な顧客層)の2 種類が混在していると思われる。
例えば、米国市場の回復は、どの程度まで進みそうなのか、消費者意識の変化によりセグメント構成は、どのように変わりそうなのか、まず先進国市場では、従来の商品で対応可能な需要と新たな商品での対応が求められる需要の見極めが重要だと考える。

09年の販売台数は、中国市場が米国市場を抜き一番となった。そのことが示すように、グローバルで需要構造が変化する時期を迎えている。次代の自動車業界で勝ち残るためには、ここ数年、どの市場で、どのようにリソースを配分するかがポイントになるのではないだろうか。

<宝来(加藤) 啓>

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