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コラム

アプリケーションの重要性について考える

◆韓国 CT & T 社の電気自動車「E-ZONE」、国内発売 3 カ月で成約は約 80台と好調

フレームを追加し、日本の衝突安全基準をクリア。本体価格は 174.8 万円から。国の補助金を受ければ 100 万円余りで済む。4月にはバンタイプも発売。

<2010年03月07日号掲載記事>

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【「E-ZONE」の標準パッケージ】

「E-ZONE」は、韓国のベンチャー企業が開発した電気自動車である。日本の法規に適用するよう、フレームを追加するなどの改良を進め、09年 11月に日本で販売を開始した。

日本での販売元は、車の品質検定を行う NPO 法人「日本自動車公正検定協会(略称ナフカ)」で、ナフカに加盟する整備工場が実際に販売を行い、10年内に全国で 500台の販売を目指すとのことである。

「E-ZONE」の車両価格は 174.8 万円~で、国の補助金を受ければ 100 万円程度の価格で購入することができる。

車両価格が低価格な一方で、蓄電池の性能維持のため 2 ヶ月に一度の定期メンテナンスが必要であるし、日本の衝突基準はクリアしているがエアバックやエアコンがオプションとなっている。

端的な例ではあるが、「E-ZONE」の標準パッケージとしては、電気自動車の導入を安価に実現することに注力し、一方、快適や安全に関する機能・性能は思い切って削減している。つまり、機能・性能に濃淡をつけた打ち出しとなっている。

【どのような戦略・狙いを車両に持たせるか】

先月発売したホンダの「CR-Z」は、同社が提供するインターナビのサービスに通信費が無料で接続できる仕様とした。車両価格に、ある程度の通信費を織り込んでいるのかもしれないが、従来より、快適に関する機能・性能を高める、濃淡で言えば「濃く」する標準パッケージとなっている。

「E-ZONE」や「CR-Z」などに見られる機能・性能の濃淡は、各社がどのような戦略・狙いを、その車両に持たせるかにより、変わってくるであろう。

「E-ZONE」は、初期費用を安くし、エントリーレベルを下げることに主眼があるように思われる。快適や安全に関する機能・性能は思い切って削減し価格を安くしていることや、蓄電池の性能維持のため 2 ヶ月に一度の定期メンテナンスが必要ということも、エントリーを下げ、ランニングで機能を保全しながら収益を獲得していく工夫とも捉えられる。

また、「E-ZONE」は営業用車として導入が進んでいるようである。営業用車としては、環境に配慮しているという CSR 的な観点や、快適や安全は思い切って削減しても許容範囲内ではないかなどが、訴求した結果かもしれない。10年 4月にはバンタイプも発売予定とのことである。

「CR-Z」は、インテリジェントでエコにも意識した新しい価値感のスポーツカーというコンセプトで開発された。コンセプトを具現化するための一つの手段として、インターナビへの接続を標準パッケージに含めたのかもしれない。

また、モデルチェンジの場合は、結果として車両価格が高く見えることに繋がりかねないが、ニューモデルであるため値段が上がったと顧客は捉え難く、導入し易いという側面もあるかもしれない。そもそも、台数を追求することが困難な国内において、台当たりの収益を追求していくチャレンジの一つとも捉えられる。

【アプリケーションの重要性】

前述したような「E-ZONE」や「CR-Z」の標準パッケージに関する議論は、車両の根幹部分に関する技術やものづくりノウハウ(広義のプラットフォーム)というより、どのようなアプリケーションを開発し、それらをどのように組み合わせて顧客に訴求していくかということだと捉えている。

そして業界課題の中で、特にアプリケーションの部分が重要となっているものもあると考えている。

異業種の例ではあるが、ソニーの「WALKMAN」とアップルの「iPod」で考えてみたい。携帯型のミュージックプレイヤーとして、かつては「WALKMAN」が主流であったが、現在は「iPod」が主流の状態にあるといっても過言ではないだろう。

そうなった原因が、筆者は音質やメモリー容量などミュージックプレイヤーとしての根幹に関わる部分にあるとは思っていない。周辺機能や操作性などアプリケーションの部分やマーケティングの部分にあったのではないだろうか。

自動車で考えてみると、例えば、ハイブリッド車や電気自動車など環境に関する根幹的な技術は、現在、日本がリードしている形になっているが、今後、アプリケーション部分での競争次第では、欧米陣に巻き返されてしまうことも否定できないのではないだろうか。

また、国内において、「車離れ」と言われて久しいがアプリケーション次第で新たな顧客層を獲得できるかもしれない。

実際、安全や快適に関する性能・機能を思い切って削減した「E-ZONE」の顧客は、「ぜいたくな仕様になれた日本人には物足りなさもあるが、違う乗り物と考えれば受け入れられる」とコメントしている。

それこそ、今や世界最大の自動車市場となった中国においても、内陸部を中心に型式認定を取得していない安価な車が多数走っているという。いわゆる「農民車」である。これは機能・性能を「淡」にしたアプローチの一つと考えられる。

ご存知の方もいるかもしれないが、日本でもこうした「農民車」が走っている地域がある。淡路島である。非公道車として活用されているようである。

淡路島の「農民車」は、安全に関して言えば、運転者は直接、外と接しており身を保護するものがない。しかし、主には農道を低速で走行するという用途を考えれば、安全性は、それで必要最低限の状態なのかもしれない。また、エンジンや車体は、用途に合うよう個別に組み合わせて改良されており、目新しい技術・部品があるわけではない。

「農民車」の例は、アプリケーション部分での工夫により、新たな顧客に訴求できる可能性があるということを示しているのではないだろうか。

【まとめ】

これまで、基本的には、自動車は、顧客が自動車の消費体験を積み重ね、消費体験を積み重ねた顧客が更に上を望むようになり、それにメーカーが応えていくという循環の中で進化してきた。

つまり、基本的には、各機能・性能を高める方向で進み、日本メーカーはそうした中で成功を勝ち取ってきたのではないだろうか。

今後も、環境・安全・快適などに関わる各機能・性能は高めていく必要があろう。しかし、国内における「車離れ」などを見ると、必ずしも、性能・機能を高める方向性だけが解決策ではないように思われる。あえて性能・機能を下げる方向性もあるのかもしれない。

性能・機能を考える上で、もちろん、自動車の根幹に関わる部分で技術やものづくりノウハウの革新が必要なこともあろうが、アプリケーション部分も重要であり、工夫していく必要があると考える。

<宝来(加藤) 啓>

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