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コラム

世界的な規模でものづくりの一貫性を保つためには

◆トヨタ、英国に「欧州グローバル生産推進センター」を設立。開所式を実施。

近年の急速に進む海外生産拡大に伴い、トヨタのモノづくりの考えやベストな技能をスピーディーに海外生産事業体に展開することが必要との考えから、日本に2003年7月、グローバル生産推進センター(GPC)を設立した。今回設立した「E-GPC」は、欧州各工場における生産部門現場のトレーナー育成を目的としている。受講者は平均約2週間程度の研修を受け、学んだノウハウや技能を各工場に持ち帰り、チームメンバーの育成に努める。投資額1630万ユーロ。

<2006年3月24日号掲載記事>

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昨今、日本の自動車業界の生産拠点が海外に急速に拡大するなかで、世界中のどこで製造しても同一の品質を保証することやそのために必要な人材育成を効率的に行うことがますます難しくなっている。

このような事態に対する施策の一つとして、トヨタ自動車では、2003年 7月に愛知県豊田市の元町工場内にグローバル生産推進センター(Global ProductionSuport Center、以下 GPC)を設立し、海外工場に派遣予定の日本人従業員や海外工場勤務の現地従業員に対して生産部門のトレーナーに必要なトヨタの経営理念やもの作りの技能に関する教育を行なってきた。教育を受けた従業員が GPCで学んだことをそれぞれの海外拠点で実践することでものづくりにおける技術レベルが世界的に一貫するようにしているとのことである。
これらの活動を一歩前進させるものとして、この度、英国の現地生産拠点であるトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ UK に GPC の出先機関を設立するとの報道があった。これまでタイや米国にも同様の出先機関が設立されており、GPC の出先機関としては世界で三つ目になる。

この出先機関はアジアと北米、欧州のそれぞれの地域におけるハブ(中枢基地)として機能するとのことである。今回のコラムでは、これらのハブ拠点の設置によってもたらされる効果と組織的な活動の重要性について考察する。

今回ハブ拠点を設置したことでいくつかの効果が期待されている。

1.ノウハウを海外拠点に迅速に伝えられること:

日本の GPC では一度に教育できる人数に限界があったが、教育場所(ハブ拠点)の増加、教育場所と生産拠点間の地理的な距離の縮小によって教育を受けることのできる人数や頻度を増やせるようになり、今後、海外拠点に対するノウハウの伝達効率がますます向上するものと思われる。

2.伝えたノウハウが定着しているかどうかフォローしやすくなること:

これまで、教育を施した結果、ノウハウが全世界の海外拠点にどれだけ定着したかという確認を日本の GPC が個別にフォローする必要があったと思われるが、今後、個別の海外拠点へのフォローはハブ拠点が行い、日本の GPC はハブ拠点の活動のみを集中的に管理すればよくなる。

そうすることで、世界各地に点在する海外拠点ひとつひとつに対してノウハウがどれだけ浸透したかをより簡単にモニタリングできるようになる。

3. ノウハウの標準化が効果的に行えるようになること:

これまで海外拠点は、どちらかというと日本の指導員の教育等を通じて、受身的にもの作りに関わる知見を深める状況に置かれていたことが多かった。しかし、ハブ拠点の設置後、それぞれの地域で指導的な役割を果たす必要が出てきたこともあり、これまでとは一転して、業務上の課題に対して強い問題意識を持つようになることが見込まれる。

その結果、日本の GPC に対しても主体的にノウハウ標準化のための新アイデア等の情報発信をするようになることが予想される。

上記の点から、アジアや北米、欧州のそれぞれの地域におけるハブ(中枢基地)に新たな役割を与えることで、ものづくりのノウハウに関する情報の伝達や教育結果のフォロー、ノウハウの標準化作業が今まで以上に効率的、効果的に行われるようになると思われ、GPC は日本に居ながらも、海外拠点の細部にまで影響力を維持したり、新標準を次々に打ち出したりすることができるのではないかと筆者は考えている。

その結果として、自動車メーカーの究極的な目標である「世界中のどこで製造しても同一の品質を保証すること」も非常に容易になっていくと思う。

しかしながら、アジアや北米、欧州のそれぞれの地域におけるハブ(中枢基地)を設置することにリスクがないわけではない。ハブに権限を委譲し過ぎると、地域固有の事情にのみ合うような独自のやり方をハブ自身が主張するようなこともあるものと思われる。その結果、日本の GPC はハブや海外拠点に対してコントロールが効かず、ハブごとの標準が乱立してしまう可能性もないわけではない。

このような状況に陥らないためにも、トヨタグループの新標準の承認や発信に関しては、引き続き日本の GPC が責任を持ち、経営理念やものづくりのノウハウが常に一貫したものになるようにある程度コントロールしていくことが必要と思われる。

とは言っても、アジアや北米、欧州の各地域で古くから生産活動を展開してきたタイや米国、英国の工場がもの造りの自力をつけてきたこの時期に地域の指導者として新たな役割を与えたことはタイミング的にも適切だったのではないか。

引き続き、海外拠点が世界的に拡大するなかで、グローバル組織としての組織力が自動車メーカーの競争環境に少なからずとも影響を与えるものと思うので、そのあたりの動向に注意しながら、自動車メーカーがどのように国際レベルで一貫したサービスを提供していくのかを見守っていきたい。

<カズノリ (加藤千典)>

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