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コラム

麦のエコ路地散策(3)  『グリーン電力証書』

昨今、新聞、雑誌、TV等で見かける環境用語を取り上げ、自動車業界との関係を探っていくコラムです。

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第3回 『グリーン電力証書』

【グリーン電力証書】

ご存知の読者も多いと思いますが、まずは『グリーン電力証書』について簡単に紹介いたします。

『グリーン電力証書』とは再生可能エネルギーによって発電された電力の環境付加価値を取引可能な証書にしたもので、日本自然エネルギー、自然エネルギー・コム等の発行専門会社が第三者機関であるグリーンエネルギー認証センターの認証を得て発行し取引されています。

例えば、ある企業が国内で太陽光発電事業を運営する際、電力会社に電力を販売する傍らで、クリーンエネルギーを発電しているという『環境付加価値』をグリーン電力証書という形で、環境意識の高い企業に販売できるというシステムです。

このシステムの長所としては、主に以下三点があります。

一点目は、自前のクリーン発電施設も持たない業者でも証書の購入を行う事で再生エネルギー普及に出資したことなり、企業の環境意識の高さを宣伝することが可能となります。

二点目は、カーボンオフセットと同様に商品に付加することが可能であり、グリーン電力付加商品として環境意識の高い消費者に売り出すことが可能となります。例えば、株式会社カウネットより期間限定で販売された、「グリーン電力証書付きコピー用紙」等があります。これはコピーをする際のコピー機の消費電力を算出し、相当分のグリーン電力証書を付加しています。その用紙を購入する事でグリーン電力によるコピーが可能となる仕組みです。
カーボンオフセットについて。

そして、最も魅力的であるといえる三点目の長所は、昨年末より発表された国内排出量取引制度にて炭素クレジットとしての利用が可能であるということです。

国内排出量取引制度について。

このように、グリーン電力証書は企業や製品のイメージ向上に繋がる他に排出量取引制度にも使えるという利点があります。取引される際の価格についても、国産でかつアピール性の高い炭素クレジットとしてプレミアム性を持ち、海外でのCO2 削減事業等で得られた炭素クレジットに対して3~5倍の価格で取引されています。グリーン電力証書の中でも、環境付加価値の高い太陽光発電のグリーン証書はその他の発電方法によるグリーン電力証書に対して高価格で取引されていて、太陽光発電によるグリーン電力証書は非常に高級な炭素クレジットとして取引されています。

一方で短所としては、グリーン電力証書の価格が証書の需給バランスによって変動するため、導入する発電事業者にとってリスクが大きくなることが挙げられています。

今後、グリーン電力の発電事業者の増加及び、国内企業に対する総排出量規制の厳格化にともない、このグリーン電力証書の取扱い量が増えることが見込まれています。

詳細は以下、日本自然エネルギーHPを参照。
http://www.natural-e.co.jp/green/how_about.html

【グリーン電力証書を活用した取り組み】

これらグリーン電力証書を活用し、個人の太陽光発電設備の導入を支援する取り組みが行われています。それが今年の 4月より東京都が始める太陽光発電設備の大型助成です。
東京都による大型助成の仕組みは次の通りです。

東京都環境整備公社にて10年分のグリーン電力証書等の炭素クレジットの譲渡を条件に、太陽発電設備を導入した都民に補助金を交付します。(実はこの制度には、グリーン電力証書の他に、グリーン熱証書もクレジットとして認められていますが、今回はグリーン電力証書のみに焦点を絞って説明します。)

これら補助額は統計データに基づいて、10年間の発電総量から電力会社に売電した総量を差し引いた、自家消費分の電力量で決まりますが、グリーン電力証書の発行は実際の発電量でなければならないので、補助を受けた都民は、年に一回、実際の太陽光発電による総発電量の検針を受けるとともに、電力会社への売電総量を公社に報告する義務を負います。

一方で公社は、報告された発電量を基に算出された炭素クレジットをグリーンエネルギー認証センターの認証を得て、グリーン電力証書として排出量取引に参加する企業に売却します。なお、この際に当初想定した発電量を下回っていた際、及びグリーン電力証書の価格が下落していた際は、東京都が負担する事になります。

要するに、この仕組みは都民が自宅に太陽光発電設備を取り付けてグリーン電力証書を発行して販売しようとした時に抱える、煩雑な手続き、小口な電力証書となってしまい販売が難しいといった問題を解決するために東京都が煩雑な手続きを請け負うとともに、複数から集まったグリーン電力証書を一括で企業に販売することを目的としています。

そしてさらに、将来得られるであろうグリーン電力証書を東京都が助成金として導入時に配布し、東京都がグリーン電力証書の価格変動リスクを負担することで都民の住宅への太陽光発電設備の導入を支援する取り組みとなっています。(補助額は 3kWの太陽光発電設備の導入で約30万円程度となる予定とのことです。)

この取り組みはグリーン電力証書を扱いづらい個人にその恩恵を受けやすくし、グリーン電力証書の本来の目的である再生可能エネルギーの普及活動を推し進めるものとして期待されています。

【自動車における取り組み可能性】

自動車においても同様な取り組みを行える可能性を筆者は感じています。

先日のデトロイトモーターショーで、トヨタ自動車より今年発売される新型プリウスの発表が行われました。新型プリウスは「ソーラーベンチレーションシステム」という屋根に取り付けられた太陽光発電パネルで発電された電力で、室内の換気に使われる電力を一部補う、画期的なシステムを搭載しています。

この太陽光パネルで発電された電力もグリーン電力証書として販売し、新型プリウス購入者の費用負担を減らすような仕組みを作ることができるのではないでしょうか。

例えば、東京都での取り組み同様に、自動車メーカーが購入時に新型プリウスが数年間で発電するであろう発電量を基に購入者にグリーン電力割引を実施、車検時や定期点検時に発電量を測定し、グリーン電力証書を発行し企業に販売又は自社の炭素クレジットとして活用するといった取り組みです。

自動車メーカーで将来の発電量やグリーン電力証書価格の変動リスクを負えないのであれば、車検や定期点検時にその時点での発電量やグリーン電力価格からその価値を算出し、車検や定期点検の費用を軽減するといったことも可能かと思われます。

いずれにしても、現時点では新型プリウスの屋根における発電能力は屋根の面積から 1kWにも満たないと思われ、購入者を惹きつけられるような価格メリットは見込めないでしょう。しかし、今後の太陽光パネルの発電効率の上昇、または国内での排出量取引の活性化にともなうグリーン電力証書の価格高騰によっては、将来的な選択肢として持っておいても良いのではと感じます。

【環境クレジットの活用】

自動車は原油という有限な資源を使用すること、CO2 を多く排出することから環境対応の取り組みが多く行われています。

現在、環境対応に対する取り組みは購入者や自動車メーカーに対して大きなコスト負担として圧しかかってきているのですが、グリーン電力証書のような世の中の仕組みをもっと活用し、そのコスト負担を少しでも減らすことはできないのでしょうか。

本来であれば、燃費が向上した分 CO2排出量も減っているので、炭素クレジットとして販売できれば良いのですが、実際に削減された CO2排出量の測定が困難であるため、現時点では難しいと言われています。

自動車メーカーの CO2削減努力が自動車の生き残りや環境対応製品としての魅力向上以外に、『環境付加価値』としても価値を認められ、その削減努力が別の形で取引されるものとなること、それが今後も自動車という製品が無理なく環境技術をまとっていく過程で大切になるのではないでしょうか。

<尾関 麦彦>

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