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コラム

クルマ離れと言われる若者の購入意欲を高めるための考察 『第2回 仲間意識を醸成するクルマ』

第 2 回 『仲間意識を醸成するクルマ』

【クルマの「費用」と「効果」】

最初に、今月 15日に配信した弊社メールマガジンにて実施した 1 クリック
アンケートの結果を再掲させて頂きたい。

<質問内容>
若者のクルマ離れが進んでいると騒がれていますが、若者男子のクルマ購入意
欲を高めるために、自動車メーカーが特に開発に注力すべきクルマはどのよう
なものと思いますか?

<結果>
1. 優れたデザインや社会的ステータスなど外観重視のクルマ
⇒  122名 (27%)

2. 街乗りやアウトドアなどライフスタイルの使用用途に合わせた使い勝手の
良いクルマ
⇒  117名 (26%)

3. パッシブ・セーフティ、アクティブ・セーフティに関する先進的な安全技
術が搭載されたクルマ
⇒  19名 (4%)

4. 価格が安く、維持費も掛からない(燃費が良い等)経済性に優れたクルマ
⇒  127名 (27%)

5. 少々コストが高くついても、カスタマイズ等で自分好みに出来るクルマ
⇒  75名 (16%)

質問に対する回答の選択肢は五つであるが、クルマに対する費用対効果に着
目し、「費用の軽減」を図るものと「効果の向上」を目指すものとに分類して
みる。

若者のクルマ離れの原因が、クルマに対する費用対効果のバランスが崩れて
いることだと仮定し、バランスを取り戻すために「費用の軽減」と「効果の向
上」のどちらの方が有効と考えられているか、というものである。

「費用の軽減」、つまり若者の購入意欲を高めるためには、クルマの価格を
下げるべきだという回答は、選択肢 4 がそれに該当する。

「効果の向上」、つまり若者の購入意欲を高めるためには、クルマの魅力を
高めるべきだという回答は、選択肢 1、2、3、5 が該当する。

結果を見てみると、圧倒的に「効果の向上」方向の回答の数が多い(選択肢の数自体が異なる点についてはご容赦頂きたい)。個別の回答で見ると、最も回答数が多かったのは、「費用の軽減」にあたる選択肢 4 の「経済性に優れたクルマ」(127 名)であるが、「効果の向上」にあたる選択肢 1 「外観を重視したクルマ」(122 名)や選択肢 2 「機能性を重視したクルマ」(117 名)も肉薄している。
【若者男子の購入意欲向上シリーズ】

クルマの価格(費用)が高いという意見があるのは事実である。たしかにクルマ自体は、生涯で不動産や生命保険に次いで高い買い物だと言う例えもあるし、保有・利用にあたっても、駐車場代・ガソリン代・保険料・税金等を考慮すると、若者男子の必需品である携帯電話、パソコン(インターネット)、ゲーム機に比べても割高である。

当然、クルマの価格や保有・利用に関わる費用を軽減できれば、今よりも若者男子の利用者・保有者が増えることは間違いないだろう。そのための施策として、低価格車の開発や月々の支払いを抑えるローン等の金融施策、利用に応じて費用負担できるレンタカー・カーシェアリングの利便性向上など、クルマの「費用の軽減」に対する取り組みは有効だと考える。

しかし、自動車業界に貢献したいと願う弊社としては、「費用の軽減」策だけでなく、「効果の向上」策を考えていきたい。クルマの魅力・付加価値を高めることで、若者男子の購入意欲を高めることもできるのではないかと考える。前述のアンケート結果の通り、読者の皆様にも、クルマの「効果の向上」に期待をかける方が多数いらっしゃると信じている。

前回のコラムで、筆者はクルマの魅力を高めるという観点から、若者男子が共通に持つ女性に「ウケたい・モテたい」という想いに目を付け、女性の「ウケる・モテる」男子像の変化を示した上で、その変化から考えられる現代の女性に「ウケる・モテるクルマ」は「オチがあるクルマ」であると提言した。

『クルマ離れと言われる若者男子の購入意欲を高めるための一考察』

今回も、前回とは異なる視点から、若者を取り巻く環境の変化を示した上で、その変化から考えられる「効果の向上」策を提言するという形で考えていきたい。
【コミュニケーションの変化】

最近の若者の傾向として、彼ら自身のコミュニケーションの変化を感じている。「U35」(35 歳未満)という分類では若者層に属する筆者も、20 代前半の若者と接すると、その変化を大きく感じることが多い。

現在の若者世代は、物心付いた時から携帯電話やメール、インターネットが普及しており、これらのツールを活用して、恋人、友人等とコミュニケーションを取ることが日常化している。

これらのツールはコミュニケーションの物理的な制約や時間的な制約を取り除いた。例えば犬の散歩をしながら携帯電話で「今、犬の散歩中」とメールをする。固定電話ではできないコミュニケーションだ。また、深夜にブログを書き込み、友人とその内容についてバーチャルでやり取りする。インターネットならではのコミュニケーションだ。

若者よりも上の世代も携帯電話やメールを使いこなす人は多い。ただ、何か伝えるべき用事がないと携帯電話やメールを使わない人がほとんどであるが、現在の若者世代は、何も伝える必要性はないのにコミュニケーションを行うところが決定的に違うと感じている。つまり、上の世代から見ると、理解できないような内容、時間、頻度でコミュニケーションを行う。何かを伝えるために、というよりは、自分と仲間の距離を維持するためにコミュニケーションするのである。

一方で、インターネット、特にミクシィに代表される SNS を通じて、これまで知り合うはずもなかった仲間を作り、コミュニティの拡張にも余念がない。

つまり極端な言い方をすれば、携帯電話やメール、インターネットの価値は、仲間作りや仲間との関係を維持するための物理的・時間的制約を取り除いたことにあり、その結果、現在の若者はいつでも仲間とコミュニケーションできる状態になり、言い方は悪いが、今や若者は仲間とのコミュニケーション中毒のような状態になっていると捉えることができる。
【仲間意識を醸成するクルマ】

仲間といつもコミュニケーションをしたいという若者の想いに応えることができれば、クルマの購入意欲を高めるこどができるのではないかというのが今回の仮説である。そこで、クルマができることが何かを考えてみたい。

例えば、クルマを運転している時でも、仲間とのコミュニケーションをサポートしてあげることができれば、若者男子が欲しがるものになりえるかもしれない。例えば、カーナビ上でマイミク(ミクシィ上の自分の友人)の位置がわかる、音声入力・出力機能を使って運転中にメールやミクシィができるなどが考えられる。

しかし、それはカーナビ(もしくはそういった電装系の部品)の購買動機になったとしても、クルマそのものの購買動機になるとは考え難い。

視点を変えてみると、クルマ自体が仲間になる、といったことも考えられるかもしれない。自律意識を持ち、会話できるクルマが登場したら「たまごっち」や「nintendogs (ニンテンドー DS で犬を飼うソフト)」といったペット的な感覚で、クルマに愛着を持ち、購入するような若者も出てくるような気がする。

しかしながら、そのクルマの自律意識による機能レベルにもよるが、友人のように会話が可能になるには、まだしばらく時間が掛かりそうである。現実的なところでは、カーナビの画面上で、アクセルやブレーキ操作などに応じて反応し、移動距離・時間によって成長するような「たまごっち」を飼うことができれば、そのカーナビ自体の購買意欲を高めることができるかもしれない。ただ、カーナビ画面に意識を集中させてしまう恐れがあり、運転中には脇見運転、停止中には過剰なアイドリング時間につながることが懸念され、簡単ではないかもしれない。
【まずはマーケティングから始めてみるべき】

前述の通り、仲間を醸成するクルマを考えることは現実的には難しい。しかし、クルマそのものではなく、クルマを通じたマーケティング面において、仲間作りや仲間との関係を維持するための機会を創造することが、クルマの購買意欲を高めることにつながるのではないだろうか。

例えば、以下の二つの例が考えられる。

1. ディーラーの営業マンを顧客の仲間にしてしまう
最近、ブログを導入するディーラーも増えてきている。営業マンの日常的な出来事・趣味などをブログ化していくことで、インターネット上で営業マンの友人・仲間ができつつある。

ディーラーの運営するブログで、「今週のお買い得車」「今月の新製品」「読者限定のキャンペーン」といった内容だと、クルマの購入意志がある人、もしくは既にクルマをそのディーラーで買った人しか集まらないかもしれない。それよりも、ディーラーの営業マンの個人的な趣味、生活環境を通じて、SNS に参加して仲間を作り、営業マン自身の人間関係を広げていく方が有効ではなかろうか。

以前の筆者メルマガで営業マンは「このクルマを手に入れると、お客様の生活はこんな風に変わりますよ」とか、「このクルマに乗ると、こんな楽しいことができますよ」というファンタジーを売るべきだと述べた。

『顧客接点でもっと仕事をしよう!』

つまり、「このクルマが安い」「このクルマは燃費が良い」といった情報も良いかもしれないが、それ以上に、クルマがもたらすファンタジー、すなわち、「クルマがもたらすメリット」「クルマが変える生活環境」「クルマが実現する将来の夢」などを売り込むべきである。

そのためには、売りたいクルマを好きなってもらう前に、営業マン自身の人間性を気に入ってもらうことが有効なはずである。だからこそ、SNS 等を活用して、営業マンの友人・仲間を増やすことが効果的ではないだろうか。
2. 仲間を作る機会、仲間との関係を維持する機会をつくる

顧客向けにイベントを企画するディーラーも増えてきている。ツーリングを楽しむ会、食事を楽しむ会、音楽を楽しむ会、などである。

こうしたイベントはオーナーズクラブという形で、既存顧客を囲い込むために実施されることが多い。

しかし、既存客だけではなく、純粋にそのイベントに興味をある人に広げてはどうだろうか。

ブログや SNS などのネットを通じて、現在クルマを持っていない人でも、同じ趣味・嗜好を持った人は集められる。共通の趣味・嗜好を持つ仲間が集まる中で、友人を作り仲間意識を醸成し、友人が持っているから、友人が良いと薦めていたから、クルマを買おうという意識を持ってもらえないだろうか。

例えば都内でワインを楽しむイベントを数回行い、仲間意識を醸成し、秋にブドウ狩り・ワイン作りツアーを開催する。その際、ツーリングに行き、クルマがあると便利だなと感じさせる、という具合である。

他にも育児教室を開催して妊婦や幼児の母を集め、仲間意識を醸成し、クルマがあると子供が急病になった時に助かるなどという体験談を仲間内で共有し、購入意欲高めるという方法も考えられる。

売り込みたい営業マンからクルマのメリットを聞くよりも、仲間と一緒に利便性を体感したり、体験談を聞いた方が説得力があるのではないだろうか。
今回は若者のいつも仲間とコミュニケーションしたいという想いに目を付けて考えてきた。仲間というクローズドな空間であるが、一端、仲間に入ってしまえば、そこでは濃密なコミュニケーションがあり、購入意欲を高める機会も出てくると思う。クルマという商品だけではなく、若者がどこで、どのような仲間を作っているか、若者の行動パターンを考慮してマーケティングの面でクルマの魅力を伝えることにより購入意欲を高められる可能性があるのではないだろうか。

<宝来(加藤) 啓>

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