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山田 将生 執筆記事
 
 
 
自動車業界と××業界を比較し、製品、業界間の関連性や類似点・相違点から
自動車業界への示唆を探るこのコラム。弊社副社長の秋山喬とアビームコンサ
ルティング経営戦略事業部シニアコンサルタント山田将生の共同執筆です。

第 3 回の今回は、「自動車業界とアパレル業界」です。

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【はじめに】
 第 3 回目となったこのコラムだが、趣旨を説明すると、自動車業界と他業界
とを比較し、製品、業界間の関連性や製品特性、業界構造、CSF (Critical
Success Factor=重要成功要因) 等に関する類似点・相違点を把握。最終的に
は他業界との比較から見えてくる自動車業界への示唆を導き出そうとするもの
である。

 コラム自体の構成もそれに基づいたものとなっているが、製品特性、業界構
造、CSF に関してはセットで類似点・相違点を把握する。というのも、まず、
どんな企業でも業界でも顧客が価値を感じ、料金を支払う製品、サービスが最
初にあり、その特性が業界構造を形作る大きな主要因になるという考え方がベー
スにある。そしてそれらがひいては業界の CSF を決めることとなる。

 第 3 回の今回はアパレル業界との比較である。アパレル業界の製品としては
衣料品が該当するわけだが、ここではアパレル業界の川上にあたる繊維業界も
範囲に含めて衣料品のバリューチェーンと自動車のバリューチェーンという観
点から比較を行いたいと思う。


【製品、業界間の関連性】
 まず川上の繊維業界を見てみると、東レ、帝人、三菱レイヨン、東洋妨といっ
たメーカーからは自動車業界へ産業繊維が納入されている。繊維業界は 90年代
から続いたリストラが一段落ついた状態であるが、衣料用の繊維が復権したと
は言いがたく、自動車等に用いられる産業繊維が成長を牽引しているのが実情
である。

 納入された産業繊維はシート、天井、マット、エアバッグ等の内装品の原材
料となる。今後は自動車の環境対応という方向性に基づき、より環境にやさし
く、リサイクルしやすい産業繊維が求められていくものと思われる。

 また、川下に目を移すと衣料品にせよ自動車にせよ、どちらも人々のライフ
スタイルを形作る商品という共通点があり、実際、あるマーケットセグメント
のライフサイクルを語る際に「×××の服を着て、自動車は×××に乗る」と
いった言われ方がなされることも多い。そのため、アパレル業界と自動車業界
の販売時のコラボレーションはよく見受けられるものとなっており、アルマー
ニとメルセデス・ベンツなどお互いのブランドの相乗効果を目指すケースが多
い。


【製品特性、業界構造、CSFの類似点・相違点】
 ここでは自動車業界とアパレル業界、それぞれの製品特性を比較し、それが
業界構造や CSF にどう関連しているのかを考察してみることとする。

 <製品に求められる要素の違い>
 まず衣料品はファッション性が主に求められるが、自動車は機能性とファッ
ション性の両立が求められるという大きな違いがある。この違いはそれ以外の
製品特性や業界構造、CSFの違い等の根本的な原因となるものである。

 ファッション性が求められる衣料品の場合は販売、マーケティング(商品企
画含む)の機能がその他の機能に比べて相対的に非常に重要になり CSF ともな
っているが、機能性とファッション性の両立が求められる自動車は設計開発、
製造の機能も販売、マーケティングの機能と同等、それ以上に重要なものにな
る。簡単に言ってしまえば自動車のほうが作るのが難しいということである。

 従来のアパレル業界の構造を見てみると、製造卸商であるアパレルメーカー
が業界をコントロールし、商品企画を行った上で、調達、製造、販売をコーデ
ィネートするという図式であった。製造に関しては一部自社生産を行っていると
ころもあるが、ほとんどのメーカーが生産を海外協力工場に委託している。ま
た販売に関しては百貨店、量販店、専門店等の小売店が一般消費者への販売を
行っていた。

 バリューチェーンの中心となるアパレルメーカーが力を持つという砂時計型
の業界構造は自動車業界と類似しているものの、相違点としてはアパレルメー
カーは自動車メーカーほど集約されていないし、サプライヤーの系列化もなさ
れていないということが挙げられる。この違いも根本的な原因は製造の難易度
が比較的低いという衣料品の製品特性によるものと思われる。

 そして、衣料品の製品特性を考えると、作るという機能を外部に委託し、ア
パレルメーカーの果たす機能が商品企画中心になるというのは必然であるとい
えるが、それは小売店との境界線を曖昧にする結果となった。

 そう考えると、ユニクロや各種セレクトショップといった小売店がプライベー
トブランドによる商品開発を進め、企画、生産、販売を一体化する、いわゆる
SPA (Specialty store retailer of Praivate label Apparel の略;製造販売
小売業の意)という業態が出現してきて、従来の業界構造が崩れてきたのもい
わば必然であり、元をたどれば販売、マーケティング機能が重視されるという
衣料品の製品特性に基づくものである。

 SPA 化した小売店は近年、顧客を囲いこむ CRM 的な試みを始めており、ます
ますバリューチェーン内での立場を強化しつつある。それに対抗するようにア
パレルメーカーでも直営の店舗を設置したり、ショッピングセンター内に出展
したりとアパレルメーカー発の SPA 化を進めており、川下へのシフトが著しい。

 このようにアパレル業界では川下を押さえた企業が立場を強めつつあるが、
この傾向は成熟した市場においてファッション性が求められる製品であれば必
ず直面する宿命ともいえるものである。


 <製品におけるソフトな部分の占める割合の違い>
 そのファッション性の高さゆえ衣料品の場合は、製品においてソフトな部分
の占める割合が必然的に大きくなり、消費者が購入を決断する上でイメージや
ブランドが重要な要素となる。

 特に海外の高級ブランドなどは販売チャネルのほぼ全てを直営とするなど、
製品の販売のされ方といった部分には非常に気を使っており、その考え方、手
法は先ごろ日本市場に投入されたレクサスでも大いに参考にされた。

 現在、ブランドという要素は自動車業界でも非常に注目されており、今後も
ブランド力強化に向けた取り組みがなされていくことだろう。

 衣料品ではブランド古着というカテゴリーが存在し、高級ブランドの古着が
一般的な製品の新品より高い値段で売買されているが、これは中古価格がブラ
ンド力を反映するということであり、自動車業界においてブランド力が中古車
のリセールバリューに表れるという考え方と同じである。

 ただし、衣料品の場合ソフトな部分が大きいため、ブランドもデザインや歴
史、販売のされ方といった主にソフトな部分に基づいて形成されることになる
が、自動車の場合は機能性が高いため、自動車の機能に基づくブランド形成も
当然選択肢に入ってくる。例えば走行性能を意図的に高めることで、スポー
ティーなブランドイメージの確立を狙うといったことが該当する。

 前述したように自動車業界においては、今後ブランド力強化の動きが盛んにな
ってくるだろうが、一概にブランド力強化というだけでなく、製品、企業のど
ういった要素に準拠したどういったイメージのブランドを目指すのかは明確に
していく必要があるだろう。


 <製品ライフサイクルの違い>
 衣料品の場合、売れ行きが流行に左右され、他の流通業と比べても、製品ラ
イフサイクルが異常に短い。そのため在庫過多になる危険性を常にはらんでい
る。

 それに対応するためのアパレル業界版 SCM ともいうべきものがクイックレス
ポンスである。クイックレスポンスとは製品のリードタイムを短縮、市場ニー
ズに素早く対応すること、そしてそのための仕組みを構築することであり、前
述した SPA 化を行うためには必須ともいえる。

 自動車業界の場合、如何に企業内における無駄を取り除くかという発想から
SCM の原点とも言うべき、JIT やカンバン方式が生み出されたが、クイックレ
スポンスの場合は如何に移り変わりの速い消費者に対応するか、という発想か
ら始まっており、スタート地点がより消費者視点に立ったものとなっている。

 近年、自動車業界においても、消費者の多様なニーズに答えつつ、且つその
対応も迅速に行おうという試みがなされており、三菱自動車の COLT 販売時に
採用されたカスタマー・フリー・チョイスなどはその代表的なものといえるだ
ろう。

 市場が成熟化するにつれ、マーケット、ニーズが細分化するのは避けること
のできない環境の変化である。そういった細分化されたニーズに対してもいか
に迅速に対応するかということは今後、自動車業界でも重要となってくると思
われる。


【自動車業界への示唆】
 これまでの考察から自動車業界への示唆としてはどのようなものが得られる
であろうか。

 やはりアパレル業界からは、マーケットニーズの把握やブランドの強化等、
マーケットを向いた取り組みに関し、示唆が多いと思われる。自動車業界にお
いてもマーケット重視、ブランド強化は広く言われているが、それらは掛け声
だけでなくそのための仕組みが整備される必要があり、そういった観点からい
くつか方向性を述べてみたい。

 まず、アパレル業界では現場の販売員の声を重視し、そこから消費者のニー
ズを吸い上げるということが日常的に行われている。翻って自動車業界の場合、
新車ディーラーのディーラーマンレベルからニーズを吸い上げる仕組みが整備
されているとは言いがたい。現在、日本国内においても投資対効果の観点から
メーカー系列のディーラーが少なくなってきている傾向にあるが、販売の最前
線から消費者のニーズ、意見が吸い上げづらくなるというデミリットは考慮さ
れる必要がある。

 また、アパレルなどでは最前線の販売の現場が、カリスマ店員に代表される
ような流行発信基地になっておりライフスタイル等消費者への提案の場ともな
っている。自動車業界においてもトヨタのメガウェブ、日産のカレスト等、各
自動車メーカーがアンテナショップ的な試みを行っているものの、消費者に対
する提案といった面では、より効果的に行う余地があるように思う。

 他方、社内の組織体制に関しても参考になる面がある。アパレル業界の場合、
ブランドを重視する姿勢が社内体制にも反映され、基本的にはブランド別の組
織となっており、製造といった機能がそれぞれのブランド別の組織の中にある
ケースも存在する。自動車業界ではレクサス導入において初めてトヨタがブラ
ンド別組織を立ち上げたが、今後、ブランドを重視していくのであれば、そう
いった社内の組織体制の変革も検討していく必要があると思われる。

 最後にアパレル業界のクイックレスポンスからも示唆が得られるだろう。自
動車業界においてはサプライチェーンの効率化は他業界と比較しても、相当程
度進んでいるが、それを更に一段高めて、消費者のニーズに柔軟に対応できる
ものにしていく必要がある。

 自動車業界ではサプライチェーンの前工程にあたる開発サイクルの短縮化も
進んでいるため、あとはいかに正確、且つ迅速に消費者ニーズを把握する仕組
みを構築するかが鍵となると考える。

                        <秋山 喬>
                        <山田 将生>
 
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