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寺澤 寧史 執筆記事
 
 
 
国内製造業の屋台骨たる自動車産業。国内 11 社の自動車メーカーの動向は毎
日紙面を賑わしている。

しかし、消費者にとって、より身近な存在であるはずの自動車流通業界のプレー
ヤーについては、あまり多く知られていないのも事実である。

群雄割拠の国内の自動車流通・サービス市場において活躍する会社・人物を、
この業界に精通する第一人者として業界内外で知られる寺澤寧史が、知られ
ざる事実とともに紹介する。

第 7 回は、自動車解体事業を行うカースチールを紹介する。

第7回『カースチール』

 読者の皆さんが現在保有している車を処分する時に、どのような流通経路を
辿って最終処分場まで搬入されるかご存知であろうか。
 読者の多くの方は、新車買い替えの際に下取り車としてディーラーに引き取
ってもらう(1 万円程度の処分費用を支払う)というケースが圧倒的に多く、
その後の処分のことは 、 全く承知していないという方が多いのではないだろう
か。

 2005年 1月より自動車リサイクル法が施行となり、拡大生産者責任のもとで、
自動車リサイクル費用は自動車を保有するユーザーが負うこととなり、既に各
自動車メーカーからリサイクル料金の発表がなされたことは、周知の事実であ
る。

 そこで、この自動車リサイクルの支柱的役割を担う自動車解体事業者につい
て簡単に触れておきたい。

 そもそも自動車解体事業は、日雇い人夫や廃品回収業を生業として生計を立
てていた人達が、1960年代以降の自動車市場の急成長に伴う廃車の増加で大量
に発生する鉄くずの有価性に目をつけ市場参入し始め、次第に業として発展し
てきたものである。
 もとより資本力のない個人事業で始まった自動車解体事業者は、現在でも近
代的な設備のない事業者も多く、劣悪な環境下で専ら手作業で資源回収や環境
保全を確保するという重要な役割を最底辺で支えているのが実態である。

 現在の自動車解体事業を概観しておくと、市場参入事業者は 4,000 とも 5,
000 社ともいわれている。前述した通り、その事業規模は小規模事業者が多く、
従業員 3〜 4 名、解体車両数 100〜 200台 /月、台あたり収益 3〜 5 万円で
年間に排出される使用済み自動車の公式な数値はないものの、おおよそ 500 万
台程度と見られていることから、2,000 億円程度の市場規模と推計されている。

<カースチールについて>

 さて、今回紹介するのは、こうした市場環境下で活躍する群馬県前橋にある
カースチールである。

 同社は、1970年に群馬県内の新車ディーラー 17 社の総意に基づいて設立さ
れた自動車解体事業者で、従業員数 69 名(役員 16 名)、自動車解体処理台
数 2.5 万台、売上高約 9 億円で、群馬県内の使用済み自動車総台数の 25 %
程度を扱う、全国的にみても大手自動車解体事業者の一角である。

 設立までの経緯を簡単に説明しておくと、当時の群馬日産自動車の社長であ
った天野丈夫氏が県内の新車ディーラーに呼びかけ県内全ディーラーが参加し
てスタートした。

 その時に掲げられたスローガンは以下の 2 つ。

 「自分達で販売した車両は、自分達の手で回収する責任がある」

 「日本は資源の乏しい国だから、資源を有効に再利用する必要がある」

<カースチールの先見性>

 今でこそ拡大生産者責任が叫ばれ大手資本の参入が相次ぐ自動車解体事業で
あるが、廃棄物リサイクル法の流れを先取りしたケースとして、1970年当時に
そのような見解を示していたことは大いに評価されてもいいのではないだろう
か。事実、来年 1月に自動車リサイクル法が施行されるが、同社では、法制化
される前からフロン回収装置への設備投資を行い、毎年約 2 万台にも及ぶフロ
ン回収・破壊処理を自主的に行なってきた。

 全国でも自主的な取り組みとしてフロンの破壊処理まで行なっている自動車
解体事業者は極めて少なく、自動車解体事業に伴う環境保全に同社がいかに、
力を入れてきたかが窺い知れよう。

 その結果、1999年にリサイクル事業推進の功労として通産大臣賞、群馬県環
境功労賞を受賞。2002年にはオゾン層保護大賞、環境大臣賞を相次いで受賞し
ており、環境に配慮した適正処理を遂行している自動車解体工場として全国的
に注目されている。

<ビジネスを規定する環境とその打破方法>

 上述の通り、もともと同社は群馬県内の全新車ディーラー参画型で事業を開
始していることもあり、

1.仕入ルートが主に県内に限定されている(言い換えれば、県内使用済み自動
  車の確保が保証される)反面、販売エリアも県内中心となってしまう。
2.ディーラーからの下取り車(主に低年式車)が中心で付加価値を生み出しに
  くい。

という事業構造となっていた。

 そこで1980年代以降に採用した戦略は、以下2つである。

1.海外輸出への注力
  元々の販売エリアである国内の一つの県から、海外へと販路を拡大。
  他の自動車解体事業者に先駆けて 1983年より中古自動車部品の輸出事業
  を開始、その後本格的に中古部品の海外輸出に力を注ぎ、現在では海外輸
  出売上げ比率が約 5 割となっている。

2.素材販売から部品販売へ
  より高付加価値を追求する為に、素材単位ではなく部品単位での販売に移
  行。発足当時からしばらくは、鉄・アルミなどの金属資源価格が高値安定
  していたこともあり、素材リサイクル部品販売が売上約 7 割と柱となって
  いたが、円高、バブル崩壊などの外部要因による鉄スクラップなどの市況
  暴落もあったことから、いち早く素材リサイクル品販売からリサイクル部
  品(中古部品)販売への転換を図った。

<更なる取り組み>

 更に、自社のコスト競争力を維持するため、同社は旧式設備への独自の改良
を行うことにより設備投資を徹底して極小化している。

 事実、最近の同業他社の解体設備と見比べると旧式なものばかりであり一見
冴えない解体工場であるのは事実だが、各種液抜き工程、搬送工程、解体車両
のプレス工程に至まで全従業員の設備改善提案が生かされた創意工夫のかたま
りの工場となっている。

 鈴木専務曰く、
「寺澤さんね、確かにカースチールの工場は、よそと比べると見劣りするのは
仕方ないと思っている。設備にかける金がないんだもの。だけどね、一つ一つ
を見てよ。全て従業員が使いやすいようにちょっとした工夫をしていてね。購
入した機材そのままで使っているものは、 皆無じゃないかな。」


 同社は、自動車解体事業の先駆的モデルとして、同業者や政府関係者の視察
も多い。また自分の使用していた自動車がどのような工程を経て解体され、環
境保全がなされているのかを実感するためにも、一見の価値ありと思われる。

 今後も同社の自動車解体事業の先進的な取り組みに期待したい。

                        <寺澤 寧史>

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