日頃、新聞、雑誌、TV等で見かける財務用語の中でも、自動車業界にも関係が
深いものを取り上げ、わかりやすく説明を行っていくコラムです。
第17回の今回は、種類株式についてです。
種類株式とは、利益・利息の配当、残余財産の分配、株式の買受け、利益に
よる株式の消却、議決権の行使できる事項等、普通株式とは異なる権利内容を
持つ株式のことである。
従来は利益の配当や残余財産の分配などについて内容の異なる株式の発行し
か認められていなかったが平成 14年 4月の商法改正によって、一部の議決権
を制限、付与するなどが可能になり、多様化が進んでいる。
法整備が進んだこともあり、昨今では導入されるケースが散見されるように
なり、買収の防衛手法の一つとしてメディアでもとりあげられている。
種類株式導入の背景として、以下が挙げられる。
1.大企業の資金調達の方法を多様化させる為。
特に経営の再建などの局面において資金調達する際に種類株式を活用す
るケースが多い。これは普通株式で資金援助するよりもリスクをミニマイ
ズし、経営への関与度合いを柔軟に検討したい、という資金を出す企業の
要求に応えたもの。
2.ベンチャー企業などの新規企業への出資方法を多様化させる為
通常、アーリーステージのベンチャー企業は、資本金が小さい。このベ
ンチャー企業が事業規模拡大の為に資金を必要とし、資金調達を行った場
合、調達する資金の方が資本金を上回ってしまう為、経営者兼オーナーが
筆頭株主でなくなってしまう。このようなケースにおいて経営者兼オーナ
ーが容易に資金調達したいというニーズに応えたもの。
では、種類株式ではどのような権利が限定、付与できるのだろうか。
先ず種類株式は普通株式のように常に議決権を伴うものではない。議決権が
無い種類株式を選択することは可能である。
一方、以下のような権利などを付与することも可能だ。
1.優先的利益配当請求権
普通株式を保有する株主よりも優先的に配当を受けることができる権利
2.償還請求権
対象会社に株式を買い取るよう請求する権利
3.普通株式への転換権
普通株式への転換をある一定の比率で行う権利。強制的に転換すること条
項とする事も可能。
4.拒否権
経営上の決定事項について種類株主総会決議事項とすることで拒否権を持
つことができる。
5.残余財産分配請求権
普通株式を保有する株主より優先して一定額を請求できる権利。
これらの権利を投資する際の方針や対象会社の状況に応じて設計することで
種類株式として機能するようになる。
実際の例を、上の1.〜5.に準じて見てみよう。
三菱自動車は昨年 6月に種類株式を発行している。
この中で第1回A種優先株式の概要は以下のようになっている。なお、当該優先
株式には議決権は無い。
1.優先的利益配当請求権
平成 21年 3月期までは無配だが、それ以降は、5 万円の優先配当が受領で
きる。
2.償還請求権
三菱自動車はいつでも種類株式を買い取り、消却することができる。
3.普通株式への転換権
平成 17年 10月 1日から平成 26年 6月 10日まで転換請求が可能。
なお、上記の期間中に転換請求がなされなければ、普通株式に強制的に転
換される。
4.拒否権
特に設定無し。
5. 残余財産の分配
1 株につき、1 百万円の残余財産分配請求権がある。
ご覧の通り株主のリスクをミニマイズするよう、償還請求権や残余財産分配
請求権などが設定されている一方、議決権と種類株主として経営上の拒否権は
設定されておらず、経営面の影響力行使に関する事項は織り込まれていないこと
が解る。
これは、三菱自動車の6月の経営状態からリスクをミニマイズする必要性が
あったことと、経営面については再生委員会などで影響力を及ぼすことを想定
しており、再生委員会と種類株主双方で2重で同様の権利を持つ意味が無いと判
断したものと考えられる。
一方、ベンチャー企業に出資する場合には、一般的に優先配当や残余財産分配
などの権利より、拒否権など経営上のチェック機能が重視される。これは、ベン
チャー投資の場合、起業家・オーナー経営者が顧客への価値提供に注力する傍ら
で、出資者であるVCやファンドはこれをモニターしながら適切な経営を指南する
役割を担うことが多いこと、及び投資家はそもそも配当による収益より、上場
するまでの経営サポートにより、上場時のキャピタルゲインによる収益を期待す
るからだ。
このように種類株式の設計は企業の状況・経営者の必要性や、投資家の意向
などが強く反映されるものである。
よって必要性に基づく設計を誤れば、上手く機能せず、場合によっては経営に
悪影響を及ぼす可能性さえあると言える。
即ち資金調達、もしくは資金拠出の方法は法整備され多様化しているが、その
根源に存在する目的・趣旨が大事であり、経営の基本的な姿勢という面で株主と
経営者が合意する必要があることは従来と何も変わっていない。
投資家や経営者にとっては、策に溺れ「目的」を忘れて「手段」を弄ぶこと
ことなく、複数の手法を最適な形で組み合わせることで目的を達成することが
重要であろう。
<篠崎 暁>
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