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大谷 信貴 執筆記事
 
 
 
『キッズコーナーという集客装置の活用』

◆国内販社、再編の加速。国内市場は買い替え需要の減速のなかで長期の低落
 傾向が急速に進み、販社のチャネル再編に繋がってきている。


<日刊自動車新聞 2006年06月24日掲載記事>

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【ディーラーの顧客獲得競争】

 今年度より自動車メーカー主導による国内販売チャネル再編が本格化してい
る。クルマの国内需要が今後数年に亘り停滞する見通しである為、不採算店舗
の統廃合や店舗のリロケーション等により、集客力の向上と販売の効率化を図
るためである。

 上記施策と並行して、ディーラー店舗では来店型販売強化に向けた施策が行
われている。例えば、トヨタの販売チャネル毎の VI 統一や店舗ファシリティ
の新装、日産とホンダの販売チャネル統合と店舗改装、他サービス産業(ホテ
ルや百貨店等)の接客ノウハウ導入などが挙げられる。

 また店舗内部においても、顧客サービス強化の店作りが進んでいる。例えば、
明るい店内と清潔なフロアで居心地の良さと快適性を訴求したり、従来、店舗
の大部分を展示車両が占有していたが商談や待合いの場を拡大したり、PC を使
ったビジュアルプレゼンテーションで色やオプション装着時の姿を確認できる
ようにしている。

 自動車メーカーはお客様に 1 人でも多く来店して頂くための販売網を整備し、
ディーラーは来店されたお客様をもてなす環境を整備するという連携プレーで
顧客を囲い込み、限られたパイの中での市場シェア獲得競争に打ち勝とうとし
ている。


【集客装置の導入】

 上記の如く、自動車メーカーはディーラー店舗における来店型販売を推進す
ることで顧客獲得増を狙っているわけだが、業界間の顧客獲得競争が激しい小
売業界、飲食業界では集客装置が重要視されていることに着目したい。

 集客装置の例を下記にていくつか紹介する。

 ・百貨店の顔となる 1 階部分を占有する高級ブランド
 ・百貨店の屋上に天然芝を敷き詰めたドッグガーデン
 ・都市型ショッピングビルへの有名飲食店の出店
 ・SC やショッピングモールにあるフードテーマパーク
 ・GMS にある大型キッズパーク

 その集客装置を設置することで店舗が得られる効果は下記の 3 点である。

 ●集客数の増加
 本来の目的である買い物+アルファの付加価値をもたらし、集客数を上げる
 効果がある。

 ●客単価のアップ
 来店後の滞在時間を長くすることにより、客単価をアップさせる効果がある。

 ●来店リピート率のアップ
 訪問目的が増えることで一人当たりの来店回数を増加させる効果がある。

 ダイハツのカフェプロジェクトは自社ディーラーにおけるお菓子や飲物の提
供を前面に打ち出すことで来店促進の効果を狙っており、ディーラー店舗にお
ける上記取り組み事例の 1 つであるといえる。

 しかし、このような取組みはディーラーではまだ少なく、大多数の店舗で飲
物の提供やキッズコーナーを設置していても、集客装置としての機能を果たし
ているわけではない。

 例えば、ディーラーのキッズコーナーは各店舗が独自に市販のおもちゃを購
入し設置しているのが一般的である。店内の広さに限度があるので、その程度
で構わないのかもしれないが、他店との差別化を図るための集客装置として活
用できる方法もあるのではないだろうか。

 以下 にて、1 部のディーラーで採用されている事例と異業種における事例を
紹介したい。


【付加価値の高いキッズコーナー】

 先日、筆者はディーラー店舗の約 200 社へレンタルキッズコーナーを販売し
ている株式会社イケヤの池谷社長の話を聞く機会があった。

 イケヤの「Little TREE」(以下 LT)は 4 ヶ月毎に商品を交換するメンテ
ナンス付きのレンタル商品である。商品は 130 種に及ぶデザインの木製パネル
で構成されており、設置する広さに応じて組み合わせることが出来る。また、
その素材は建築で使用される国産シナ材を使用し、染料や接着材は天然素材原
料のものを使用するなど、子供への安全面、衛生面を考慮している。
(Little TREE の URL は右記の通り http://www.littletree-co.com/)

 池谷社長によると、LT は狭いスペースということを逆手にとって、動の遊び
ではなく静の遊びをする環境を子供に与える特別な機能を持つという。

 同伴した子供が精神的に落ち着くことで、親は安心して商談に集中できるた
め、成約率を上げる効果を狙っているのである。

 また、4 ヶ月毎にキッズコーナーはリニューアルされるため、次に行ったら
どんなおもちゃがあるのかな ? という期待感を子供に与えることが出来るので、
親が子をディーラーに連れて行くための理由付けに一役買うことが出来る。

 一方、ディーラー店舗としても LT の持つ環境や子供の健康面への負荷を最
小限にする物作りは、自動車メーカーの環境対策と通じるものがあるのでイメー
ジ戦略として有効だろう。

 標準モデルとなる 3畳タイプのセットで月額 37,800 円であるが、上記の機
能及びサービスを踏まえれば、店側としても高い顧客満足の獲得が期待でき有
益と思われる。


【キッズコーナーとカフェの複合体】
 
 また、別の事例では、大人の楽しむ場所と子供が楽しむ場所を共有すること
で集客効果を挙げている。

 東京 / 西葛西にスキップキッズというキッズカフェがある。180 uの店内は
立体遊具やポールプールから成るキッズスペースと 70 席の飲食スペースで構
成されている。

 この店舗が出来たきっかけは、「親も子供も一緒に楽しむことができる場所
が少ない」、「アミューズメント施設では子供は楽しめても親はゆっくり出来
ない」というリサーチ結果を元に「子供が遊べて、親も安心して自分の楽しむ
時間を持つことが出来る場所の提供」という基本コンセプトを持ってスタート
している。

 同店の 1 ヶ月当たりの平均利用客数は 5,000 人以上、1 組当たりの単価は
カフェの収入とキッズスペースの利用料金(1時間 /250 円、以降 30分ごとに
100 円)で 2,200 円となっている。子供を遊ばせる目的や、カフェを飲む目的、
食事をする目的など 1 週間に複数回来店する客も多く、予想以上の売上をあげ
ているという。


【家族が行きたくなる場所へ】

 スキップキッズが示すような親が楽しむ場所、子供が楽しむ場所を融合させ
るという視点は重要と思われる。

 ディーラーにおいて、本来の来店目的であるクルマ関連以外で顧客の来店回
数が増えれば、顧客 DB を更新する機会を増やすことに繋がり、買い替えのア
プローチをタイミングよく行うことが可能となる。

 また、店舗内での居心地が良ければ来店後の滞在時間も長くなり、顧客が時
間を要するために敬遠しがちであるサービス入庫を誘引することに繋がるもの
と考える。

 子供連れファミリーの行動は、子供の意見が優先されるという。飲食業では、
ファミリー層をターゲットとする神戸屋、牛角、安楽亭などでキッズコーナー
の併設も一部で導入されており、キッズコーナーを集客装置として活用してい
る良い事例であろう。

 クルマを購入する意思決定はドライバーだけで出来ることではなくなってい
る。クルマのような高額な商品を購入する際には、家計を握る奥様の意見も強
くなるであろうし、決定するまで何度も店に足を運ぶためには子供の了解も必
要となる。つまり、購入を決定させるためには家族全員のニーズを満たす必要
があるのではないだろうか。

 その上でも、家族全員がまた来たくなるような店舗を作ることは、販売競争
に打ち勝つ上で有効と思うのである。

<大谷 信貴>





 
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