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大谷 信貴 執筆記事
 
 
 
『店舗で“見せる”企業理念』

◆富士重工、3年間で最大 600 億円をかけ、国内販売店舗の改築・改装へ
専売店の 3〜 4 割に投資し、店舗の展示スペースを拡大、外装を統一仕様に

<2006年01月15日号掲載記事>

◆出光興産、給油所などのロゴマークを刷新。創業 95 周年で、新たな VI を
 導入

 髪をなびかせているギリシャ神話の太陽神を模した「アポロマーク」の形状
 を従来の円形から楕円形に変更、走り出すイメージを強調した。併用する 
ロゴタイプには、英文の下に赤ラインが入った現代的な英文のロゴを採用。
 約 50 億円を投じて、3月から 2年間で全 5000 ヶ所の給油所をリフォーム
する。計画している株式上場も見据え、ビジュアルアイデンティティー
(VI) 導入へ

                  <2006年01月18日号掲載記事>

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 富士重工業は 2006年度から 3年間で最大 600 億円を国内の 546 あるディー
ラー店の 30〜 40% に投じ、店舗の改築・改装を実施する。従来の店舗投資額
の 2 倍以上に当たり、2007年以降の主力車種の一斉改良を視野に入れ、店舗の
大型化等も計画。また、老朽化している店舗が多く存在する地方のディーラー
を中心に移転・改築を行う。店舗の外装を統一仕様にする他、展示新車台数を
増やすため、展示スペースを拡大する。

 昨年末に日本の 3 大自動車メーカーである、トヨタ、日産、ホンダが相次い
で発表した国内販売網の再構築への大型投資は中位メーカーへも波及し、日本
の自動車販売網は今年から再編期に突入することになる。

 各社の発表している内容と現在のディーラー店舗数は以下の通りである。

・トヨタ(全店舗数:4,911 店舗)
 約 3,400 店舗ある「トヨタ」「トヨペット」「カローラ」の 3 系列全店舗
 の一斉改装に 1,000 億円を投資予定。系列毎の専用色で看板、内外装を統一
 する。

・日産(全店舗数:3,013 店舗)
 従来店舗比 2〜3 倍の 2,000 m2程度の広さを持つ、郊外型大型店舗を神奈川
 県などで 5〜10 店新設予定。
 10台以上の常設展示ショールームで集客力を高め、店頭販売を中心とする。

・ホンダ(全店舗数:2,410 店舗)
 2006年 3月に既存の 3 系列ディーラーを統一。1 店舗当たりの投資額は土地
 代を除き約 3 億円の見込み。

・スズキ(全店舗数:1,991 店舗)
 軽自動車を販売する直営ディーラー約 600 店舗にショールーム拡大等の改装
 費用として約600億円を投資予定。

・ダイハツ(全店舗数:684 店舗)
 2009年度までに直営ディーラー店舗の改装に約 700 億円を投資する計画。

    ※各社のディーラー店舗数(出所:2005年自動車年鑑)


 2005年の新車販売台数(軽自動車は除く)はほぼ前年と同じ 396 万台が見込
まれており、国内市場の限られたパイを各社が獲得するための競争力強化策を
打ち出したものといえる。

 国内ディーラー網の再編の目的は、店舗統合によるコスト削減、及び効率の
良い販売による売上アップを達成し収益性を高めることであるが、同時に店舗
改装等を実施することで、ステークホルダーの関心や、従業員のモチベーショ
ンを高める「コーポレート・ブランディング」を強化しているようである。


【コーポレート・ブランディングについて】

 コーポレート・ブランディングとは各企業が同業他社と差別化を図る為に、
何がしかの象徴になることをいう。例えば、業界内における品質の高さ、革新
性、高潔さ、安心感、親しみなどである。

 コーポレート・ブランディングを構築する要素は、テーマ、キャッチフレー
ズ、グラフィックス、ロゴ、シンボルカラー、広告費等であり、消費者やステー
クホルダーに対し好ましい企業イメージを形成する必要がある。

    (出所:コトラーのマーケティング・コンセプト 東洋経済新報社)

 通常、ブランドは、大きく分けて 2 つの価値をバランスよく普遍的に顧客に
提供することで成立している。商品の性能、革新性、取り扱い易さ等の商品自
体の持つ実用的価値と、ユーザーの嗜好や価値観等の顧客の心に訴求する感情
的価値である。実用価値は顧客がその製品自体を使用することで享受されるも
のであり、ディーラーという販売店舗で構築されるものは後者になると考える。


【視覚から訴求するコーポレート・アイデンティティー】

 今回のディーラー網への投資目的の 1 つとして、コーポレート・アイデンテ
ィティ(CI)の強化が各社発表から読み取れる。

 CI とは、直訳すると「企業理念」ということになるが、その派生であるロゴ
マークや企業イメージ統一等の戦略を指すことが一般的である。

 店頭や雑誌媒体等で直接視覚に入るモノを通じて CI を訴求することをビジ
ュアル・アイデンティティー(VI)と呼び、デザイン、色、形、見え方(2 次
元、3 次元)等を駆使して、正確にステークホルダーに企業理念を伝えること
を目的としている。

 例えば、出光興産は石油・エネルギー事業の象徴「アポロマーク」をリニュー
アルすることで、過去とは一線を画す意思決定を表現し、同社が今後進む方向
性「先進性」「期待感」などのメッセージをステークホルダーに訴求している。
また同時に全国 SS のスタッフのユニフォームをリニューアルすることで、従
業員のモチベーションをも高める効果を生み出している。

 ちなみに、新しいロゴ、マークに込められたメッセージは「お客様に街の安
心感と活力をお伝えし、ご来店頂いたお客様に満足頂ける SS」であるが、ブラ
ンドを強調する赤、街との調和と安心感を醸し出すグレーで構成されており、
店舗の内外装も同じコンセプトによりリニューアルされる。

 上記の如く、単にシンボルマークを決めるだけのことではなく、企業理念を
基本として決定したシンボルロゴ、カラーをマネージし、ユニフォーム、名札、
車両、オフィス机、コップ、紙、鉛筆に至るところまで使用することで、コー
ポレート・アイデンティティーの社内外への浸透及び、顧客からの信用力、安
心感等を高める効果があるのである。

 他業界で成功している代表例では、コーヒーストアを全国 551 店舗に展開
(2005年 3月末)しているスターバックスが挙げられる。同社の展開は基本的
に直営店舗であり、店舗規模は様々であるが、CI を巧みに表現した店舗設計、
ショップロゴ、ハウスカラーで一目で認識できる VI を構成している。コーヒー
はどこのコーヒーストアで飲んでも大差を感じるものでは無いと思うものの、
スターバックスの店舗を見つけると何故か安心感を覚えると共に、足が向いて
しまうのは VI に潜む「見えない価値」を無意識に認識しているからに違いな
いであろう。


【見せることの大切さ】

 また、店舗で「見せる」ということでは、少しでも多くの車種を展示するこ
とを目的として店舗が大型化することにも注目したい。

 昨年、レクサスブランドで発売となった SC は、ソアラからの移行であるた
め、当初の販売予想は低いものであったが、月販 100台の予算に対し、毎月 30
〜 50 %アップの実績で推移している。

 その理由は、ソアラ時代は車両を展示している店舗は少なく、特定顧客にし
か売れない商品との先入観からパンフレットで対応していたケースが多かった
ためだと言う。商売の基本として、お客様がお店に何をしにくるのかというこ
とを改めて考えさせられたとの弁が、レクサス店舗の GM より上がっている。

 上記の意見が反映され、大型店舗の新設になったか定かではないが、ただク
ルマを店舗に置けば良いということでは無いと筆者は考える。VI のように企業
の意図を何らかの形に表現して、相手に伝達することは店舗では可能である。

 商品を店舗でプレゼンテーションすることは正に現場スタッフの腕の見せど
ころであるのではないだろうか。例えば、異業種の小売り店舗では MD (マー
チャンダイジング)が組まれ、売りたい商品が効率良く売れるように陳列され
ている。百貨店業界で都内最大規模の集客力を誇る新宿伊勢丹では、VMD (ビ
ジュアル・マーチャンダイジング)が高く評価されている。VMD とは商品を陳
列するだけでなく、曜日、時間、天気等の外的要因も踏まえ、陳列場所や照明
を変更し、商品をより売れるように魅了的に顧客に見せるものである。

 各社が横並びで変革をしていく以上、他社との差別化は必要であり、上記の
一例のような異業種のノウハウを用いることも顧客獲得効果を生むための有効
な手段と考えても良いのではないだろうか。


【現場における整合性が重要】

 自社のコーポレート・アイデンティティーに対する正確な認識を持つことは
従業員全員に求められる。何故ならば、CI や VI はあくまで顧客に企業理念を
掲示する術であり、実際に顧客と相対する現場スタッフが一貫性を持って顧客
に対応しなければ、効果は最大化できないからである。

 既に多くの小売店で活用されている CI、VI の導入効果を最大化させる為に
は、消費者行動が多様化している現代だからこそ、店舗現場において異業種か
ら学べることは多いのではないかと考えている。

                      <大谷 信貴>


 
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