弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルテ
ィング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るま
で、さまざまな角度から提案していく。
アビームコンサルティング ウェブサイト
http://www.abeam.com/jp/
第 2 弾は、アビームコンサルティング戦略ビジネス事業部の松村芳道マネージ
ャー/荒木甲和マネージャーが、CRM を4週に渡って紹介する。今回はその第
3 回にあたる。
第2弾『CRMの課題(3)』
(日刊工業新聞 2004年06月24日掲載記事)
アフターマーケットへの対応がうまくできない自動車業界。一方で近年、乗
用車の購入顧客層は様変わりし、新車販売の取り組みも大きく変わってきてい
る。今後あるべきアフターマーケット像について問題提起するとともに、CRM
(顧客情報管理)を生かせる 1 つのアイデアを提示してみたい。
アフターマーケットといえば修理や点検などのサービス、補修・追加パーツ
など販売した耐久消費財の価値の維持・向上需要を指す。自動車ディーラーの
場合、一般的に車検や定期点検などの入庫サービスのほか、部品・用品が販売
されている。もちろん、これらはカー用品店でも売られており、むしろその手
のアフターマーケット専業プレーヤーのほうが価格面でも品ぞろえでも魅力的
なサービスを提供している。
ディーラーにとって、アフターマーケット収益による固定費カバー率が経営
の安定性の評価指標にもなっていることもあり、サービス・用品は「高い」の
が現状だ。
一方で、新車販売の様相は一変している。日本自動車工業会の調査によれば、
主運転者の 4 割近くは女性となり、4 割以上が 50 歳以上となった。乗用車へ
の期待は「足代わり」もしくは「仲間同士・家族でのレジャー」が大半で、新
車登録台数を見ても大半がコンパクトカーとレクリエーション・ビークル(R
V)である。
このような状況において自動車メーカーはクルマを通じて、ライフスタイル
を提案・訴求するようになった。たとえば CM も主役はクルマではなく、子供
をサイクリングに連れていく母親であったり、泥だらけでクルマに戻ってくる
スポーツマンといった「人」へと変わっている。消費者はこのライフスタイル
に共感し、購入するわけだ。
自動車メーカーが売り出しているものが乗用車自体からライフスタイルへと
変わっているとしたとき、アフターマーケットはどうあるべきだろうか。ライ
フスタイルに共感して購入した顧客は、購入後においても共感したライフスタ
イルの延長線上にあるニーズを持っているはずだろう。しかし、現状はメーカー
がライフスタイルを提案するのは新車の販売時点までであり、購入した途端に
オーナーが共感したライフスタイルを実現するための提案は一切なされなくな
り、代わりに来るのはメンテナンスやタイヤ販売の提案だけなのである。
自動車メーカーが訴求するものがライフスタイルへと変化しつつある現在、
アフターマーケットはどうあるべきか。ライフスタイルに共感して購入した顧
客は、購入後においてもそのニーズを抱き続ける。しかし現状は、メーカーが
提案できるのは新車販売時点までで、購入した途端にオーナーが共感したライ
フスタイルを実現するための提案は一切されない。
新車が提案するライフスタイルをデザインする際に、あるべきアフターマー
ケットまで含めた長期的な視点で、ビジネスモデルを考える余地がある。そこ
にはアパレルブランドやスポーツ用品、家具メーカーなど多くの異業種との提
携も盛り込まれるはずだ。
たとえば神奈川トヨタ自動車の本社ビル「myx (マイクス)」。マイクスで
は乗用車だけでなく、アウトドアグッズ、ファッション、フィッシング、自転
車、カーアクセサリーなどを総合的に取り扱っている。また、福祉車両のフロ
アでも、高齢者や身体の不自由な方々へ向けた介護用品の紹介や高齢者レジャ
ー・スポーツの提案をするなど、次なるディーラー像を示している。
あるべきアフターマーケット像を追求することは、アフターマーケット専業
プレーヤーとの明確な差別化を意味する。旧態依然のサービスでは、既納客の
来店機会を増やすことは難しい。ディーラーを定期的に「コンセプトを共有す
るさまざまなアイテムのクロスセリングの場」とすることは、顧客の来店動機
になると同時に、集客力向上にもつながるはずだ。
<松村 芳道/荒木 甲和> |