自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸
田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。
【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカー
を経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画
などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た
発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。
著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある
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第50回 『あてになるのは・・・』
「空いた時間にパソコンでお仕事!初心者でも大丈夫。」とのお誘い。在宅
ワークとか、SOHO といったカッコイイことばに憧れて話に乗ると、さあタイヘ
ン。仕事を受注するために高額な教材を買わされ、そのあとは仕事の紹介はな
く、オシマイ。こんな内職商法という悪徳商法にひっかからないようにと、テ
レビで特集をやっていた。
その特集では、いくつかの注意をまとめていたが、その一つはそんな広告が
どこに掲載されているかだと言っていた。つまり、そんな広告の周りには怪し
い商法が掲載されている。たとえば、「他所で断られたどこからも借りられな
い人、大丈夫です」といった高利貸しや「未経験でも高給優遇、カンタンな仕
事、日払い OK」と言ったいかがわしい商売の求人などが並んでいる。
確かに冷静に考えれば、オカシナ広告であることはカンタンに分かる。他所
でダメなのに、貸してくれるの?未経験者に高給?継続的に働いて欲しいのに、
日払い? そんな広告と並んでいれば、怪しいと考えるべきだ。
もっとも、こうした分かりやすい広告やキャッチフレーズならば、カンタン
だ。しかし、敵もサルもの、引っかく者。そんなあやしさを巧妙にカモフラー
ジュしている会社も少なくない。会社の名前もカタカナでカッコイイ。ビジネ
ス街の高層ビルに入り、有名タレントを使った広告を展開し、インターネット
なども巧みに使っている。しかも、グラフィックデザイナー、ウェッブデザイ
ナー、インテリアデザイナー、それも結構な能力を持った専門家たち関わって
いるのだから、いかがわしい匂いをかぎとるのは難しい。そのため、カモとな
る客、いや、その会社の社員でさえも、まともな会社や商品だと思い込んでし
まうのだから、デザインって責任が大きい仕事だ。
そんなことを考えていたときに思い出したのが、ある飲み屋のオバチャンだ。
彼女はお客たちが振り回す流行り言葉を翻訳してくれる。「リストラ」は「ガ
ラガラポン」。「目標管理」は「ノルマ」。「成果主義」は「馬の鼻先にぶら
下げたニンジン」といった風にだ。そんなクールなものの見方ができるのはオ
バチャンがお客の勤めている会社の大きさや知名度、あるいは身なりなどをあ
てにしていないからだ。彼女が冷静に見ているのはお客が地に足のついたまと
もな話をしているかどうかと、帰り際の払いっぷりだけ。そんな本質を見抜こ
うとする冷静さを大切にしておかないと、弱みがあるとき、焦っているとき、
欲張ったとき、私たち生活者は悪徳プランナーや悪徳デザイナーたちにカンタ
ンにだまされてしまうだろう。
<岸田 能和>
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