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 岸田 能和 執筆記事
 
 
 
自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸
田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカー
を経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画
などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た
発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。
著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある

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第36回 『継続は力なり、だが・・・』


 ものづくりの世界にいると、職人、達人、名人などと呼ばれる人に出会う。
たとえば、大きなトラックを改造するときには、鉄でできた車体の骨組みをガ
スバーナーで切断したり、別の鉄骨を溶接して取り付けたりする。そのため、
いかに分厚い鉄でも、ガスバーナーや溶接の熱によってねじれてしまう。もち
ろん、叩いて修正できるような代物ではない。そんなとき、名人が登場する。
素人からすれば「なんでそんなところに?」と思う場所を名人がガスバーナー
であぶり、その熱の力で変形させる。そうして、ねじれていたところをもとの
形に戻す。名人に言わせるとこれを「お灸をすえる」というのだからカッコイ
イ。こうした名人を支えているのは永年の経験で培ってきた技術、勘である。
まさに「継続は力なり」である。

 こうした職人や名人の世界は別として、商品開発で、「継続する」ことはな
かなか難しい。売れないとすぐに商品を引っ込めて、別のものを出す。それで
も、売れないと、さらに別のものを。たまに、ヒット商品が出ると、もっと売
れるようにと、同じようなものを矢継ぎ早に出していく。すると、市場にあふ
れて、ユーザー達は飽きてしまい、あっと言う間に市場から退場する。超大ヒ
ット商品であっても、しばらく経つと、メーカーの倉庫やお店のどこを探して
も全く見つからなくなるというのは珍しくない。こうした構造があるからこそ、
景気が悪い中でもデザイナーや商品企画の連中が忙しく働かせていただくこと
ができるので、ありがたい(!)限りだ。ただ、たまには「継続」について考
えることも大事なはずだ。

 ただ、そこでは、継続が力になることはあっても、必ずしも力によって継続
ができないことを、よくよく胆に銘じておくべきだろう。長い歴史を持ち、誰
でも知っているというブランド力、販売力、資金力、宣伝力、そんな力が強大
であればあるほど、ユーザーも一瞬は心を惹かれるが、すぐにさめてしまう。
それでも、現実には、あふれんばかりの広告やブランドに頼った力まかせの商
品開発や市場戦略が目立っている。

 しかし、彼女を口説くときのことを思い出して見ると良い。力まかせに迫っ
ても、相手は怖がって逃げていく。逆に愛情や夢を持って接すると、距離を近
いものにすることができる。ユーザーに対し力ではなく、夢や愛情で迫らない
限り、彼らは一度ならまだしも、継続して買ってくれないし、大事に使っても
くれない。商品企画やデザインに関わる者として、それでよいのかを考える時
期がきているような気がしてならない。


                            <岸田 能和>

































 
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