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 岸田 能和 執筆記事
 
 
 
自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸
田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカー
を経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画
などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た
発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。
著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある

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第27回 『スーパーマンのマント』


 私たちが子どもの頃のヒーローは何と言っても「スーパーマン」だった。白
黒テレビ放送だったが、毎週流されるタイトルにしびれていた。マントをひる
がえしながら、高いビルでも鳥のようにひと飛び、弾よりも早く走り、走って
くる機関車の前にたちはだかり止めてしまうほどの力を持つ、というものだ。
しびれすぎた近所のガキ大将は風呂敷を背にまといスーパーマンとして線路へ
出て行き、本当の蒸気機関車を見事に止めてしまった。といっても、たまたま
見通しの良いところだったので、機関車の運転士がガキ大将を見つけて急停止
したのだ。もちろん、そのガキ大将の親が呼ばれて、大目玉をくらったことは
言うまでもない。

 今どきなら、スーパーマンが人気になれば、本物にそっくりなマントや衣装
がすぐにおもちゃ屋さんの店頭に並ぶだろう。しかし、私たちの子どものころ
は、まだそうしたマーケティングは少なく、子どもたちは家にあった風呂敷を
スーパーマンのマントの代わりにするしかなかった。それでも、子どもたちは、
マントの風呂敷をまとうことで、スーパーマンになることができたし、その日
のスーパーマンごっこのストーリーをいくらでも考え出すことができた。

 現代はモノがあふれている。しかも、どれも機能、性能、耐久性などに優れ
ている。しかも、値段も手軽なモノが多い。しかし、一つ一つを取り上げてみ
ると、「よくできてはいるのだが・・・」と思うことが多い。一方で、一部の
ブランド商品や中古のカメラやクルマなどは、価格や性能に対する不満を超え
るオモシロサを持っている。

 価格が安いから、性能が良いから、使い勝手良いから・・・。確かにモノづ
くりでは大切なことだ。しかし、それ以上に大切なことは、モノを持つ人の想
像力をかき立て、今までと違った新しい体験をする、性格が変わってしまう、
新しい場所に行ってみる、持つ人にそんなチャレンジをさせるだけのオーラを
持つモノを作り出せるかどうかだ。

 もちろん、子どもの頃にまとった風呂敷を作った人はスーパーマンのマント
になるとは思いもよらなかっただろうが、たくさんの子どもたちがスーパーマ
ンになれたのは確かだ。


                            <岸田 能和>



























 
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