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 岸田 能和 執筆記事
 
 
 

自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸
田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカー
を経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画
などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た
発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。
著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある

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第19回 『確信犯』

 私の辞書には「努力」という言葉がない。その上、天賦の才能があるわけで
もないので、高校では落ちこぼれていた。それでも、大学だけは出ておこうと
美術大学という道を見つけた。最初はアタマを使わなくて済むのでラクチンだ
と思っていた。しかし、美大の受験にはデッサンなどの実技試験があり、この
対策がけっこうたいへんだった。たとえば花が生けてある花瓶、ぬいぐるみ、
鍋といったカタチ、色、材質などが違ったものを鉛筆で書き分けるのだが、セ
ンスや根気もない私にとっては苦痛でサボってばかりいた。そのため、現役合
格はできず浪人をするはめになった。そして、いよいよ再度受験するときにな
って、美術大学以外も受けておこうと、考えた。そこで受験したのが、某私立
大学の法学部法律学科で、「まぐれ」で受かってしまった。その年はよほど運
が良かったらしく、美術大学にも何とか合格したので、結局は法学の道を歩む
ことはなかった。そんな、話を知人などにすると、感性を大事にする美術大学
と理性を大事にする法学を同時に受けようというのは、支離滅裂だとあきれ顔
だった。

 と、いうことで、もしかすると法学の道を歩んだかも知れない私が以前から
気にかかっているコトバで「確信犯」というのがある。(この言葉を出すため
の長々とした前置きだった)つまり、罪になると分かっていて、それを犯すこ
とは悪質だという考え方である。

 私は「プロの商品開発者」ならば、確信犯のほうが、罪は小さくなると考え
ている。たとえば、最近、気に入っているアルミボトルのウーロン茶があるが、
このふたが実に開けづらく、飲むたびにイライラして頭に血を上がらせている。
特によく冷やしたものは水滴がつき、ますます滑りやすくなる。そこで、考え
たのは、わざと開けづらくしておき、興奮した分、ウーロン茶の冷たさが際立
つように計算しているのではないかと。あるいは、孫子の代まで飾っておきた
いくらい美しいカタチにするために、少々開けづらいのも目をつぶったのかも
知れない。あるいは、・・・。いや、冗談はておき、美しい、面白い、とんで
もなく価格が安い、安全といった点で少々開けづらくても納得させて余りある
くらいの良さが別にあるのなら、構わないはずだ。

 問題はそうした確信犯ではなく、プロであるにも拘わらず、知識や配慮が不
足していて、最後は「そんなことは知りませんでした」とか「そこまでは考え
ていませんでした」と謝ってすまそうとする素人のような開発者だ。効率ばか
りを大切にする世の中で、そんな商品がだんだんと増えているような気がして
ならない。

                      <岸田 能和>

 

【お詫びと訂正】

 いつも、「脇道ナビ」をお読みいただきありがとうございます。前回の第 19
回『確信犯』について、読者の方から「確信犯の言葉の意味が違う」という貴
重なご指摘を頂戴しました。

 つまり、『確信犯』とは「道徳的・宗教的または政治的確信に基づいて行わ
れる犯罪(者)」であり、拙文の「罪になると分かっていて、それを犯すことは
悪質だという考え方」は言葉の誤用だというご指摘でした。私自身も確信犯の
意味については把握していたつもりで、一般的に誤用も多いことも理解してお
りました。

 その上で、『確信犯』自身も「自分と違った立場や思想では罪になると分か
ってやったはず」だと考えて書いたものでした。しかしながら、改めて意味を
考えて直してみると、『確信犯』自身の世界や立場では「罪にはならないと確
信している」のですから、拙文の文意からすれば誤用でした。

 読者の皆様には、お詫び申し上げますとともに、誤用のご指摘をいただきま
したことをお礼申し上げます。

 ちなみに「悪いことだと分かっているのだけど・・・」は『故意犯』であり、
「悪いことだと気づかずに・・・」や「つい、うっかりと・・・」は『過失犯』
です。

 前回の拙文では「『故意犯』も悪いが、『過失犯』もけっこう悪いゾ」とい
うことを申し上げようとしたものでした。

 かく言う私自身が言葉の意味を誤用した過失犯となってしまい、お恥ずかし
い限りです。本来なら穴に入ってしまいたいのですが、ご容赦いただき、あと
しばらくは「脇道ナビ」の連載を続けさせていただきます。今後とも、どうぞ
よろしくお願い申し上げます。


  <岸田 能和>























 

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