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 岸田 能和 執筆記事
 
 
 
自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸
田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカー
を経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画
などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た
発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。
著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある

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第11回 『らしさ』

 しばらく前に、私が通っていた高校の同期会が開かれた。卒業してちょうど
30年ということで、大勢が集まった。中には卒業してから一度も会ったことも
ない同期生がたくさんいて、何となく面影はあるが、名前が思い出せず、モヤ
モヤしていた。すると、一人が卒業アルバムを取り出した。おかげで、目の前
にいる禿げオヤジがインテリの F、白髪のオジサンがバスケ部の Y、きわめつ
けはあたりを仕切っていたオバチャンがマドンナだった C ちゃんとは・・・と
いうように分かってきた。それにしても、30年も経つとこんなにも変わるのか、
と驚くやら、悲しいやらだった。もちろん、自分のことはさておいてだが。

 卒業アルバムの写真に写っている制服姿を見ていろいろなことを思い出した。
その頃は、学生運動が流行って(?)いて、何かあれば、生徒集会を開き、ワ
イワイやっていた。ある時、制服の廃止が議題にのぼり、先生たちと議論をし
たことがあった。私たちは「どんな服を着るかは自由だ。みんなが同じ服を着
るように強制するのはおかしい!」と言った。一方、先生たちは「制服こそ高
校生らしい服装」だと譲らない。そうなると、いつものパターンだった。
「『高校生らしさ』とは何か?」と、型にはめようとする大人達に食ってかかっ
ていた。

 そんなやりとりがあって以来、長いのあいだ、「らしさ」という言葉にはひ
っかかりがあった。社会人らしさ、サラリーマンらしさ、日本人らしさ、男ら
しさ、デザイナーらしさ、親らしさ・・・。「らしさ」とつく言葉に出会うた
びに、なんだかモヤモヤした思いがあった。何だか、誰かが決めた型の中には
め込まれてしまうのが怖いような、オモシロクないような気がしていたからだ。

 しかし、最近では「らしさ」という言葉に違った思いを持つようになったよ
うに思う。それは、長くデザインや商品企画に携わってくると、「らしさ」が
大事なキーワードであることに気がついたからだ。たとえば、オーディオ機器
の電源スイッチ。スイッチにはスイッチらしさがある。いかにも押しやすそう
で、適度な抵抗感がありそうで、時間のズレがなく電源が入り、スピーカーか
ら音が広がってきそう。そんな期待をさせてくれるようなスイッチのカタチ、
色、大きさ、仕上げ、材質、位置などがあるはずだ。もっとも、最近はそんな
「らしさ」がない奇をてらっただけにデザインのモノが多い。そんなふうに、
「もっと○○らしさ」を大事にしろと思うようになったのは、その昔、「高校
生らしく」と私たちを諭していたと大人たちと同じ世代になったためだけだろ
うか。


                            <岸田 能和>

















 
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