自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸
田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。
【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカー
を経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画
などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た
発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。
著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある。
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第2回 『インバーターって何?』
よくドラマなどでうらぶれたシーンを表現するために点(つ)いたり、消え
たりを繰り返す蛍光灯が登場する。そんな点くでもなく、消えるでもない蛍光
灯の薄暗く青白い光はどこか心を落ち着かせなくする「せつなさ」がある。
そんなふうに蛍光灯は古くなっても、いきなり点かなくなることはないと思
っていた。しかし、年の瀬のある日、母の部屋の天井にある蛍光灯が突然、消
えてしまった。カバーを開けてみると、グローランプ(点灯管)がなかった。
どうやら、インバーター式なのでグローランプは必要がないらしい。もちろ
ん、私はインバーターが何なのか、なぜ蛍光管が点くのかは知らないが、グロー
ランプがないのだから蛍光管の寿命だと判断した。そこで、蛍光管を買ってき
て取り替え、点灯したのでこれでメデタシメデタシと思っていた。
しかし、事件(!)はその夜、起こった。昼間に蛍光管を取り替えたばかりな
のに、またまた突然、消えてしまったのだ。そこで、カバーを外し、蛍光管の
接続を確認したが、問題はなかった。やけになってインバーターの回路が入っ
ている部分を指で弾いたところ、蛍光管が点き、しばらくするとまた、消えて
しまった。それは何度やっても同じでどうやら回路の故障だと判明した。まさ
か、一晩中、踏み台に上がって弾いているわけにもいかない。その照明器具を
取り付けた電気工事の業者に連絡することも考えたが、年末の夜に連絡しても、
部品を手配することなどを考えれば、年明けの話になりそうだ。
そこで、壁の時計を見て最後の手段に出た。閉店間際の近所の電器店に駆け
込んで新しい照明器具を買ってきたのだ。取り付けて数年しか経っていない照
明器具を捨てるのは忍びなかったが、足腰が弱って一日中、同じ部屋で過ごす
母を照明のないところで過ごさせるわけにもいかないからだ。もちろん、その
電器店に器具の取り付けを依頼しても年明けになるとのことだったので、私自
身が取り替えた。
駆け込んだ電器店で選んだ照明器具を見て、店員に「これ、インバーター式
ではないけど、良いですか?」と尋ねられたが、「いいんです!」と少し意地
になって答えていた。インバーター式の蛍光灯はパッと点くし、省エネだ、と
言う。しかし、従来の蛍光灯器具に比べると部品点数が格段に増えている。あ
くまでも一般論だが部品点数が増えれば増えるほど、トラブルは複雑化し、危
険性は大きくなる。
私たちの身の回りで進むハイテク化は、そんなリスクと引き替えになってい
ることだけは作る側、使う側がよくよく理解しておかないと、いざとなるとあ
わててしまうことになるはずだ。
<岸田 能和>
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