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木村 友則 執筆記事
 
 
 
弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルテ
ィング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るま
で、さまざまな角度から提案していく。

第1弾は、アビームコンサルティング IES 事業部の木村友則ディレクターが、
新しい経営手法として注目される PLM を4週に渡って紹介する。今回はその3
週目にあたる。

第1弾『自動車業界における「PLMの衝撃」(3)』

<衝撃その3:PLMは、プログラム司令塔>

             (日刊工業新聞 2004年05月27日掲載記事)

 「プログラム」とは、複数のプロジェクトのポートフォリオを管理すること
である。そして製品開発プロジェクトとは、問題解決を図りながら「仕様」を
実現していくことといえる。仕様には、クルマのコンセプトと開発の概要を意
味する商品コンセプトと、どういう差別化でどんなターゲット層を狙うかとい
った商品プロファイル、そして関係者全員で認識した達成すべき事業目標など
が記載されている。

 つまり、プログラムとは、車種毎の仕様を実現するプロジェクトを束ねた企
業活動を最適化しようという考え方である。最近ではそれを「エンタープライ
ズ・プロジェクト・マネジメント(EPM)」と呼ぶ。

 EPM は経営トップが率先し、現場部門だけでなく、管理者層まで「仕様文化」
によるプロジェクト管理を浸透させ、企業活動の収益向上を狙う製造業の収益
力回復の切り札といえる。

 EPM を企業文化に昇華して成功した事例が日産自動車。プロジェクトの運営
組織をマトリックス組織に変革し、徹底して顧客満足度の向上を狙ったことが
原動力に挙げられる。

 従来は重量級プロマネ(PM、商品主管)が、商品企画から収益までプロジェ
クトに関してすべての責任と権限をもっていた。しかし、重量級 PM に意思決
定が集中し、属人的な判断基準でなされたためヒット商品の開発にバラツキが
発生した。また、製品系列ごとのプロジェクト間の相互連携が困難になってい
たことも事実。

 そこで、重量級 PM に権限が集中するのを避け、収益やプレゼンス(シェア
や販売台数)、商品の競争力、デザイン力、製造コスト、性能・品質といった
具合に個々の仕様実現の責任者を明確にし、それぞれに責任や権限を与える仕
組みに切り替えたのである。つまりプロジェクトの「見える化」を図る体制を
つくり上げたわけだ。プログラムの司令塔が構築され、定めたマイルストーン
の達成度を判定し、意思決定プロセスが明確になった。

 モノづくりには QCD(品質、コスト、納期) という永遠の「モノづくり3原則」
がある。しかし、QCD という管理基準だけでは、今日の開発期間の短縮化や仕
様変更の頻発、環境問題などに対応できない。したがって QCD 管理を含めた
EPM が注目される。また、モノづくりは、「ヒトづくり」とよくいわれる。モ
ノづくりは、現場の技術者・技能者の知恵と創意工夫によって支えられている
からであり、モノづくりのノウハウ共有・伝承が、時代の変化に追いつかず、
困難なためだ。

 EPM は、プロジェクトで実施したデザインレビューを通じて、マイルストー
ンごとにどのような目標を検討・判断し、その基準と結果はどうだったのか、
そうした判断を下した技術的なバックグランド情報は何だったのか、といった
プロジェクト知(経験知)を蓄積する。これが EPM の目指すナレッジ指向であ
る。

 EPM は、経験知を体系化し、プロジェクトメンバーの能力向上を図り、ヒト
づくりを支援する。 「 商品づくり」と「モノづくり」において発生する情報を
決断と行動につなげる「仕組みづくり」を強化し、さらにヒトづくりも促進す
る。EPM が、製造業に適用される場合、それは PLM (プロダクト・ライフサイ
クル・マネジメント)と不可分の概念であり、「プログラム司令塔」をともに
構築する。

                        
<木村 友則>

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