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木村 友則 執筆記事
 
 
 
弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルテ
ィング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るま
で、さまざまな角度から提案していく。

第1回は、アビームコンサルティング IES 事業部の木村友則ディレクターが、
新しい経営手法として注目される PLM を4週に渡って紹介する。今回はその2
週目にあたる。

第1回『自動車業界における「PLMの衝撃」(2)』

<衝撃その2:PLMは、「BOM文化」から「仕様文化」への変革促進剤>

             (日刊工業新聞 2004年05月20日掲載記事)

 調理場(モノづくり)の中が、変わってきた。ベテランといわれる職人が数
少なくなってきたのだ。高齢化だけでなく設計と製造で分業化が進み、医者で
いえば「専門の臓器は分かるが、全体としての人間は分からない」という奇妙
な技術者が増えてきた。特に、クルマのような大規模な製品開発では、こうし
た傾向が顕著である。

 「つくることは売ること」であり、売れなければつくったことにはならない。
しかし売り急ぐあまり、日本が得意とする摺り合わせ設計も、デザインインが
進んだり、外部の技術や部品をブラックボックスのまま利用し、思わぬ落とし
穴があったりする。

 モノづくりは人間尊重であり、三現(現場・現物・現実)主義である。バケ
ツリレーのようなところがある。そんな中で、BOM (部品表)がその中核にあ
る。BOM は「作り手の論理」を体系化したものであり、現状のモノづくりは、BOM
をベースに CAD や解析データなど大量の商品構成情報を設計から購買、生産部
門へバケツリレーしている。この BOM 中心のモノづくりは、BOM にメーカーの
都合や事情を集約し、ユーザーに製品の不便さや妥協を強いている危険もある。

 例えば 90年半ばの過剰設計。商品のバリエーションが多くなり、機能性一辺
倒で使わないような機能やオプションが多過ぎた。商品構造が複雑になり、部
品在庫も増えコスト高を招いた。つまり本来の商品づくりを忘れていたのであ
る。BOM 中心のモノづくりは水漏れが激しく、ムダ・ムラ・ムリを繰り返して
いるのが実態だ。それでは収益構造が欧米には追いつけない。

 水漏れを防ぐために、「仕様」の徹底が重要になる。「仕様」とは、売るため
の「デライト商品」を誰でも理解できるように共通言語で書いた商品要件(顧
客ニーズや性能・機能要件など)であり、さらに重要なのが経営者の思いが記
載されることだ。

 仕様は、商品づくりとモノづくりの水路であり架け橋になる。デライト商品
とは、暮らしが豊かになり、所有の喜びと幸せを感じ顧客感動を与える。社内
はもとより協力メーカーも共有し、そして関係者全員が一丸となって商品づく
りをする。

 今日の「BOM 文化」に、経営者の意図を刻む「仕様文化」を付加してこそ、
共通言語が統一され、関係者全員が目標を共有できる。つまり「見える化」の
威力が発揮される。BOM を中心に据えて「すべてを見える化」しようとするこ
とは「何も見えない」と同じだ。

 商品づくりは、イノベーティブな商品を世に出す場合と、成熟商品のように
改良を積み重ねていく場合では状況が異なる。新たな商品の場合、研究開発
部門主導のプロダクトアウト型商品づくりになる一方、いったん発売した商品
は、改良を重ねるためにユーザーとオープンな協同作業場を共有しマーケット
イン型商品づくりになる。いずれの商品づくりも、ユーザーの多様性に応える
ためには、プラットフォームを統一し、オプションの豊富さで対応していくこ
とが常識だ。

 しかし、オプションを数多く増やしても売上増にはならない。要は、共通言
語でユーザーとメーカー、そして関係者全員がどんな商品を作るかを話せるよ
うになることが必要であり、そのために「仕様文化」を確立することが重要で
ある。その変革を PLM (プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)は促進
する。

                        
<木村 友則>

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