良くも悪くも今、自動車業界が面白い。
トヨタ自動車が 04年 3月期に純利益1兆円を突破、カルロス・ゴーン社長率い
る日産自動車も奇跡的なスピードで再建を果たす。
その一方で三菱自動車は不祥事から会社存亡の危機に揺れている。
“勝ち組”になるために「次の一手」をどう見出すべきか。
弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルテ
ィング)が、モノづくりから実際のチャネル戦略に至るまで、さまざまな角度
から提案していく。
第1回は、アビームコンサルティング IES 事業部の木村友則ディレクターが、
新しい経営手法として注目される PLM を4週に渡って紹介する。
第1回『自動車業界における「PLMの衝撃」(1)』
<衝撃その1:PLMは、モノづくりの現場だけでなく、
商品づくりにまで飛び出したアンドン>
(日刊工業新聞 2004年05月13日掲載記事)
モノづくりの世界で「PLM」という 3 文字英語が注目されてきている。
Product Lifecycle Management の略で、モノづくりの「モノ製品に関する情
報」を、製品構想の段階から、研究開発、設計、生産、マーケティング、販売、
アフターサービス、リサイクルにいたるまで、モノ製品の一生を管理していこ
うとする経営手法だ。つまり、PLM を日本語でいうと、モノ製品の一生を通じ
てその「商品づくりとモノづくりの見える化」である。
今回は4回連載で、「 商品づくりとモノづくりの見える化 」 とは何か?、
PLMが自動車業界にいかなるインパクト(衝撃、強い影響)をもたらすのか?、
その要点をご紹介していきたい。
本来、製造業にとって「モノづくり」といえば、「商品づくり」まで含めて
考えないといけない。もっといえばモノ製品と融合した「サービスづくり」ま
で射程に入れた経営が必須である。我々もクルマを購入する際は、自動車本体
のみを買うのではない。アフターサービスなど様々な付帯サービスも含めて検
討し、いわゆるクルマパッケージを購入する。
しかし、今日まで「モノづくり」といえば生産技術がメインに語られること
が多く、いわゆるレストランで言えば、厨房の議論が重視されてきたといえる。
そして、日本の製造業は、この厨房の「生産技術力」で世界一になった。それ
は競合他社の追随を許さない。
しかし、収益構造は欧米の製造業に劣る。それは何故なのか?低価格で、ど
こにも負けないおいしい料理は作れるが、それをいただくレストランのサービ
スはどうなのだろうか?絶え間ないコスト削減努力のみならず、商品力とサー
ビス力も同時に高め、如何に顧客感動を与えるかが重要である。
トヨタ生産システムに「アンドン(行灯)」という用語がある。工場現場に
おいて異常場所をひと目で判断できるようにした電光掲示板である。アンドン
をみた関係者は、すぐさま対処をすることができ、さらに作業指示や進捗度合
いを確認することができる。
この厨房(工場内)の「モノづくり」のアンドンを、「商品づくり」「サー
ビスづくり」まで広げた考え方が PLM である。生産に携わっている人だけでな
く、設計者はもとより、マーケティング、営業、調達、さらには取引先やお客
様まで利用できるいわば「アンドン」の拡張版である。
厨房は、オープンキッチンになり、クルマの購入者は自分の愛車が生まれる
状況を確認し、安心して納車を待つことができる。メーカーは、マーケットの
ニーズと足並みを合わせ、どのステージでどうコストを削減でき、どのように
利益を上げることができるかが見えてくる。環境への配慮、リサイクル問題な
どもあり、理想的には、メーカーが PLM でモノづくりのすべてをガラス張りに
することが求められる。反面、モノづくりのブラックボックス化も知財戦略上
欠かせない。
要は、「商品づくりとモノづくりの見える化(視える化)」として重要なの
は、「何でも見える化」という呪縛を断ち切り、目標の達成度合いや経営判断
上の成果や異常値、また現場においては行動指針を与えられるようにすること
である。
<木村 友則> |