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加藤 真一 執筆記事一覧
 
 
 
◆年始のご挨拶
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『新たな世界標準を創造する年』

新年明けましておめでとうございます。
誌面を借りまして昨年一年間のご支援・ご愛顧に深謝申し上げます。

 今年 2006年は日本の自動車業界にとって新たな世界標準を創造する年になる
と考えます。そのキー・ドライバーは 3 つあります。

 第一に、今年世界最大の自動車メーカーの交替が起こる可能性が高くなって
います。2006年のトヨタの世界生産台数は 906 万台の計画です。これは約 918
万台と伝えられる GM の 2005年の実績を若干下回りますが、同社は北米 9 工場
の閉鎖を含むリストラ計画を発表しており、2006年の生産台数は 900 万台前後
に低下すると見込まれ、トヨタが世界一に立つ可能性が高くなっています。

 第二に、今年世界第二位の自動車市場は日本に代わって中国になると予想さ
れます。2005年の日中の自動車販売台数は日本の 590 万台に対して、中国は
11月までの累計で 514 万台でした。自工会によると 2006年の日本市場は 593
万台の見通しで、中国市場が昨年比 6% 以上の成長になれば日中逆転が生じま
す。

 第三に、戦後世代の第一期生(1946年)が今年定年を迎えます。いわゆる
「団塊の世代」「ベビーブーム」の定義では 2007年が同世代の定年初年度とな
りますが、厳密な定義に関わらず、戦後環境に生まれ育ち、日本の経済成長を
生産・供給と消費・需要の両面で支えてきた世代が引退するという意味では今
年がスタートです。

 この 3 つが 2006年を世界標準創造の年にするためのキー・ドライバーにな
るというのは次の理由によります。

 第一に、名実ともに日本が世界の自動車業界のフロント・ランナーとなり、
ベンチマーキングの対象が完全になくなることを意味しているからです。乱暴
な言い方をすれば従来なら米国で 5年前に流行った商品や市場、欧州で標準化
された技術や規格を持ち込み、日本の生産性と品質で作り上げれば世界で一番
競争力のあるクルマに仕立てることができたと思います。今後は、日本が自ら
商品・市場・技術・規格を創り出し、それを世界に向けて発信していくことが
求められます。昨年本誌で筆者が「これからは企画品質の時代になる」と述べ
たのはそういう意味合いのものです。

 第二に、成熟した小さな市場を母国とする自動車産業が母国市場に対応しな
がら、成長するより大きな海外市場にも同時に対応していくという経験を世界
で初めて踏むことになるからです。このパターンは従来欧州の一部メーカー
(ポルシェやボルボ等)が部分的に(日米市場や中南米・中東欧等で)経験し
たと言える程度で、日本メーカーはもちろん、韓国メーカーも米国メーカーも
多くの欧州メーカーも自国市場の方が大きいか、海外市場の方が大きい場合で
も自国市場も成長を続けているかのどちらかのパターンを前提に仕事を組み立
ててきたはずです。母国市場での成功なくして海外市場で存在感を示すことは
できませんが、母国市場だけにしか通用しない仕事の仕方では海外市場では勝
算がないというジレンマに陥ることになります。

 第三に、少数の現役世代がものを作り、多数の OB 世代にものを売る時代に
世界で初めて突入したことを意味しているからです。これまでも日本の自動車
産業は様々な環境的要因から海外との比較において少ない人手でものづくりを
行なってきましたが、それとは比較にならない水準で生産性を向上させなけれ
ばなりません。以前本誌で述べたとおり筆者の試算では従来の 7 倍のスピード
での生産性向上が自動車産業には求められます。また、同時に買い手である人
口総数自体は既に減少し始めたため、限られたパイの中でも比較的層が厚く懐
の温かいシニアに、いつまでも、何度でも、高くクルマを買っていただくよう
にしていかなければなりません。これまで日本の自動車産業は基本的には現役
世代に買ってもらうものづくりやマーケティングを行なってきましたから発想
の大転換が必要になります。

 実は、この 3 つは相互に関連し合って、日本の自動車業界に一つの示唆を与
えているように思われます。つまり、世界にも類を見ない少子高齢化社会に見
合った企画品質の創造(ものづくりとマーケティングのイノベーション)に成
功し、これをうまく中国に移出できれば、早ければあと 10年、遅くともあと
15年で日本以上の少子高齢化時代に突入するであろう同国市場で他の国々(現
地メーカーも含む)のメーカーが模倣追随できない独自のポジションを確立で
きる可能性があります。今世紀前半中には世界最大となる中国市場でのプレゼ
ンスと業績が企業戦略上いかに重要かは今日世界最大の米国市場での成否を見
れば明らかですが、出生率が 2 を割っている多くの先進国がいずれ少子高齢化
社会に突入することを考えれば、少子高齢化時代の企画品質を創造すること
(ものづくりとマーケティングのイノベーション)が世界標準の創造に直結す
ることが一層明確になると思われます。

 そうした意味で、本年も私ども住商アビーム自動車総研も微力ながら自動車
業界のものづくりとマーケティングのイノベーションに貢献していきたいと思
います。本年も何卒宜しくお願い申し上げます。

2006年1月10日

                     住商アビーム自動車総合研究所
                       代表取締役社長 加藤真一














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