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加藤 真一 執筆記事一覧
 
 
 
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◆年始のご挨拶
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 2008年が幕開けしました。
 今年の自動車のテーマは「survivability (生存の可能性)」になるのでは
ないでしょうか。

 ここ数年自動車産業における最大のテーマは「sustainability (持続の可能
性)」でした。環境、資源、安全という人類が一個の生命体として生きていく
ためのプラットフォームと、人間が一人の人間として生きていくための mobility
(行動の自由)というアプリケーションとをどうやって両立・共存させていけ
るか、そのために自動車産業側から何を提供・貢献できるか、というテーマで
す。

 「sustainability」という場合には、自動車という商品・サービスの価値
(mobility)が多くの市場や消費者に受け入れられ、従って自動車という事業
にも成長や収益性が期待できることが前提になっており、もし不安要因がある
としたら、それは環境や社会との共生という課題に限定されるから、そこだけ
はしっかりやって現在の好調を末永く維持していこう、という議論であったと
考えます。

 しかしながら、世界的な環境変化はそのような悠長な課題設定や対応の水準・
スピードを許容しなくなってきています。

 投機的要因が加わっているとはいえ、つい 5年前には 20 ドル台だった原油
価格は今や先物で 100 ドルに達しました。環境問題が CO2 や NOx/PM 等に限
定されている間は、多くの消費者がある意味で「ゆでがえる」のような状態に
あったと思います。ことの重大性は認識してはいても今日明日の生活を左右す
るような緊急性は実感できず、いずれ業界や行政が何とかすべき問題と考え、
自らの意識や行動を大きく変えることはなかったのではないでしょうか。

 しかし、「今朝の通勤に使うガソリン代」、「今晩ストーブに注ぐ灯油代」
ということになると話は別です。「いまそこにある危機」なのです。誰かの対
応を待っている余裕はなく、直ちに自己防衛に動くはずです。一昨年まで国内
市場は「軽高投低」と言われ、少しでも燃費のよい「mobility」を求める消費
者が登録車から軽自動車にシフトしていましたが、燃料代の高騰が進んだ昨年
には登録車ばかりか軽自動車までもが前年比割れを経験することになった事実
にその予兆が見えると考えます。

 しかも、問題は化石燃料だけに限りません。環境や安全への対応を強化する
ため、自動車産業はローエミッション化や電子化の動きを強めていますが、そ
のために必要となるレアメタルが世界的に払底し、一部の産出国が独占の動き
を強めています。かつて本誌で本條(URL 下記)が触れたように、三元触媒に
利用される白金、ロジウム、パラジウム、二次電池の電極・電解質に使用され
るリチウム、発光ダイオード(LED)に必要なガリウム、高効率な点火燃焼プラ
グに求められるイリジウム、ネオジム磁石モーターに必要とされるジスプロシ
ウムなど入手が困難になった資源は枚挙に暇がありません。
http://www.sc-abeam.com/mailmagazine/honj/honjo0150.html

 さらに世界に先駆けて少子高齢化社会に突入した日本では若者や都市住民を
中心にクルマ離れが進んでおり、いよいよ 500 万台割れも視野に入れざるを得
なくなってきました。社会構造・人口動態に起因してのことだけに、同じよう
に少子高齢化の道を歩んでいる多くの欧州諸国や、(公共交通インフラの発達
や社会経済格差の解消の度合い次第ですが)東アジアの新興国全般にも数年の
時間差を置いて波及する恐れがあります。欧州は今や北米を抜いて世界最大の
自動車市場になろうとしている地域ですし、東アジア地域は自動車に限らず世
界経済の牽引車ですから、これらの地域が日本と同様の市場停滞期を迎えたと
きの影響は深刻です。

 一方では、今月 9日から開催されるインド・デリーモーターショーには、い
よいよここ数年で最大の業界関心事である 3 千ドルカーが出品されようとして
います。それがどのような製品として出てくるか次第ですが、自動車市場の底
辺部分の潜在需要にミートするような仕上がりだった場合、未曾有の市場創出
によって資源や環境の問題は一層深刻になります。また、自動車の価格体系が
変化して自動車事業の収益性も混沌としてきますので、ことによると自動車産
業全体に大きな構造変革を迫ることにもなりかねません。(もっとも、本誌後
半にある通り、年末に実施したワンクリックアンケートによれば、本誌読者の
6 割の方が 3 千ドルカーはスクータレベルにとどまる見ており、8 割の方が
既存事業へのマイナスの影響はないと答えられ、5 割の方はむしろプラスだと
回答されていますので、杞憂なのかもしれませんが。)
http://www.sc-abeam.com/mailmagazine/kato/kato0176.html

 このように自動車を取り巻く環境は急速に変化しており、「持続の可能性」
という経営姿勢は悠長に過ぎ、今や「生存の可能性」そのものが根本的に問わ
れているという認識に立つことが重要だと考えます。

 では、そのような認識に立ったとして自動車産業はどのような対応策を打ち
出していくべきかという問いに行き着くことになりますが、自動車産業の特質
である「未公開会社性」や「海洋国家性」を排除し、「Web2.0 型のネットワー
ク」を再構築して、外部の技術資産やアプローチを効率的に取り入れることに
ヒントがあると考えます。
http://www.sc-abeam.com/mailmagazine/kato/kato0155.html
http://www.sc-abeam.com/mailmagazine/kato/kato0134.html
http://www.sc-abeam.com/mailmagazine/kato/kato0179.html

 つまり、自動車という閉じた世界での自給自足や完全無欠の統合性を求める
だけではもはや課題解決や革新のスピードもマグニチュードも不十分だと思わ
れます。課題が自動車産業単独で事に当たることで対応できるような次元では
なくなったと考えられるからです。

 課題が、自動車という製品や産業の現在の形を肯定した上で、その持続可能
性(sustainability)に留まっていた間は、競合や法規制やクレームへの対応
を中心とする「製造品質」面での「競争力」重視の製品開発や経営モデルのあ
り方で十分だったかもしれません。
 しかしながら、自動車という製品や産業がその生存可能性(survivability)
を問われる時代には、異業種や海外企業、新興企業、場合によってはユーザ発
の情報をも製品の開発やアップデートに効率的に取り入れていくという「企画
品質」面での「構想力」重視の仕組みに変えていくことが求められているので
はないでしょうか。

 そのためには、知財やソフトウェアに正当な対価を支払うとか、ECU を括り
にした道州制的な組織・産業構造に移行するなど、価値観やプロセスの変革も
必要になってくることでしょう。
 実は、このことは一昨年も昨年も申し上げてきたことではありますが、時代
のテーマが「sustainability」から「survivability」に移行した今日、いよい
よ待ったなしになってきたと実感する次第です。

 住商アビーム自動車総研では、今後ともこの観点から自動車産業や周辺業界
の皆様に課題と解決策の提示で貢献していきたいと思います。時には辛口で突
拍子もない愚策をご提示することもあるかと思いますが、何卒本年も倍旧のご
愛顧・ご指導を頂戴できればと存じます。

                             2008年1月8日

                    鰹Z商アビーム自動車総合研究所
                      代表取締役社長 加藤 真一




















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