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加藤 真一 執筆記事一覧
 
 
 
◆カヤバ工業、モジュール化の拡大でショックアブソーバーの周辺部品も生産へ
 現在は、自動車メーカーから支給された部品を組み付けて納入している

                    <2004年06月15日号掲載記事>

自動車メーカー主導のモジュール化。つい1〜2年前まで今後の自動車業界の
あるべき姿として自動車業界を席巻したトレンドである。

自動車メーカーには自動車メーカーにしかできない、自動車メーカーとして
欠かせない技術開発領域や製造領域がある。環境や安全に関わるものが代表的
で、従来以上に経営資源投入を必要とするものが多い。

一方で、アセット面でも人材面でも自動車メーカーが巨大な経営資源を内部
に抱え込むことはできなくなった。経営効率に対するステークホルダーの関心
が変化してきたし、実際に人材や資産をスリム化してきたことで全分野に全力
投球とは行かなくなった。

だからそうした高価なコア技術の開発や玉成には内部資源を集中的に注ぎ込む
一方で、それ以外のノンコア分野ではできるだけ外部の資源や能力を活用しよ
うという方向性が生まれてきた。
モジュール、システムサプライの根源はそこにあり、大きな意味では現在も世
界中の多くのメーカーがこの方向性で動いている。

しかし、全く相反する二つの理由から、ここに来てそうした「自動車メーカー
主導のモジュール化」に、多少風向きの変化があるようだ。

一つには、ブラックボックスが外部流出することへの自動車メーカー側の警戒
感があろう。
というのも、システムサプライヤーとは、当該システムに関する自動車メーカ
ーの全部門・全業務(企画、設計、開発、購買、外注管理、在庫管理、納期管
理、生産管理、物流管理、品質保証等)の丸ごとアウトソースを受けることだ
から、モジュール化が進めばその分野に関する自動車メーカー側のナレッジ、
経験、人材が薄くなるのはやむを得ない。

問題は、モジュール化をどんどん進めていった結果、自動車メーカーに残るの
が環境技術、安全技術と購買機能だけになったらどうなるかという点である。
「走る、曲がる、止まる」に関する五感が顧客とのインターフェースとして重
要でなくなったら自動車はおそらく自動操縦でよい。ハンドルもペダルもウイン
カーレバーも必要なくなるが、自動車の発明から100年以上を経た今も消費者は
その部分の支配権を手放そうとはしていない。

「将来は分からない」という声もある。既にクルーズコントロールはずっと前か
ら商品化されているし、これに渋滞時の追突安全回避やレーン保持機能などが次
々に発表されている。

しかし、それでも自動車メーカーの目指す方向性は自動操縦ではない。自動車を
産業機械や航空機や電車など他の機械と分け隔てているもの、それは自動車が直
接消費者に自ら操る権利とその喜びを敢えて残していることであって、それを完
全に奪った瞬間にただの機械になってしまい、自動車メーカーの仕事ではなくなっ
てしまうからである。

従って、自動車メーカーは五感に訴える部分のナレッジや人材を完全に手放すわ
けにはいかない。そこから来るモジュール化見直しの機運は自然な考え方である。
コアとノンコアの見極め、内製とモジュール化の識別は、本当に慎重であるべき
だ。

もう一つの議論は、全く逆説的だが、世の中にシステムマネジメントの能力を持っ
たTier-1サプライヤーがどれだけあるか、というところから来ている。多くの自動
車メーカーが、自動車メーカーの機能とリスクをシステムサプライヤーに移転する
ことを望んだ。その背景には冒頭述べた自動車メーカーの外部環境や内部資源の変
化、戦略の変化が上げられる。

しかし、実際にTier-1サプライヤーの中で自動車メーカーの機能を引き受け、Tier-
2以下をリードして自動車メーカーの業務負担とリスク負担の軽減に寄与していると
ころはどれだけあるだろうか。

 自動車メーカーは、基礎技術の内部留保と価格交渉力維持のために内作を維持する
ことがあるが、モジュール化する以上は同じことがTier-1にも求められよう。

ところが、実際には多くのTier-1は、資本力はあっても、それが構成部品レベルの内
作のための設備投資や研究開発に使われることはあまりなく、Tier-2と自動車メーカ
ーを繋ぐ窓口や商社機能にとどまることが多いのではないか。研究開発は自動車メー
カー、設備投資はTier-2 と従来通りの関係のままで。先般このコーナーで自動車メ
ーカーの方々にお願いしたアンケート結果からもそうした現状が読み取れる。

そうなると、モジュール化、システムサプライヤーとは一体何だったのかが問われ直
されるのは必然だろう。自動車メーカーにとっても、Tier-2サプライヤーにとっても、
業務もリスクも従来と何も変わらないのに商流だけが複雑化(率直に言えば中間マー
ジンだけが増加)した結果になるのだから。

以上、二点から「自動車メーカー主導のモジュール化」には多少限界が見えてきたと
いうのが現時点での冷静な姿だろう。

今回のカヤバ工業の試みは、そうした「自動車メーカー主導のモジュール化」とは様
相を異にする「部品メーカー主導のモジュール化」を目指すもののようである。

現在は、自社のショックアブソーバーに、社外のバネ、インシュレーター、バンプラ
バー等を組み付けた足回りシステムを納入しているが、今後それら周辺部品について
も(全部ではなかろうが)開発、製造を内製していくという。
さらにブリジストン、曙ブレーキなど懸架・制動系の異業種と共同で足回りから来る
車体情報収集の技術研究も行なっていくそうだ。

これを「自動車メーカー主導のモジュール化」の問題点と比較してみよう。

第一に、Tier-1自身で設備・研究開発・製造の内製への投資をしていこうとするもの
である。自動車メーカーが当初期待していたモジュール化、システムサプライヤーと
はこういうものであったろう。その意味でも画期的というよりも正攻法である。

第二に、自動車メーカーに足回り関連の技術や人材の放棄は求めていない。
冒頭、自動車メーカーがブラックボックスを外出しすることの問題点を述べたが、今
回は自動車メーカーが機能、設備、技術、人材を残したままのモジュール化の提案で
ある。

一見、矛盾に思われるが、技術や能力に自信があるのなら、購買機能しか残していな
い自動車メーカーに提案するよりも実は効果的かもしれない。
開発能力・内作能力を温存した自動車メーカーであれば、内作以上の価値を評価して
もらえる可能性がある。「部品メーカー主導のモジュール化」は、自動車メーカーと
サプライヤーの関係性の新しいモデルになるかもしれない。

                        <加藤 真一>

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